LoveとLikeの違い
今回はちょっと長いですが・・読んでみてください。緋琅は悪人じゃないです。冷たいだけです・・では読んでみてください
Map not place 〜神に出逢った瞬間〜 ? LoveとLikeの違い
「何や!突然大きい声出しやがって」
「そんなに言うんだったら何が欲しいのよ!?」
「・・・・」
「何よ」
突然黙りこくると、剛は座っている麻帆に近づき思いっきり自分の方へ寄せた
「きゃ!」
「えーやん」
「ちょ・・」
どうにか剛を引き剥がし、一定の距離まで離れた麻帆は剛から視線から逃げるように目を伏せた
「突然抱くなんて何よ・・」
「ほんなら前もって言うてたらええんか?」
「・・・・・」
「俺やって男やもん」
「はぁ?」
「こー長く居るとあんたも俺を警戒せーへんよーになったし。半ば俺が男ゆーことも忘れかけとるやろ」
「さすがに忘れてないし」
「ほんま?」
「だったら俺のことどー思っとるん?」
「え゛・・・」
「俺を男ってこと覚えておるんなら何かあるやろ?」
「何かって・・・剛はあたしのことどう思ってんのよ!?」
半ば危険な麻帆のこの問いに返ってきたものは言葉ではなく、明らかに別のものだった
一拍おいた後、剛は思いっきり突き飛ばされて。そしてその後部屋に充満したのはとてつもなく気まずい険悪な空気
「痛い・・・」
「当たり前でしょ!」
「突き飛ばすなんてひどいやん!」
「人にキスしといて何よ!」
「そら好きやもんしゃーないわ」
「・・・・」
「麻帆はどうなん!?」
「・・・・考えさせてもらいません?」
「ええよ」
―――翌日
結局、あの一件が元で話しかけてもロクに返事をしてくれない麻帆。麻帆にちょっかいを出してみるけどあっさりかわされてしまった
「いつになったら返事くれるん?」
「・・・・」
「いつまで考えるん?」
「あっちに着いたらね」
「ほんまか?」
「うん」
しかし剛が返事をもらえるのは途方もなくあとのことだった。だって家に着く頃には・・・麻帆が忘れていた出来事が待っていた
ガチャ
「いい?いつ誰が来るわかんないんだから・・・隠れててよ」
「隠れるってあんたなぁ・・・机の下ってめちゃありきたりやん」
「そういう問題じゃない!」
タッタッタッ
カツカツカツ
トントン
「はいはい?」
ガチャ
「あゆさん・・・」
「麻帆〜おかえり〜!」
「名前・・」
「あっそっか憐・・ごめんごめん」
「どしたんですか?」
「どーしたもこーしたも・・」
「麗姫落ち着け・・・」
久しぶりにその声を聞いた。あゆさんと緋琅の2ショットはいま見ても心が痛む。ちゃんと見つめることが出来なくてつい瞳を逸らしてしまった
「それで・・何があったんですか?」
「早くこっち〜」
「えっ??」
歩沙に手を引っ張られながら走った・・・。後ろからゆっくり歩いてくるのはもちろん緋琅
「ちょっと何があったんですか?」
「今にわかるから」
歩沙は慣れた様子で麻帆にとっては思い出深いところに連れて行った。麻帆も足を進めれば進めるほど彼女が自分を連れて行こうとする場所が判りだしてきた
そこは暗く時折水滴が落ち鉄格子ばかりが連ねている場所
「ここって」
「あぁ・・外来人を最初に連れてくる収容所だ。麻帆も歩沙も俺も来た場所だ」
「・・・収容所」
「そんでこっちこっち」
また歩沙は麻帆の手を引き暗闇の中を走り進めた。なぜだか歩沙は浮き足立ってるような感じだった
「こっちに何があるんですか?」
「何かってねぇ・・・緋琅?」
「麻帆には確認のため来てもらわなくてはいけなかった」
「確認・・?」
「歩沙こっからは俺が前を歩く、お前はでしゃばるな」
「でしゃ・・・ってそんな言い方しないでよ!?麻帆のためを思って」
「だいたい麻帆だけいればよかったのになんでお前まだ来たんだ!?」
「ひっど。本当だったら衝撃的じゃない。そんなときにあんたみたい冷酷男がいたら余計に精神不安定になっちゃうわよ」
「なんだそれ・・・」
「まぁ・・麻帆。平常心でいろよ」
「だから・・・何が?」
ある牢屋の前で緋琅は止まった。そこで緋琅は持っていた蝋燭を格子の間から中に置いた。そしてゆらゆらと揺れる蝋燭の灯である人物の顔がふわりと映し出されてきた
「顔を上げろ」
「・・・?」
