せーか4
三人の姉妹は、それぞれで勉強し、それぞれで侍従と交流し、そして三人共同で午後から話し、遊ぶ。それがいつもの習慣である。
その様子から、ギスギスとしているところを想像できるものは誰一人としていなかった。
ある日、屋敷の前に国の馬車が止まった。
それを見て、長女は一足先にお迎えに行く、次女は誰かが捕まるのではと恐れて少し離れ見守る、一方の三女は何も考えることなく応接間で堂々と待った。
長女の対応は早く父母も、果ては侍従長さえも凌ぐ速度で気付いて真っ先に馬車から降りてきた宮廷役人と接触した。遅れてやってきた父母は長女の行動を褒め、そのまま役人を応接間へと招いた。
離れて見ていた次女は、何もないのだと安心して父母の後ろをつける。
全員が応接間へと集まった。そして役人は持ってきた鞄から一通の手紙を取り出す。内容は舞踏会への招待だった。それが彼女らにとってどれほどの吉報であったかは言うまでもないだろう。
役人はその紙を置いた後、出された紅茶を飲んですぐに屋敷を去った。
役人が帰ってからしばらくして、屋敷は建てたれて史上最も騒がしい一時間になった。
父母はとうとう私たちの天使のすばらしさに国が気付いたかと感心し、それを侍従達に言い回る。皆その話で盛り上がり、熱が冷めるのに1時間要した。当の本人たちは舞踏会当日にどう振舞うかを考え、侍従に相談し、話を膨らませていた。
ただ、この舞踏会には一つだけ面倒なルールがあったのだ。舞踏会は参加者と付添人の侍従一名で二人一組の参加が義務付けられている。このルールが原因で、この夜、屋敷の人間が全員、父母と侍従長の3人によって招集された。夫君が舞踏会のルールについて説明すると、その場の行動は二分された。率先して立候補するもの、恥をかかせまいと立候補せずに見守るもの。それでも、皆の考えは一貫して彼女らの誇りを守り、幸せになってもらうことを目標としていた。
20分かけて、その場は立候補者を三姉妹が選ぶという形で収められた。
舞踏会当日、付添い人を除くすべての侍従に休暇が与えられた。屋敷内は驚くほど静かで、幽霊でも出そうな雰囲気だ。そこに3つの声が廊下で響いた。そして、その声は次第に一か所へと集まっていった。
時間が経つにつれ、屋敷に響く声はだんだんと大きくなっていく。しかし、ある瞬間ピタリと止んだ。
その時間、城への出発15分前だった。そこから出発までの間、屋敷内の静けさは元に戻っていた。
出発の刻になると玄関先が少し騒がしい。送迎の馬車にいたのは長女と三女だけで、そこに次女は居なかった。それでも馬車は二人と付添い人3人を乗せ城へと向かってしまった。
あろうことか、肝心の次女は庭で掃除をしていた。大量の侍従がいるにもかかわらず、なぜ掃除しているのか、理由はあの騒ぎにあった。屋敷内に響いていた声は彼女らが対決をしていた声であった。その対戦で次女は負けた。これはその罰ゲームだった。
庭の掃除は続いた。しかし突然掃除の手が止まる。それは彼女の前に大きな魔女が突っ立っていたからであった。魔女は大きな背丈からは想像もできないほどに優しい眼差しで次女を見つめ、言葉を発した。
「あなたは、あなたならば、好きな男くらいは簡単に手玉に取ることができる、必ず…ね。庭の掃除はやっておくから、行ってらっしゃい。」
魔女は持っていた袋からドレスを取り出して手に持つ、そしてそのまま彼女のことをじっと見た。
次女はその言葉に流された。ドレスを受け取って、箒を渡し、着替えるために屋敷へ駆けていった。玄関から出てきた時には元から着ていた地味な衣装とはがらっと変わり、派手で美しい装いへとなった。
戻りの馬車は丁度のタイミングで帰ってきた。次女が早速その馬車に乗り込んだからに、御者はもう一度城へと馬車を走らせた。
馬車に揺られている間、何を考えただろうか。不安、恐怖。恐らくそんなものは一切ないだろう。何せ彼女にはあの大きな魔女のお墨付きだという評価と、それを保証するドレスの両方が備わっている。そんな完全防備の状態でどうしてネガティブに陥ろうか。今まででは考えられないほどの自信が底なしに存在していた。期待と欲望を頭に渦巻かせていると、馬車での時間はあっという間に過ぎ去っていた。
門をくぐり、城までの道を駆け抜け、大きな扉の前までたどりつく。それを開けようにも番人がそれを妨げる。扉は固く閉ざされていた、しかしそれでも声は漏れて聞こえてくる。よく聞けば、その声は舞踏会の開始を示しているように聞こえた。
こうしてはいられないと番人達の制止を振り切って扉を押し開いた。そして名前を高らかに叫ぶ、同時に自身がピンとくる殿方を探していた。二人の目がぱっちりと合う。その相手は豪華な装いをした男であった。幾秒か見つめ合う。しかしそれは長く続かなかった。先ほどの番人が彼女を掴んた。番人は仕事であるから、舞踏会に堂々と飛び入りする人間をそう易々と逃すわけにいかない。
門番によって彼女は外に追い出されてしまったが、舞踏会のハプニングはそれだけで終わらない。見つめ合っていた男がその様子を見て扉の外へ駆け出ていってしまった。
それにより舞踏会はさらに混乱に包まれた。一方で城内にいた姉妹二人は見て見ぬふりして各々の欲に従い、行動を続けていた。
彼は扉が閉じるとすぐさま番人を止め、倒れている次女へ手を差し伸べた。彼女は手をとり、立ち上がる、そしてそのまま男を誘った。
「ありがとうございます。その…少し話しませんか?誰にも邪魔のされない場所で。」
男は誘いに乗った。二人は舞踏会から離れたベンチに座る。座ってから一秒の沈黙もなく、彼は知るための質問をした。それに彼女は淡々と答えていく。その会話も彼女の一言で終わった。
「ねぇ、私を娶る気はない?」
彼は口を開いて言葉を発したが、その答えは鐘の音でかき消されてしまった。鐘の音は舞踏会の終了の合図。男は会場へ戻り、女は会場へ戻れないと考え馬車へ戻る。二人は段々と離れていった。
待っていた馬車には誰も乗っておらず、彼女は一番乗りであった。馬車は出発されない。全員が乗るまでは出発しない。
しばらくして姉妹たちが馬車へと戻ってきた。そして皆口々に舞踏会が中止になったことを話す。その話題は馬車が屋敷で止まるまで続いた。
数日後。ある情報が屋敷内に飛び込んできた。
[王子が話したというジャルストリアのご令嬢は城に来ていただきたい。]
屋敷の人間は嘘をつかない。皆次女を王城へと向かわせた。長女は笑顔で、三女も笑顔で、一方の侍従達は少し悲しそうに。
浮ついた話か、はたまた極刑か。皆前者を信じ、信じ込み送った。
城についてすぐ、あの男が出迎えて言った。
「あの時の答えを行動に移してみたよ、どうかな?」
読んでいただきありがとうございます。ネタが切れた人間です。
せーか、として違う感じがしています。
成果が出ているかはわかりませんが、次の1セットで活動を終えます。
「上達しているかわからない」




