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山猫と狐の子  作者: 本蟲
21/22

結の7

 その後、話は完全に頓挫。

 山犬は一人館の外。

 「このままでは、ダメだねぇ。」

ひとり大きな木にもたれて

「あの猪の裏をかかないとねぇ。」

「そりゃあ骨の折れるこった。」

声が返ってくる。


「あの羽衣、大物主は渡すと思うかぃ?」

「どうだろうな、でもただで渡すってたまじゃねぇ。」

「そりゃ、、そうだねぇ。そんな素直な方なら

俺たちも面倒な事に巻き込まれないだろうしねぇ。」

「カカカカカ。それはそうとよ、猪の方は今後

お前の頑張り次第としてよ。

もう片方の件はどうだ?」

 山犬のもたれた木の上から、1本の煙草が落ちて来る。

山犬は、落ちる煙草を見もせずに受け取り、

口に咥え火を付け煙を吐く。

「今のところ順調って感じだねぇ、気取られても無さそうだしぃ。

このまま上手く行くんじゃないかなぁ。」

「なんだそりゃ、いまいち確定的な答えじゃねぇな。

何だ?何か引っかかるのか?」

 声も同じように煙を吐き出した。

「いやさぁ、猪のおっさまがさぁ、なぁんとなく

気が付いてそうなんだよぉ。」

 山犬は眉をひそめる。

「もし予定より早くアレが見つかったらそれは

それで面倒な事になるんだろうなぁ、ってさぁ。」

「なるほど、確かに面倒だ。

猪は鼻が利く、予定よりアレに気付くのが

早くなれば少し面倒な事に成りそうだ。」

 声はしばらく何か考えて。

「なら逆にアレを早めに処理しておくか。

ばれる前に、対応される前に。」

「そりゃ、良い考えだぁ。でもよぉ。」

「でもよぉ、どうした?」

山犬は言いにくそうに

「それは今はあの子に酷な話だぁってさぁ。」

その言葉に声は止まる。

「でもよぉ、まぁ、仕方ないかねぇ。」

山犬は察したように付けくわえた

「それもこれもぉ、あの子の為、なんだろぉ?」

「そうだ。」

「なら、やるしかないねぇ。

で、それは何時やるんだぁ?」

 山犬は煙草を握りつぶし

「俺さぁ、そろそろ暴れてぇんだなぁ。」

「カカカ。相変わらずだなお前。

なんだ?猪相手に猪突猛進か?笑えねぇ。

まぁ、そうだな。何時、、、か。

何かきっかけでも有れば良いんだがな。」

「何だぁ?決めてないのかぁ?」

不信感を声に滲ませ山犬が言う。

「なんならよぉ。俺が暴れ、、」

「おう、やめろ。」

「なんだよぉ、言わせてくれよぉ」

「言わせねぇよ!?」

「意地悪だねぇ。」

「よく言うぜ。」

「カカカカカ。」

「へへへへへ。」

二人の笑いが重なる。

「それじゃ、何か動きが有れば。」

「その時が合図だねえ。」


どお-----------ん!!!


地響きと共に轟音が響く。

「あれ、、、お前の策か?」

「あれかぁ?合図ってよぉ。」

次の瞬間屋敷から火の球の様な何かが飛び出し、

屋敷の外の森に墜落する。

「なんだ!?「どうした!?「何があった!?」

音に驚いた屋敷の使い達が山犬と声の居る

木の前を音のした方角に急いで駆けていく。

「しゃーねぇ。こいつを合図にするか。」

「なんだぁ、やっぱ合図なんじゃねぁ。」

声は山犬の横に姿を現す。

「俺の合図じゃねぇよ。」

燕を思わせる服、燕尾服を着た男。

「じゃぁ誰だろうなぁ。

しかしその姿、あの部屋で見た時から

思ってたんだがよぉ、お前さんには似合わねぇなぁ。

それにしてもよぉ、あの火の玉は何だぁ?」

山犬は長い尾を一振り。

「うるせぇ。因みに火の球な。

あれなら一人心当たりがあるぜ?」

 言うと燕尾服が男の咥えた煙草を捨てる。

すると服が煙に変わったかと思うと、その姿を包み見えなくする。

その煙を見た3人の猪館の使いの一団が声を上げ駆けて来る。

「何だ!!」「侵入者か!?」

「山犬殿!その者から離れ・・グエッ!」

言うや次の瞬間3人は屋敷の壁まで弾き飛ばされる。

 「へぇ、誰だぁ?教えてくれないかぁ?」

山犬は使いを弾き飛ばした尾をぐにゃりと曲げ

ニタリと笑う。

その笑みに反応する様に煙の中で新たな煙草に火が付く。

「そいつは怒りっぽくて。」

次第に煙が晴れていく

「さらに乱暴で怪力で。」

そして現れる山犬の白い姿と対照的な黒い姿。

「それに泣き虫の女の子だ。」

神職の服は薄墨色。

髪はそれより更に黒い黒髪。

その頭からピンと立った耳が2つ。

「そりゃ、大変だなぁ。」

「本当にな。大変だ。」

腰からは黒く細くしなやかな尾。

「きっと怒ってるぜ。」

「きっと泣いてるよぉ。」

黒い男は口の端を上げニヤリ。

「なら更に大変だ。」

「なんなら俺がぁ、助けに行こうかぁ?」

山犬もニタリ。


「そこの男!貴様何者だ!!」

仲間を吹き飛ばされた事に気づいた召使達が

ぞろぞろと屋敷から出て来る。

手に手に剣や槍を持ち臨戦態勢。

それでも黒い男と山犬は。

「お前が?おいおいおい。何の冗談だ?」

「ならさぁ、誰がその子を迎えに行くんだぁ?」

 「むむむ無視するな!!」

「貴様!何者だと聞いている!!!」

召使達が怒鳴り

「問答は無用だ!仲間の敵!!」

「そうだ!仲間の敵!!」

「死ねぇ!!!」

そう叫ぶと槍を男に向けて投げつける。

 「誰が迎えに行くって?おいおい。

本気で言ってるのか?山犬の。」

避ける事もしない男に槍が迫る。

しかし、槍は男に当たる瞬間粉々に砕ける。

「嫁を迎えに行くんだぞ?」

襲いかかる槍をその一振りで砕いた右手で

少し恥ずかしそうに頭を掻く。

「俺が行かなくて誰が行くんだ?」

その姿を見て山犬は茶化す。

「そりゃ、そうだなぁ。嫁さんを迎えに行くのは

その嫁の旦那の仕事だぁ。なぁ旦那さんよぉ。」


「きき貴様!何者だ!?」「何者だ!?」

おいてけぼりの召使達が叫ぶ。

「俺か?俺は、、」

声がしたのは一瞬。

音も無く、そよ風一つ立てず、召使達を通り過ぎる。

そして次の声は召使の耳に入っただろうか。

その場の召使達の首が落とされると同時に

その男は名乗る。

「俺は山猫だ。」



 

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