「さて麻帆・・こいつを知ってるか?」
「え・・・?」
緋琅に言われ格子の間に顔を近づけ、中にいる人物の顔を見た・・・。その瞬間、麻帆は真っ暗な牢屋街を切り裂くような高い悲鳴を上げた
そしてここから4人の会話は全て日本語で繰り広げられる
「竜太〜!?」
「麻帆・・?」
「ビンゴだったみたいね」
「麻帆呼んだのはこいつが麻帆は無事かとうるさく、その上・・」
「俺は麻帆の彼氏だ〜!ってうるさくて・・麻帆なんて日本ではめずらしい名前じゃないしマグレかと思ってて」
「本当にお前の男なのか?」
「男って・・・まぁ彼だけど」
「麻帆・・・」
「何?竜太?」
「その格好・・・血迷ったのか?」
「・・・・いやぁ」
麻帆が返答に悩んでいる隙に歩沙が竜太に言い返した。そしてここから歩沙VS竜太の大喧嘩が始まってしまった
「ここではあんたのその格好の方がヘンよ!」
「うるせ〜お前誰だよ!?」
「何よ!あんたに関係ないわよ」
「だいたい俺は嘘を言わなかったんだ!出せ」
「口悪いし一生ここにいてもらおっかなぁ〜」
「お前が決めることじゃないだろ?麻帆の問題だ」
「そーですね・・・」
「麻帆・・・こいつを出したいか?」
「えっ・・?」
出したいか?って言われても・・・緋琅のことはもうほとんど終わったけど・・・剛のことも解決してないし・・。でもやっぱり出すべきだよね
「出すと竜太はどうなるの?」
「女ではないから麻帆のように寮生活は無理だが・・補助金を出してやるから自分で寝床を探すんだな」
「竜太それでもいい?」
「麻帆の所は無理なのか?」
そして再び・・・歩沙VS竜太。第2ラウンドが幕を開けてしまった
「ダメに決まってんじゃない!あそこは修行中の女と神官・・・って」
「なんだよ・・」
「そーいえば緋琅をあそこで見かけるけど何してるの?」
「国の存亡に関わる重要な職務に就いてる」
「「!?」」
「くに・・?そんぼ・・?」
「何の職よ・・緋琅」
ここから麻帆と歩沙のおかしな想像が始まる・・・。もちろん緋琅の職に就いて・・そして竜太は置き去りにされたまま
「なんだと思う?麻帆」
「存亡?」
「あ〜わかっちゃった」
「なんですか?」
「きっと占い師よ」
「へ?」
「だって今ここら近辺で超占いブームだし」
「そうなんだ・・・」
「な〜んで存亡に関わるのかな?」
「予知とかするのかもしれないですね」
「悪いけどそんな怪しげな職じゃない」
「じゃあ〜?」
「公務員とか?」
「公務員で存亡・・?」
「刑事とか?麻帆は何だと思う?」
「う〜ん・・・?」
「言っておくが俺の職は刑事ではない。だいたい刑事だったらお前達とここで遊んではいないだろ?」
「平和なんじゃない?それか超したっぱか・・?」
「麻帆・・変な妄想で俺の職を考えるのはやめてくれ」
「わかったーわかったわよ!麻帆」
「なんですか?」
「総理大臣〜〜!!」
「それだー」
「合ってる?緋琅?」
「さっきよりはマシだけどな」
「違うんだ・・麻帆やっぱなんだろうね」
「似たような職だな」
「総理系?」
「何かの大臣かな?文部大臣?外務大臣・・?」
「ってか緋琅ってそんな偉い人だったんだ」
「まっいっか・・」
「ってか麻帆。俺ってどうなっちゃうの?」
「出します」
「やった」
「そーこなくっちゃねぇ」
「なんでお前が喜んでんだ!?」
「いいでしょ。こっちにはグットニュースなのよ」
ガシャン
「やっと解放だ〜」
「麻帆に礼を言っておけ」
「麻帆ありがとな」
「・・・うん」
―――一方
「あいつどこ行ったんやろ?」
結局、この日麻帆は部屋に帰らず、竜太にこっちの生活について説明するはめになった
―――数日後
トントン
「ちょっと隠れて」
「へいへい」
いそいそと慣れた手付きで窓の外へ出る。ちなみに麻帆がいるのは4階。窓と言ってもベランダに近い柵が拵えている。麻帆がどうにか客人から見て死角を作りそのポジションに剛は隠れる・・・これがいつものパターン
「はい?」
「あたし・・・」
「あぁあゆさん」
「今いい?」
「はい・・どーぞ」
「彼とは上手くいってる?」
「・・・え?」
部屋の外では・・・・
「彼って誰なん?」
「いってないの?」
「あの日以来会ってなくて」
「なんで〜!?」
「あの日っていつなん?」
