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序章(始まり)

「私を置いて行かないで!心だけ連れて行かないでよ!…どうして?」


夏の夕暮れ時の公園の一画でうつむきカゲンに立ち尽くして泣く少女。嘆願する向かいには同じくうつむいて立ち尽くす青年が一人、彼女の方から顔をそらして呟く様に話す。


「京子の事は今でも好きだよ。でもこれから先、何十年先にもただの好きで終わりそうなんだ。俺は君が望むような奴じゃ無いんだ。ごめん」


抜けてゆく力をふりしぼり握りこぶしを固めながら彼は向かいの京子と呼ばれる彼女に話す。

…しばらくうつむいていた京子が意を決した様に青年の方を向いて話しはじめた。


「そっか。…呆気ない一年間だったね…大学でも月人げつとくんモテるからね私なんか飽きちゃったかな?」


柔らかな艶のある髪をたなびかせ女性らしい仕草で月人と呼ばれる青年を見上げる少女。いつの間にか泣き止んだ瞳は明るく優しげな眼差しをしていた。青年を気遣ってか元々なのか彼女の表情には暖かさがあった。


「京子は優しいんだな。…それから頼みがあるんだ。これからも友達でいて欲しい…俺からの最後の希望だ、わがまま言ってごめん」


青年は彼女の屈託の無い表情に安堵しながらそう言った。


「うん!私もそうして欲しい。でも月人くんに彼女が出来たら妬いちゃうんだから。でもサヨナラじゃないから寂しくないよ」


そう言った彼女は不意に月人の唇を塞いだ…最後のキス…唇同士が触れているだけのいつもどうりのキスだった。

…月人は京子の甘い香に陶酔し、今更ながら別れ話を切り出した事を少々後悔していた。しかし彼なりにこの先を考えての苦渋の決断だった。


「京子はもっと愛されるべきだし、今以上大切にしてくれる素敵な奴が現れるさ」


月人は優しい眼差しで彼女の両肩を優しく掴み微笑んだ。

…ふと、公園を取り囲む森のかなたから悲鳴があがる。

「イャア!!来ないで!」

町の郊外にある公園に女性の悲鳴が響き渡る。何か嫌な予感を感じた月人はとっさに京子にここに居るよう言い残し走り出そうとする。


「警察を呼んでここにいるんだ!」

走りながらそう叫び森に消えて行く月人。

京子はすぐさま携帯を取り出し電話をしながら月人の背中を心配そうに見送るのだった。

…辺りはすっかり暗くなりヒグラシが一層ざわめいた。

京子は不安を押し殺しながら愛しい青年を帰りを待った。



「数人いるのか?」


森の中を声がした方角を頼りに向かった月人はしばらく走った後に森が開けた茂みで足を止めた。月人のいる数メートル先に男らしき人物が複数見える。辺りが暗くなったせいか、何が起きているのか良く分からなかった。


「なんとかしてみるか」


 一層目を険しくさせた月人は中腰になり茂みの男達の方へ足早に向かった。



「口を塞いどけ!俺が先に犯る」


茂みでは三人の若い茶髪の男達が高校生らしき少女を取り囲み強姦しようと押さえ付けていた。


「すぐ終るからさ、悪く思うなよ。お前が俺達シカトするからだぜ?」


二人の男が少女の両腕を押さえ残りの一人がズボンを下ろしている。


「シカトしたのは謝るから!こんなこと止めようよ」


煙草臭い男達の乱暴に恐怖と焦りで泣き叫ぶ少女。ついに口を塞がれ観念しようと目を固くつぶった次の瞬間、目の前の気配が無くなった気がした。…再び開いた目の先には男の姿は無かった。

少女が驚いていると、両腕を押さえ付けていた男二人が押さえ付けていた手を離し立ち上がって誰かに声をあげている。


「だっ!誰だテメェ!」


帽子をカブった茶髪の男の向いている目線の先に少女が視線をたどっていく…そこには暗がりで分かりづらいが背の高い青年らしき人物がいた…月人である。


「早くにげろ!」


月人が落ち着いた声で少女にそう催促する。

事態を飲み込んだ少女がとっさに逃げようと走り出そうとした時、地面に先程自分を犯そうとした男が白目をむいて泡を吹いている光景が目に飛び入る。

ついに腰を抜かしてしゃがみ込む少女。


「チッ!仕方ない、そこにいろ」


狭くなった間合いに舌打ちをして月人が改めて男二人を睨む…距離にしておよそニメートルほど先に男達がいた。その様子は先程の焦りは無く、数で勝るが故の余裕な笑みさえ伺えた。


「不意打ちとはヒキョーじゃん?死にたいの?君?」


そう言いながら暗がりの中、男のどちらかが月人ににじみ寄る。ひたすら無言の月人…男が月人の間合いに入り、上体を反らし始めたのを月人は見逃さなかった。

男の軸足の片方の足が月人に当たるよりも先に月人がステップを踏み、男の懐深くに入りスナップを利かせた重く早い拳が男のミゾオチにえぐり込む!

声を出す事も無く腹を抱えて崩れる男…


「ウリャー!」


事の一部始終を見ていたもう一人の帽子の男が声をあらげ、月人めがけて突進して月人にパンチをしようとした。

しかしその拳は月人に難無くかわされ、月人が男のパンチをかわした瞬間に背後に回り込み手刀を首めがけて放つ。

当たる場所を失ったパンチと背後から受けた手刀で情けなく顔面から転ぶ男。


「そこまでだ。…観念しろ」


月人が男の正面に移動した瞬間目の前の視界が悪くなる。


「クッ!」


月人がかけられた土で一瞬ひるんだ隙に男は逃走していた。


「…逃げられたか」


悔しそうに顔を歪める月人。しかし京子が警察を呼んだであろう…今は少女の介抱が先だった。


「あっ!…ありがとうございます!」


自分にふりかかった恐怖が無くなった喜びからか、少女が月人に抱き付いて来る。


「怪我してないよな?歩けるなら歩くぞ」


抱きしめられた腕を振りほどき月人は少女に先に歩けと催促する。

ため息混じりに頭を掻きむしりながら歩き始めた少女を確認して月人はノビている二人の男を確認つつ京子に携帯で電話しながら歩く…しばらく歩いた後、ふと後ろから気配を感じて振り返った。


「なっ!」


月人が振り向いた遠く向こうの木の上に濃い銀髪の背の高い女が一糸まとわず立ち尽くしていた。表情までは見れないが体の回りに金色に輝くオーラの様な物がわずかに見えた。


「どうしたんですかぁー?」


後から聞こえてきていた足音が無くなったのを不思議に思ったのか、先を歩いていた少女が月人に振り返る。

しかし銀髪の女は居なくなっていた。


「!?…なっ…なんでもない」


一瞬にして消えた女に幻覚を見たと思い月人は少し頭を左右に振り再び歩き出すのだった。


…この後、強姦未遂で男達は逮捕された。しかし逃げた男は見つからず数日後、首から上だけ無くなった状態で月人達がいた公園の森の奥で発見された。

当然、月人は重要参考人として警察に出頭要請が来のだった。


物語は始まったばかりですのでご期待ください!

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