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ファンクラブ会長がヒロインを“呼び出し”してみた。

「幼馴染だからって、あんたみたいな子が、白兼(しろがね)様の側に居るなんて目障りなのよ!」




ーーと、冒頭から、いかにも負け犬の遠吠え的セリフを言っているのは、私、 田中華澄(たなかかすみ)


この学園の生徒会長、白兼聡(しろがねさとし)様の非公認ファンクラブ会長をやっています。


まずは、白兼聡様の紹介をしますね。

某ベンチャー企業の社長の息子さんで、背も高く。髪は黒く艶やかで顔立ちも端正に整って、眼鏡の奥に見える冷たい視線もたまらないという女子生徒続出の、なんでも出来るスーパーイケメンで学園のアイドルです。



そして、目の前で俯いているのが、ヒロインこと白兼様の幼馴染、吉水葵(よしみずあおい)さん。


彼女は、白兼様が唯一、側に置いている女子生徒で学園の女子から嫉妬と羨望の眼差しを向けられています。

白兼様の隣に居ても遜色のない美少女で、誰にでも優しく、ちょっと天然な所が隙をみせてか、男子生徒に絶大な人気があるようです。


さて、舞台はここ体育館裏。

私の後ろには、同じ白兼会長のファンクラブのメンバー2人。


3対1


という、なんとも卑怯な図式で、幼馴染殿(吉水さん)を追い詰めています。



「吉水さん、なんとか言ったらどうなの?」

「何様のつもり?」

「そーよそーよ」



後ろ2人の“合いの手”を受けながらも、頑張って吉水さんを追い詰めるのです。

って、『何様』って ププププ。 『幼馴染様』じゃん。と内心、ツッコミをいれているのですが、気取られてはいけません。


「私は、誰にも迷惑をかけていないわ! 聡(会長の名前)が、勝手に……」


いやいやいやいや。 それ、本当の事だからって、ファンクラブの人に、しかも今の状態で言っちゃだめでしょ! ああ、もう、ほら〜。私の後ろの ファンクラブ会員その1が、顔を真っ赤にして 右手を振り上げようとしてるじゃないですか。まったく。


「やめなさい」

「だって、華澄さん!!」

「……やめなさい」

「……はい」



はいはい。どーどー。 殴っちゃダメ。 暴力反対。



と、まぁ 頑張って他のメンバーをコントロールしながらも、こうやって 『誰の目でみても勝ち目のない“呼び出し”』をしているのにも、訳があります。




実は、私。

本当に、ちっとも、全然、まったく、これっぽっちも。



ーー生徒会長 白兼聡 なんて、好きじゃないんです。





恋愛小説を読むと 、イケメンや学校のアイドルといい感じになっているヒロインを、勘違いの馬鹿女が嫉妬に狂って、呼び出したり、攻撃をしかけていますが、あれって、ハッキリいって逆効果ですよね? そんな事をするような女と誰が付き合いたいと思うんでしょうか? その辺のモブ男子も、そんな女なんてお断りだと思います。 非公認ファンクラブに入ること自体、近いようで遠い位置にいるのです。


そして、その図式に当てはめると


非公認ファンクラブ + 呼び出し = すごく嫌われる


なのです!!


それ、それを 今! 私が! やっているのです!!

しかも、私『非公認ファンクラブ会長』!! トリプルで嫌われます!



唐突ですが、実はこの世界は『乙女ゲーム』の世界なのです。

そして、私は前世でそのゲームをやっていた『転生者』

ライトノベルで流行りの図式ですので、詳しくは省略いたします。


普通の『乙女ゲーム』でしたら、ヒロイン(あ、私はモブです)を傍観して、ニヤニヤした3年間を送るつもりでした。

でも、このゲームは『ヤンデレ』しか攻略対象者がいないという、現実問題、そんなにヤンデレばかりの学園って、イケメンは必ず病んでるって! 逆に心配! な学園なのです。有難い(?)事に、『学園崩壊』『皆殺し』ENDはないゲームだったので、気の毒なヒロインに『お疲れ様です! ご愁傷様です! 私には関係ないので、どうかヤンデレにデレ(・・)ていて下さい!』と心の中で思っていたのがいけなかったのでしょうか……。