「・・・・2・・4・・6・・あの日ってもう6日も前じゃない」
「はい・・」
それって俺らが帰ってきて麻帆が朝帰りした日やん
「別れたの?」
「いえ・・・」
「あぁ〜他にいるんだ」
「かもしれません」
「緋琅?」
「違います違います!」
緋琅って誰?ってかまずそんなに麻帆の前に男居たん!?誰やろ・・・まだ男がぎょーさん居たりして
「なんでそんなこと・・?」
「ううんちょっと気になっただけ。じゃ」
「はぁ・・・」
バタン
「もうええみたいやね」
「・・・勝手な判断で入ってこないでっ!」
「美人な人やったけど・・あの女どっかで会うたことあるような・・んで緋琅って誰なん?」
「いいでしょ?誰でも」
「えーやん」
綺麗な紅い花が咲き誇り、規則正しく並んだ石畳たち。和風の装いを醸し出すその庭園・・池には鯉にも似た魚達が優雅に泳いでいた
そこは寮の中でも異世界のような地で、綺麗過ぎるその場所で一つの恋が幕を下ろした。静かに響く水音と共に・・・・・。
「なんだよ・・・俺は忙しいんだが」
「いいじゃない・・・綺麗でしょ?」
「それで何の用だ?」
「残念・・・凶報よ」
「何が?」
「麻帆・・・好きな人いるって」
「だから?」
「緋琅?って聞いたら違うって」
「それで?」
「あなたフラレたのよ」
「それが・・・?」
「悲しくないの?」
「・・・・・」
「ほら・・図星でしょ?」
「っていうかお前は何がしたいんだ」
「だってあたしを振ったんだもん」
「馬鹿を言うな!」
「何よ・・・」
「俺が誰を愛そうが・・俺が誰を捨ててもお前には関係ない」
「・・・そんな言い方ないでしょ!?」
「そういうしつこいところが嫌いだ」
「・・・・」
「忙しいんだ俺は」
そんなことが二人の間で起きているとは知らずに麻帆は自分の心がわからずにただ苦悩していくだけだった
数日後
トントン
「はいはい・・・って緋琅」
「いい忘れていたことがある」
「何?」
「もうじき神の使い・・神娘になれるかどうかの試験がある」
「へぇ・・・」
「それでここにそれについて詳しく書いてある。字が読めなければ歩沙にでも聞けばいい」
「・・・うん」
「じゃあな」
読めない字ってふつーに全部読めないし・・言語はどうにかシェルビナ語も上達してきたけど・・・まったく読めないもんなぁ。今度から葡萄食べたら文字も読めるようになるとか進歩しないのかな?
トントン
「誰・・?」
「私です・・麻帆です」
「あぁ麻帆入っていいわよ」
歩沙の瞳を見ると微かに潤んでいたように見えた麻帆。思わず見てはいけないものを見てしまった気がしてそれ以来歩沙の顔が見れなかった
「見た?」
「へ・・?」
「泣いたの見た!?」
「えっと・・・はい見ちゃいました」
「あたしね・・・緋琅にフラれたの。まぁ昨日今日の話じゃないんだけどね・・こないだはっきり言われてちょっとダメージが」
「・・・」
「原因はまぁいわゆる浮気。まぁ何年も離れてたから緋琅にしてみればもうあたしは彼女じゃなかったし。緋琅には他の女の・・」
「ちょっと待っててください!」
「も〜最低・・・・緋琅なんて最低っ」
「おや憐愍さま・・・」
「グット!いい場所に居てくれましたね坡塘さんっ!」
「はい・・?」
「あの馬鹿・・いえ緋琅は何処に?」
「今はあちらの書庫におられます」
「ありがとございます!」
バタン
「居たわね〜この悪党」
「・・・麻帆?」
「あゆさんを振ったとか」
「あぁずいぶん前にな」
「なんでなんでなんでそんな余裕ぶっこいてられるわけ?女を泣かしといて」
「じゃあ怒らす分にはいいのか?」
「そーいう問題じゃないっっっ!浮気なんか悪人のすることじゃない!」
「じゃあ世界中の人間はほとんどが悪人で刑務所が膨れ上がってしまうな」
「付き合ってる時に好きな人が出来ちゃうなんて」
「悪いけど歩沙に再会する前から好きだったんだが」
「何よ何よ何よ・・・じゃあ何・・」
「だいたい大人の話に中3のガキが首つっこむな」
「・・・・・最低最悪」
「麻帆が足掻いてもどーにもなりはしない」
二人の口論はまだまだ続きます。本当はひとつにまとめようとしたらあんまりにも長くなって中途半端なところで分断という形になってしまいましたが・・・。お許しを・・・