二人の誓約(キス)
今回は麻帆がやっと話のスタートラインに立ってくれます!緋琅はいわゆるヒーローみたいなものです・・多分。本当はこんなに麻帆にダメージを与えるつもりはなかったんですが・・ごめん麻帆。ではでは読んでください。全然暗くないので
Map not place 〜神に出逢った瞬間〜 ? 二人の誓約
濡れた服を引きずりながら、人が闊歩する街を歩いた。だいぶ冷えた石畳にを素足で歩いてると未だ乾くこのない身体からポタポタと水滴が落ちてた
どこの言葉だろう・・?聞き慣れない言葉。イタリア語でもないと思う
「―――――――(また流れて来たのかしら?)」
「―――――(また・・?若そうな子なのにねぇ)」
人々は麻帆を横目で見ながら、去っていく。人々からの視線に刺されますます哀しくなる。周りの看板も見慣れぬ読めない文字ばかり
泣いて解決することじゃないけど・・・・そう思えば思うほど涙が零れてくる
フラフラと泣き疲れて、その場にヘナヘナと座り込んだ
「竜太・・・・」
しばらくその場に座り込んでいると遠くの方から何やら物々しい音が近づいてきた。麻帆はその音に気付き顔を上げると武装した兵士達が麻帆に近づいて来た
「えっ?助けてくれるの?」
「――――!」
「―――――――!!」
一人のリーダーみたいな人が何かを命令したらその兵士はあたしを起き上がらせ腕を引っ張ると、二人の兵士はあたしの腕と足を縄で結んで黒い布で瞳を覆い、何かを含ませたのか白い布をあたしの鼻と口に覆った
そこであたしの記憶は途切れた
ポタン・・ポタン・・・
「うっうっ・・」
ん・・痛い。あたしどっか殴られたのかな?重い頭を起こして周りを見渡すとどうやらそこは・・。
「・・えっ待って・・これ鉄格子でしょ?ってことは何?ここって牢屋?」
暗いその場所は水滴の音と重い鎖の音だけが響いてた。そして麻帆の両腕、両足には身を拘束するための手錠がしてあり、足には重い鉛の大きな玉が鎖を通じて付いていた。そして麻帆は冷たい硬い石畳を動くことも出来なかった
「何よ・・これ」
先ほどまで着ていた服ではなく自分の身を纏っていたものは、とてつもなくダサい格好だった
「これって魔女の宅急便でキキが着てたじゃん・・。何?あたし魔女にでもなれって言うわけ?」
誰よ・・あたしを脱がした奴は・・変態!だいたいふつーにあたしの扱いって・・あたしって犯人でもないのに・・なによこれぇ
麻帆が悲しみに暮れているとどこからか靴音がこちらに近付いてきた
カツカツカツカツ
「足・・音?えっ誰?」
カツカツカツカツ
「何?助けてくれるの?」
靴音は麻帆の前の牢屋で止まった。暗いから顔は見えないけど・・どことなく怖いような気がする
やっぱり思った通り・・あたしに用ありみたいで・・。麻帆が声を掛けようとしたら向こうから声を掛けてきた
「君か・・」
日本語?その声は低い大人の男で・・落ち着いた冷酷な感じがその声から悟れた
「貴方・・日本人なのね?」
「・・・日本人のようだな」
「もちろん」
「これを食べろ」
「えっ?」
男は鉄格子の間から手を入れ、麻帆に何かを差し出した
「見えないんだけど・・ってか手・・自由にならないんですけど」
「手にあるのは葡萄だ。そんなに苦労せずとも取れる」
「あぁそうなの・・・触ってもいい?」
「ダメだ」
「じゃあこれ食べて死んだりしない?」
「あぁ」
「なんで葡萄なの?これがご飯・・?」
「黙って食べろ!」
「あんたねぇ〜!この扱いされて大人しく食べれるわけないでしょ!」
「ここにあるのは日本で言うグレープとマスカットだ」
「味も?」
「あぁ」
「食べたら何が起こるの?」
「早くしろ」
じゃあ暗くてどっちがどっちだかわかんないけど・・。とりあえず手に取ってみた
「まだ疑うか?」
「・・だって」
「仕方がない」
「えっ?」
「―――――!(お前たち!)」
「「―――!(ハッ!)」」
二人の男がその男の側に駆け寄り、跪いた
何?この男偉い奴なの?・・・そんな偉い奴がなんでこんなとこに?
