再会の少し前 ~side 大河内 義貴~
主人公はノゾム君ですが、彼は勇者ではありません。
勇者は大河内君。
<おおこうち よしき>が名前。
主人公のクラスメート。
剣道部員で成績優秀者。
主人公たちの学校は私立で、成績優秀者には学費一部免除制度がある・・・ってことにしてあります。
「どうしたんだ大河内。中間の結果、あまり芳しくないぞ」
そんなの、言われるまでもなく分かっている。
試験中は確かな手ごたえがあった。
きちんと解けたとも思った、自信があった。
返却された答案用紙。
ケアレスミスがいくつかある。
覚え間違いに、計算間違い、そして勘違い。
もう一回見直せば正せたはずだ。
張り出された順位表。
上位50名は順位と名前が張り出される。
上位から探したほうが早いが、真ん中寄りにおれの名前。
前回まではもっともっと上だったのに。
各科目の先生の反応。
ほとんどの先生が俺にいう。
『どうした』と。
そして、また言われた。
すべて、俺の想定していた結果と異なった。
ほんの少しの相違でしかない。
でも、その相違が俺には大きかった。
この頃、上手くいかない。
部活に行けば、主将にそして先輩に、やたらと注意をされる。
素振りで竹刀を振れば、今までとは音が違うきがする。
練習で試合をすれば、勝てていた相手に勝てなくなった。
何が悪いのか、分からない。
今まで通りにやってるのに。
あの日はたまたも職員室に呼ばれていた。
剣道部の顧問の先生に。
あの時たまたま聞いてしまった。
「このままだと危ないな、大河内」
「学費免除の権利は別の奴になるかもしれないな」
「今回、小笠原が成績をだいぶあげてたな・・・。」
「いや、小笠原はないよ。」
「まあ、成績だけ見れば・・・。」
断片的にしか聞こえなかったし、
誰が何を言ったかなんてわからなかった。
ただ、そういった先生達は笑っていた。
その時、俺の心は黒く染まった。
小笠原を俺は知っていた。
クラスメートで、中学からの友人の浩史がよく絡んでいる相手。
背が少し低め。
眼鏡をかけている。
少し排他的だが、社交性がないわけではない。
一人暮らしらしく帰宅部だ。
そして、今回張り出された順位表の上位5名に入っていた。
前回まではいなかったのに。
ただのクラスメートが、排除したいほど憎い相手に変わった。
続けて、大河内君こと勇者の話。