放課後
涼太からのパスを受け取り、和人は向かってくる相手を抜き去り、シュートを放った。
「ナイス和人ー!」
「涼太もサンキュ」
ボールがネットを揺らした瞬間、かけ寄ってきた友人とハイタッチした後、和人は首筋に流れる汗を、崩したワイシャツの襟で拭った。
「ちょっと休憩!」
「二人とも強すぎ」
相手役をしていた二人が息を切らして寄ってくる。和人は軽く頷き、講堂の外に視線を向けた。
和人の視線の先には生徒会室がある校舎が建っている。
このところ、琉生はずっと忙しそうにしている。
──生徒会の仕事は手伝えないが、俺にも何かできないだろうか……。
講堂の外は日が落ちかけて薄暗い。
「悪い。俺抜けるから、続けるなら助っ人呼んでくれ」
「えっマジ?」
和人を囲んで思い思いに休んでいた三人が、同時に視線を向けてくる。
涼太の声に真顔で頷くと、他の二人がアイコンタクトを取った後、ぐっと親指を立てて了承してくれた。
「りょーかい」
「あの一年でも誘ってみる?」
友人たちの声を尻目に、和人は足早に講堂を後にした。
◆◆◆
生徒会室がある校舎への道すがら、雑木林で隠れた校舎の陰から、人を罵る声が聞こえてきた。
「……どうせ大したことない顔してる癖に!」
「月園様の気を惹きたくて隠してるんでしょッ」
「黙り込んじゃって、図星なんじゃない?」
和人は足を止めて、木陰から現場を覗き込んだ。
誰かがいじめられているのだとしたら、現場を押さえて風紀室に連れていかないと。
「どんな顔してるのか見てあげるよ!」
生徒会長の親衛隊が、一人の生徒を取り囲んでいた。
「見せるわけないだろ、アホか。群れることしかできない小物が」
この毒舌。囲まれているのは楓雅だった。
楓雅は彼の前髪に触れようとしている親衛隊を避けて、腕を組んだ。
「……っはぁ!? ふん、いつまで強気でいられるかな?」
「取り押さえて」
親衛隊の言葉で、体格のいい生徒が楓雅を掴まえようと動き出す。
これ以上は大事になる。
和人はポケットから腕章を取り出し、腕に巻き付けた。
一呼吸して表情を引き締める。足音を立てて木陰から出て行くと、楓雅を囲んでいた生徒たちが一斉に振り向いた。
「誰!?」
「……あ! 風紀委員っ」
一人の生徒が和人の腕章を見たのか、動揺したように小さな悲鳴を上げた。
体格のいい生徒が、掴んでいた楓雅の手を乱暴に突き放す。
楓雅がたたらを踏んでよろめいた瞬間。
前髪で隠れていた片目が顕になった。
物凄い既視感。あの丸い目。つい最近も見かけたような。
和人の眉間に皺が寄る。
楓雅は直ぐに体勢を立て直し、その目は前髪の奥に姿を消した。
和人が記憶を漁ろうとした時、楓雅を囲んでいた生徒たちが逃げようと動き出した。
「動くな! 風紀室に来てもらう」
考えている場合ではないと声を張り上げ、真横を通って逃げようとする生徒を取り押さえた。
空いている方の手でスマホを取り出し、風紀委員の応援を呼んだ。