「―――――?」
「――――」
「――――」
「―――――!!」
しばらく意味のわからぬ会話が続けられた後、したっぱみたいな男二人が牢屋の戸を開け中に入って来た
「やだ!やだ!」
そしてしたっぱの片方が思いっきり麻帆の腹を殴り気絶させた
「・・・・腹・・めちゃ痛い」
腹の痛みと共に目が覚めた。アイツに殴られて・・その後・・気絶して。あの葡萄やっぱり食わされたのかなぁ?とりあえず生きてるからあの葡萄が毒入りだったんじゃないみたいだ。周りは光もなくて今が何時なのかわかんない
「いいのだろうか?」
「初めてだぞ人を殴ったのなんて」
聞こえてくる声は昨日のしたっぱみたいで。そしてその言葉が聞き取れたことは・・・ちょっとだけ嬉しかった
カツカツカツカツ
「足・・音?えっ誰?」
カツカツカツカツ
「ようやく起きたようだな」
「あんた誰よ!」
「威勢のいい娘だ。お前達、この女を外に出せ!」
「はい」
したっぱはいそいそとあたしがいる牢屋の鍵を開けた。そして戸を開け、あたしを拘束してた手錠などを解いた
「早く出ろ!!」
「えっ?あぁ・・・うん」
痛い身体をどうにか動かして低い小さな戸をくぐり出てみると男はあたしを労わるような声を掛けようともせず歩きだした
「付いて来い」
「・・・・はい」
暗い長い闇。どうにか足の速い男のペースに付いていくのはどうにも必死で腹の痛みを抱えながら歩くのは身にずいぶんと重かった
「ちょっとくらい待ってよ」
「もうすぐだ」
「あぁそう」
螺旋階段を登ったりしてるうちに光のある場所に着いた。そして離れなのか一度外に出て再び白いレンガ調の大きな建物に入った
中の壁は全て白かったが窓があったの所為もあってか建物の中は光が入りとても明るかった
明るさでやっとわかったその男は綺麗な茶髪で、肩よりも下の長い髪。そしてピアス・・。格好は・・足が見えないほど長いスカートみたいなものを着て上はファンキーな感じの黒いタンクトップの重ね着・・・あんなことされてむかつくけど・・・この人すっごいかっこいい
大人の雰囲気が出てて、すんごく落ち着いてて・・・・。
しばらく廊下を進むとドアが多く並ぶホテルのようなところに着いた。そして男はひとつの戸の前で止まりドアノブに手を掛け、開けた
ギギギ――ッ
古い戸なのか開いた瞬間、あまり耳に良くはない音が静かなこの建物の中で響いた
部屋に入ると・・・
連れて来られた部屋は20畳以上もあるその部屋は全体的に広く白く。白い木のベット、白いカーテン。そして海が見えるベランダ
「綺麗な部屋・・ここは?」
「君の部屋だ」
「へ?」
「手荒いことしてすまなかった」
「ほんと・・・」
「その詫びってこと?」
「そんなものだ」
男の言葉を背に麻帆はベランダに駆け寄った。さわやかな風が麻帆を包んだ。まだ痛むその身体に夏の風が包んだ
「お前名前は?」
「麻帆・・。高瀬」
「麻帆・・。きっと君は俺に聞きたいことたくさんあるだろうから・・」
「・・・じゃあまずここはどこ?」
「異国」
「イタリアじゃないの?」
「あぁ。ここに来てしまったら一生帰れない」
「は?ここは異国『フォエルト島』そして首都の『シェルビナ』」
「・・はぁ。ねぇどうして帰れないの?」
「さぁな。帰れる者もいるかもしれないがまだそんな者には巡り会ってないな」
「泳いでも帰れないの?」
「潮の流れから帰れないようだ」
「じゃあ貴方は誰?」
「日本では緋琅と言われてた。ここでは硃皇と呼ばれている」
「何であたしは言葉がわかるの?」
「昨日食べた葡萄だ。あれを食べると言葉がわかるようになるんだ」
「あぁ・・そうなんだ」
「ただし君が使えるのは地方でしか使われないティファン語だ。首都で使うシェルビナ語はまったく理解出来ない」
「なんで・・?」
「それはまた今度、ここからが本題だ」
「前フリ長いね・・」
「ここで麻帆は生きたいか?」
「そりゃね・・まだ15だし」
「丁度いい。この国では15以上の娘は神に仕えるため修行をしなければならない」
「神・・?してどうなるの?」
「合格したら正式な神娘になれる・・20までに合格できなかったら地方送りになる」
「神って本当にいるの?」
「いるんじゃないのか?神娘が神に仕えるのだから。しかし神娘は・・罪を犯すためあまり増えない」
「罪?」
「恋をしてはいけない・・・だか神娘は神に恋をしてしまう」
「はぁ・・・」
「・・・麻帆・・お前も修行に加わってもらう?」
「なんで?」
「そういう法がこの国には存在するんだ」
「へぇ・・」
「では誓約だ」
そういうと緋琅はあたしの耳元で呪文のような言葉を言うと、彼は突然あたしの口にキスをした
「えええええええ」
「これが誓約。食事も支給されるし窓を開けてても夜は寒くない・・では」
「・・・え?いや・・そーいうことじゃなくて」
あたしの言葉を無視して緋琅は去っていった・・・いや・・・あの竜太ともキスしてないんですけど。ふつーにファーストキス奪われたしってか何よ神って?意味不明なんですけど
ガチャ
「いたのか・・・」
「なぜ口にされたのですか・・?」
「タイプだったから」
「・・・本当であれば頬なのですよ」
「知ってる」
どうでしたか?えっとちょっとキスはさせたかっただけです・・(おい)緋琅はとびきりかっこいいんです
あのクールな性格はどうなんだろう?ってあたしも思いますが・・・もうすぐあるキャラが出て来ます!さてこの後のお話はもっと笑えます