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迷走する事件


「お前は何も知らないと言うんだな!?」


重要参考人として二日後に出頭した月人は取り調べ室で二人の刑事に聴取を受けていた。

狭い部屋に机を交えた向かいに月人が座り、刑事二人が月人に向き合う様に座っている。

刑事の一人は中年の目つきが悪い田島と言う男と、もう一人は初老の落ち着いた物腰の宮原という男だ。

田島が月人が何も知らないという証言に苛立っていた。


「知らない訳がないだろう!?強姦しようとした連中の一人だぞ!しかも死亡推定時刻はあの事件の直後、公園の森の敷地内なんだ!殺された奴は首から上が綺麗に無かったんだぞ!?何も見ていないと言う方がおかしいだろう!」


深酒でもしたのだろうか。田島は酒臭い息をまき散らしながら月人に声を荒げる。

月人は若干嫌気を覚えながら動じる事なく田島と話した。


「知らないものは知らないんです。あの日僕と京子は確かにあの公園で強姦されそうになった少女の悲鳴を聞きました。とっさに助けた以外は暗がりでしたし助けるのに必死でしたから分かりません…それに殺された強姦未遂犯の一人が森の奥へ逃げて行くのは見ましたが他に誰かいたかは分かりません」


月人は事件当初に警官へ話した言葉を再び田島へ話す。当然知ってる事柄だろうが田島の苛立ちに仕方無しに話した。

目新しい情報で無いことに遂に腹をたてた田島がいかがわしい目つきで月人に嫌味を言う。


「いたいけな少女をレイプ犯から救った王子様気取りかい?いい気なもんだな。人が死んでるんだぞ!?それにお前が強姦犯に与えた打撃は素人の仕業じゃない、プロの手口だ。怪我をした強姦未遂犯は一人は重いムチウチ状態、もう一人はアバラが骨折だぞ?貴様あの暗がりで良く落ち着いてそれだけの事ができたな?お前がやったんじゃないのか!?」


田島が根拠の無いことを私情を交えて月人にカンシャクを起こした。

それを聞いた宮原が遂に口を挟む。


「田島!いい加減にしろ!証拠もない、目撃者もいない!それにあの傷は刃物でも難しい傷跡だ。それに強姦未遂犯から少女を救った月人君に失礼だろう!

……しかし月人君。君はあの暗がりの中で良く強姦未遂犯の三人から少女を救ったね、君は何か格闘技でも習っているのかな?」


初老の顔の頬に少しシワを寄せながらにこやかに宮原が月人に質問した。


「習い事はしてません。…ですが格闘技は昔から自分なりに趣味でやっていた程度です」


月人は少し恥ずかしいそぶりで頭をかきながら話す。


「そうか。君には素質があるのかな?…また出頭要請が来たら悪いが協力して頂けるかね?」


宮原がにこやかに椅子から立ち上がって月人に握手を求めた。


「ええ。出来る限り協力させて頂きます」


月人が宮原の握手に答えようと席を立とうとした時、聴取室のドアが開き二人の黒ずくめのスーツ姿のサングラスをかけた二人組が現れる。


「その必要はありません」

二人組のどちらかがドアを開けるやいなや宮原達にそう事務的な態度で話した。


「貴様ら!許可取ってんのか!?それに此処は関係者以外立入禁止だぞ!?何物だオメェラ!」


田島が部屋のドアの黒ずくめの男に近づきまたもや怒鳴り散らした。


「こちらの管轄の責任者に許可はとりました。それに殺された被害者は素人が入手出来ない凶器で殺された事も伝えました、よって彼には以後聴取する必要も有りません」


そう言って黒ずくめの一人が月人の方を向いて話しを続けた。


「月人…さんですよね?事件の事で少々お伺いしたい事が有ります。申し訳ありませんがこの後お時間を頂けますか?」


黒ずくめで事務的、しかも背筋の伸び方からただならぬ様子の二人組に部屋へ緊張感が漂う。

月人は少し険しくさせた目つきのまま黒ずくめに答えた。


「わかりました。…参りましょう」


了解を得た二人組は軽く月人に会釈して月人と共に部屋を後にした。

部屋に残された宮原と田島がア然としていた。


「このクソ暑いのにスーツ着込んで…何物だぁ?あいつら」


田島が煙草に火を付けながら月人達が去って行ったドアを見つめて呟いた。


「署長も許可を取らざる得ない人物だ…きっと政府の役人クラスだろう。しかしなぜ月人君を連れて行く?」


宮原が少々考え込みながら田島の呟きに答えるのだった。



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