ゲーム開始時。 2年生に進級した日。

まだ、生徒会長になっていない白兼聡と目が合ったのです。


ゾクゾクゾクゾク


悪寒が走りました。そして、私も走りました。家に帰って、自室のベットでブルブル震えました。

だって、なんだか、さっきの目つき。

勘違いではなかったら、“ロックオン”されたようで……。


私は焦りました。非常に。

だって、生徒会長って……攻略対象者の中で一番。半端ない“ヤンデレ”だからです。


ちょっと、他のキャラと話をしただけで監禁されます。(その時の鎖はデフォルト)

自らを傷付けて、ヒロインが離れないようにします。(お前が裏切ったら死にます的な)

攻略対象者で一番エロくて、殆どR18でしょ?的な行為を学園内で行います。

賢すぎる頭脳を活かして、どんどんヒロインを追い詰めて精神崩壊までもっていきます。

超サドです。


そう、クールな見かけに反して、その内面はとても執着心の固まりで“ねちっこい”人なんです。『君を鎖で繋ぎたい』という、ヒロインにとったら、いい迷惑なキャッチコピーを背負った人なんです。

唯一の救いは『カニバリズム』キャラじゃなかったくらいでしょうか。って、どこが救いやねーん。


おっと、いけません。話が脱線しました。


白兼様の視線に恐怖した私は、考えたのです。

徹底的に、嫌われるキャラとはなんぞや?


それは、ヒロインを虐めるファンクラブではないかと?!


一番近いようで、一番遠い位置。


私は、早速ファンクラブに入りました。

そうしたら、なぜか今では“会長”にまで上り詰めてしまいました。(全くの、計算外です)私の白兼様に対しての一歩引いた態度が、他のファンクラブメンバーにとって 好ましくうつったようです。一歩どころか、何万歩も引いているのですが……。


会長まで、上り詰めての初仕事。 最近、目に余るくらいに白兼様とベタベタした幼馴染殿(吉水さん)に厳重注意する為に、“呼び出し”を行うことになったのです。

吉水さんには、こんな不快な目にあわせて申し訳ないとは思っています。ゲーム終了時(2年のクリスマス)に、土下座して謝るつもりです。





「田中さんは、聡の事が好きなの?」

「え?」


あ、だめです。ちょっと、回想はいっていたら“素”に戻っていました。

吉水さんの意味不明な質問に、内心ドッキドキです。


「そうに、決まってるじゃない! 華澄さんほど、白兼様に相応しい人はいないわ!」

「そーよそーよ」


やめてください。勝手に煽らないでください。 ああ、帰りたい。



「……田中さん、本当?」

「………………はい」



全くもって、不本意なのですが、ここで「いやいやいや、あなた様程、お似合いな方はいませんゼ。いよ! バカップル! 永遠に爆発しろ!」なんて、両手を揉みながら言えるわけがありません。 後ろの二人の手前もあります。 私は、渋々ながらも返事をしました。










「それは、嬉しいな」










はい?




私たちの後ろから、艶にとんだ色気たっぷりの幻聴が聞こえました。



「聡!! 良かったね!」

「葵も、協力有難う。やっと僕の恋が実ったよ」

「………………」


硬直している私の前で、どんどん話が進められています。


「僕の愛しい人は、ファンクラブ会長をしているのに、全く僕に接触してくれないからねー。葵に協力をしてもらって……やっと君の気持ちが聞けたよ」


道理で、やけにここ数日、二人がベタベタしていると思いました。 私は心の中で『やった!会長と幼馴染(ヒロイン)がくっついた!! あのロックオンは、私の勘違いだったんだ。ふふ。私ってば自意識過剰! さーせん』と喜んでいたのです。 しかし、他のメンバーがその状態を許すわけがありません。 会長として、最後の仕上げに“呼び出し”を行う事になったのですが……。




「愛しているよ。 華澄」



そう言って、茫然自失している私に、ぶちゅーーーーーーと、それは濃いキスをしてきました。

あ、舌いれてきた。やめて。ファーストキスがディープキス(しかも人前)なんて濃すぎます。

「キャーキャー」「華澄さんなら、認めるわ!」「そーよそーよ」ギャラリーがうるさい。



長いキスの後に、妖艶な笑顔で

「もう、逃げられると思わないでね」というお言葉をいただき、また、長い長いキスをしてきました。






もう、逃げられない。





誰だ!! 呼び出しするような馬鹿女と付き合うはずはないって言った奴は!!



あ、私だ!


すいません。謝りますから……



だ、誰か!! 私を“呼び出し”して下さーーーーーい!!





→続編「私が“ヤンデレ乙女ゲーム”に転生したら……」


***

冒頭のセリフも「ヤキモチを焼いてくれたんだね」と、大変喜ばれましたとさ。



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