仄暗い洞窟で
「目が覚めたかい?坊や」
仄暗い洞窟に焚き火を灯し一人の男が火の前に座っている。朦朧とする意識に朧気に目覚めた月人は体を起こして焚き火の前の男を見る。
「アンタはこの前の化け物と会った時の!?一体此処で何しているんだ?」
ハッキリしてきた意識の先に見た男は白銀の髪の以前見た長身の男だった。
「何しているはこっちの台詞だ、貴様はどうやって此処へ来た?…まあいい。どうやらお前はあのクソ組織の差し金では無いようだしな、しかし僅に異界の匂いがする…貴様も覚醒者か?」
相変わらずの乱暴な口調で白銀の男が焚き火を向かいに月人に話かける。
「訳の分からない事を言わないでもらいたい。無意識にフラッと来ただけだ…組織やら覚醒とは意味が分からないし、知らぬ事だ」
暗がりの中、焚き火の灯りを便りに白銀の男を鋭い目付きで見る月人…会って間もないが知っているような感覚、嫌いでは無いが喰えぬ様な不思議な感覚の目の前の男に月人は少し好奇心が有った。
「珍しい事も有るもんだな、まあ良い…お前の様な奴は希に居る。それからお前は組織を知っている筈だ。この顔に見覚えが有るだろう」
そう言って一枚の写真を放り投げる白銀の男。差し出された写真を見る月人は知っている顔に驚く。
写真に写っていたのは月人がよく知っている人物、川島だった。
「知っている。しかし、アンタが何故この人を?」
写真を戻し返した月人は驚きと沸き上がる疑問に白銀の髪の男に堪らず問いかけた。
「フッ…何を吹き込まれたか知らぬが、馬鹿なお前はあの訳も分からない組織に相当入れ込んでいるらしいな…確かにあいつらのやっている事は白か黒かと言うと灰色な部分が多すぎる。しかし、貴様があの組織に入るのもまた滑稽かもな…良いだろう。知っている事は話すがお前があの組織にどの様に接触しているかは逐一連絡しろ。なに、俺はあのヘンテコ組織の動きが知りたいだけだ」
相変わらずキザな仕草で
写真をジャケットにしまいこみ、白銀の髪の男は含み笑いをしながら話を続けた。
「坊っちゃんに自己紹介したい所だが、貴様はどーしようも無く真面目なようだからな。信用しない相手と取り引き出来ないだろ?
」
「真面目か知らないけど、アンタが隠し事をしている様には思えない。聞きたいことは山ほど有るが友人たちを待たしていてね…話の主旨は概ね分かった。俺もあの組織を信用し過ぎているのはマズいのは認めた上でアンタに協力しよう」
そう言って焚き火から離れ雅治達が待っているキャンプ場へ戻ろうとする月人。白銀の髪の男が立ち去ろうとする月人に不可解な事を尋ねた。
「ああ…用がある時は俺から貴様を訪ねよう。それから貴様、夢を見るか?」
「夢?勿論見るけど夢がどうかしたのか?」
突拍子も無い質問に驚いて聞き返す月人。
「いや、気にするな。早く仲間の所へ戻りな」
白銀の髪の男が何時もと少し調子を狂わせて話す様に少し疑問に思いつつも月人は洞窟を後にするのだった。