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#52 プロローグ

この世界には、四つの国がある。


東の国、クロス=アージュ科学連邦。

西の国、メガロフォス共和国。

南の国、セオカト。

北の国、ヴァルドノルド王国。


──数百年にわたり、各国の争いは絶えなかった。

いずれかの国境では、必ず火種が燻り、剣と砲火が交わされた。


そして百余年前、歴史上最悪の戦争「四国大戦」が勃発した。


人々は血塗られた円環に閉じ込められ、地は裂け、空は崩れ、命は沈んだ。

世界の総人口の七割が死に、勝者など存在しなかった。


***


四つの国の国境が交わるその場所に、かつて──“エパ・トゥ・スタヴルー”と呼ばれる建造物が存在した。


それは東西南北すべてに出入口を持ち、十字型に広がる、特異な構造の施設だった。


戦争末期、各国の首脳がこの“交差点”に集い、歴史を変える会議が開かれる。

そして、いくつもの条約が結ばれた。


「百年間の停戦」


「軍の解体」


「軍の保有の禁止」


「大量破壊兵器の製造・流通の禁止」


こうして、四国大戦は終結した。

──だが、その場である男が口を開いた。


「戦争ができないなら、各国の代表同士が戦う“代理戦争”をしましょう。優勝国は、他国に対して経済的に優位な条約を定められるようにする。もちろん、法外で横暴な条約は認めませんがね」


発言した男の名は、ジャック・クリオノハート。

当時、“クロス=アージュ連邦”と呼ばれていた時代の大統領である。


その提案は、後に“モノマヒア”と呼ばれる制度の始まりとなる。


やがて、“エパ・トゥ・スタヴルー”は取り壊され、その跡地には新たな象徴──“ケントロ・トゥ・コズム”が建てられることになる。


それは、かつて殺し合いが繰り返されたこの世界において、唯一、命を賭けた「代理戦争」の舞台として選ばれた聖域であった。


四年に一度行われる“モノマヒア”は、今回が二十五回目。

そしてそれは──百年間の停戦条約が、終わりを迎える年でもある。


各国が望むのは、“支配”か。“共存”か。

世界は、再び岐路に立っている。



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