橋宮楓雅
翌日。学園長室で、琉生は転校生に斜め下から穴が開きそうなほど、見詰められていた。
転校生は小柄だった。前髪で顔の半分以上が覆われていて、どんな顔をしているのかは、いまいち分からなかった。
資料には、前の学校で複数の生徒を病院送りにした、暴力沙汰での転校と書かれていた。
そんなことができそうな人物には見えない。
制服はきちんと着ているから、生活態度も問題なさそうだ。
学園長は琉生と転校生を引き合わせた後、他の仕事があるからと部屋を出て行った。
「あんたが、琉生? ふーん……」
開口一番、呼び捨て。問題なさそうに見えたのは外見だけだった。
琉生は口元をぴくりと引き攣らせた。
「橋宮楓雅君だよね。初対面での呼び捨ては、少し失礼じゃないかな?」
「はっ、何様。ぁあ、副会長様だったか」
ソファで足を組み、その上に手を置いてふんぞり返っている彼。
態度だけ見ていると、典型的な甘やかされた御曹司だ。
けれど、先程の値踏みするような視線は、御曹司らしくなかった。
強いて言えば、野生の猛獣。それも傷ついた。この態度も警戒心の裏返しな可能性が高い。
だけど、クラスでもこの態度を取れば、彼が不興を買うのは間違いない。
「副会長ではあるけど、その前に君のクラスメイトだよ」
「だから何? 敬えって?」
「いや。お互いに尊重し合おうってことだよ。君だって、初対面でぞんざいな態度を取られたら嫌じゃない?」
彼は口を閉ざした。考え込むように、指で膝を何度も叩いている。
「上等じゃん。クラスでは大人しくしてるよ。副・会・長・様!」
刺々しい態度で琉生を前髪の下から睨めつけてくる。
なぜだか分からないが、個人的に嫌われてしまったということは、よく分かった。
クラスで問題さえ起こさなければそれでいい。
内心ため息をついてから、彼を促して学園長室を出た。




