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山猫と狐の子  作者: 本蟲
22/22

結の8

 時を同じくして場所は火の球の墜落地点。

つまり山猫の予測どおり、火球の正体である狐の着地点。

 屋敷からおよそ500m程離れた森の中、狐は

地面倒れるように着地し、すぐさま起き上がり屋敷の方角を

睨みつけながらその尾をブンと一振りして姿勢を低く構える。

 「そこだ!!」

 構えるやいなや、狐は軽々と着地の衝撃で倒れた木を片手で

投げ飛ばす。ゴウと風を鳴らし大の大人が両手でも抱えられない

程の太さの木が重さを感じさせない程の速度で視線の先の

森の奥に飛んでいく。

 衝撃。その質量に見合った轟音が森に響く。

 「うらららあぁぁぁ!」

 そこから間髪いれずの暴風の様な投擲。

手当たりしだい、手に取れる物は、手に触れた物は。

木でも岩でも果ては地面も、まさに大地を抉る暴風の様に。

地響きの連続はまさに地震の様で、衝撃と音の連続はまさに

落雷の様で。止まる事の無い天変地異。

 その暴力的でめちゃくちゃな投擲が終わった時には

狐の周りには木の1本、石ころの1つすら無く、

むき出しの大地が無残な姿を晒している。

 「これで、終わってくれたら。」

 「きっと、簡単なんでしょうな。」

 狐の言葉に落ち着いた、むしろ優しさすら感じる声が答える。

 「だよね。」

 不敵な笑みを浮かべる狐の視線の先、無残な狐の周囲の

結果、投げられた木が刺さり、岩が砕けて土煙を上げるその場。

もはや普通の人間、いや妖怪だろうと只では済まないだろうその結果。

 「いやはや、酷い有様ですな。」

 しかしその土煙の中から一人の老紳士が服に付いた

土埃だろう埃を叩き落としながら先日門前で狐を向かえた老人が姿を現した。

 その姿はあの門前で見た姿と同じだ、しかし姿こそ同じだが、

その存在が存在感が圧倒的に違う、まるで別人と感じるほどに。

柔和な笑みはそのままに、それでいて呼吸を妨げる程の緊張感。

 「お前。本当は何者なんだよ!」

 狐がそのプレッシャーを振り払うように怒鳴る。

 「おやおや、私は只の召使で御座いますよ?」

 ニヤリと笑みを浮かべ老人は

 「伊吹の主であられる白猪様のただの召使で御座います。」

 言うと足元の枝を手に取り、まるで刀の様に振り、感触を確かめ。

 「さて、今度はこちらから参りますよ?

粗暴なお嬢さんには、マナーの何たるかを教えて差し上げましょう。」











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