彼がいる理由 ~ side シルヴィオ ~
またまたやってきた説明回です。
シルヴィオさんの目線です。
この国に来たくはなかった。
だが、私の目的を達成させるためには、この国に来る必要があった。
自国でも、ほかの友好国でもなく、傲慢なこの国に。
私の目的はこの国に”いる”。
それだけでは達成できないものだった。
だから、持てる限りの伝手を使った。
なるべく自然に、なるべく不審に思われないように。
私なりに、力を尽くした。
今の私は王宮の警備兵だ。
何人かいる兵士の一人にしかすぎないが、私はこの国の人間ではない。
それを考えれば、幸運に恵まれただけでなく、頑張ったほうだといえるだろう。
最初は城下街と王宮を隔離する堀の門番となった。
たまたま欠員も出ていた。
堀の先には大きな城門もあったため、そこは街に付属しているような小さな施設だった。
この国でも商売を行っている知人が紹介してくれたため、意外と簡単に受け入れられた。
ある日、誰かにつかえているであろう女と街人が揉めているのを解決した。
本当に些細なものだった。
ただ、街人はあまり評判の良くない、面倒な人物だったようだ。
私は適当におだてて、少し気分を良くしてやった。
唯それだけだったのだが、街人には感謝されるし、女にも感謝された。
助けた女は意外と高位の貴人に仕えていたらしい、そのおかげか王宮内の警備班に配属された。
王宮内といっても、王族のために働く使用人や一般兵士がいる外側の区画だったが。
外側の区画で巡回任務についてみたり。
使用人サン達の揉め事を解決したり、いろんな頼まれごとをこなしてみたりした。
危険なことはなく、平和な日々が流れた。
平和な日常に、焦燥感が募っていった。
少し前、王宮の侍女とほかの警備班の班長との橋渡した。
侍女は前に助けた相手。
仕事中に出会うたびに、すこし話しをする間柄になっていた。
橋渡しで、ことのほか班長さんに気に入られたようだ。
成り行きで班長さんの部下となった。
班長さんは意外と有能で地位もあったようだ。
侍女との恋が実ると班長さんは出世した。
王宮の内部を警護する部隊、その部隊長に。
私もそのまま内部の、中心区画で警備を行う班に配属となった。
王族を守る近衛騎士団の人とすれ違うこともあった。
本来なら一般人が会えないはずの、神殿関係者ともすれ違った。
ここまで来れば、目標の半分は達成できたと言えるだろう。
私の目的は、神殿の奥にいるといわれる”神の御子”にお会いすること。
神殿関係者ともすれ違えるようになったのだ、彼らと知り合いになれば当初の目的は達成できる。
本来の目的が達せられるか分かりはしないが、”あぁ、本当によく頑張った”とひとまず思おう。
ある目的のためには”神の御子”に会わないといけないようです。
傲慢なこの国に居ると、周辺国には匂わせています。




