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櫻坂学園物語  作者: ヒトミ


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9/12

放課後

涼太(りょうた)からのパスを受け取り、和人は向かってくる相手を抜き去り、シュートを放った。


「ナイス和人ー!」

「涼太もサンキュ」


ボールがネットを揺らした瞬間、かけ寄ってきた友人とハイタッチした後、和人は首筋に流れる汗を、崩したワイシャツの襟で(ぬぐ)った。


「ちょっと休憩!」

「二人とも強すぎ」


相手役をしていた二人が息を切らして寄ってくる。和人は軽く頷き、講堂の外に視線を向けた。


和人の視線の先には生徒会室がある校舎が建っている。


このところ、琉生はずっと忙しそうにしている。


──生徒会の仕事は手伝えないが、俺にも何かできないだろうか……。


講堂の外は日が落ちかけて薄暗い。


「悪い。俺抜けるから、続けるなら助っ人呼んでくれ」

「えっマジ?」


和人を囲んで思い思いに休んでいた三人が、同時に視線を向けてくる。


涼太の声に真顔で頷くと、他の二人がアイコンタクトを取った後、ぐっと親指を立てて了承してくれた。


「りょーかい」

「あの一年でも誘ってみる?」


友人たちの声を尻目に、和人は足早に講堂を後にした。


◆◆◆


生徒会室がある校舎への道すがら、雑木林で隠れた校舎の陰から、人を(ののし)る声が聞こえてきた。


「……どうせ大したことない顔してる癖に!」

月園(つきぞの)様の気を()きたくて隠してるんでしょッ」

「黙り込んじゃって、図星なんじゃない?」


和人は足を止めて、木陰から現場を覗き込んだ。


誰かがいじめられているのだとしたら、現場を押さえて風紀室に連れていかないと。


「どんな顔してるのか見てあげるよ!」


生徒会長の親衛隊が、一人の生徒を取り囲んでいた。


「見せるわけないだろ、アホか。群れることしかできない小物が」


この毒舌。囲まれているのは楓雅(ふうが)だった。


楓雅は彼の前髪に触れようとしている親衛隊を避けて、腕を組んだ。


「……っはぁ!? ふん、いつまで強気でいられるかな?」

「取り押さえて」


親衛隊の言葉で、体格のいい生徒が楓雅を掴まえようと動き出す。


これ以上は大事になる。


和人はポケットから腕章を取り出し、腕に巻き付けた。


一呼吸して表情を引き締める。足音を立てて木陰から出て行くと、楓雅を囲んでいた生徒たちが一斉に振り向いた。


「誰!?」

「……あ! 風紀委員っ」


一人の生徒が和人の腕章を見たのか、動揺したように小さな悲鳴を上げた。


体格のいい生徒が、掴んでいた楓雅の手を乱暴に突き放す。


楓雅がたたらを踏んでよろめいた瞬間。


前髪で隠れていた片目が(あらわ)になった。


物凄い既視感。あの丸い目。つい最近も見かけたような。


和人の眉間に(しわ)が寄る。


楓雅は直ぐに体勢を立て直し、その目は前髪の奥に姿を消した。


和人が記憶を漁ろうとした時、楓雅を囲んでいた生徒たちが逃げようと動き出した。


「動くな! 風紀室に来てもらう」


考えている場合ではないと声を張り上げ、真横を通って逃げようとする生徒を取り押さえた。


空いている方の手でスマホを取り出し、風紀委員の応援を呼んだ。

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