第八章 核心へ(レイの視点)
これまでの道のりで、僕たちは多くの命と向き合わせられてきた。仲間を失い、戦士たちの苦しみを目の当たりにし、それでも生き続けてきた。戦争がもたらす痛みは、それを経験した者だけが知ることのできるものだ。僕自身、どんなに心を閉ざしても、その傷は消えない。そして、この章では、戦争の中で失われたもの、そしてその中で見つけた小さな希望について描こうと思う。
僕が見たもの、感じたこと。それらがどう繋がっていくのかは、まだわからない。ただ、少なくとも今、僕はこうして歩き続けている。戦争が終わらなければならない、そう思い続けている。
僕はミオが目を覚ましたとき、すぐにそれを感じ取った。彼女の顔が少し動き、苦しそうに目を開けたからだ。痛みと無力感が彼女の顔に浮かんでいるのを見て、胸が締めつけられる。無事でいてくれたことにほっとする反面、僕の心にはまだ、彼女を守れなかった後悔が消えない。
「ミオ……」声が震える。無理に笑顔を作ろうとするけれど、胸の中で何かがひどく苦しんでいるのが分かる。
「……レイ?」
その声に僕は息を呑んだ。弱々しいけれど、確かに聞こえた。ミオが僕の名前を呼んだとき、僕はどうしようもなく涙がこぼれそうになる。
「大丈夫か?」
「うん……大丈夫。」
でも、彼女の目はまだしっかりとは覚醒していなかった。僕が手を伸ばすと、彼女はその手を軽く握り返してくれる。その温もりが、僕を少しだけ安心させてくれた。
「君が無事でよかった……」僕は心の中で繰り返した。戦争でどれだけ多くのものを失ったかは、もう数えきれないほどだった。でも、こうしてミオが目を覚ましたことで、何とか少しだけでもその痛みが和らいだ気がした。
ただ、それでも心の中でどうしても消えないものがある。
僕は自分の胸の奥で問い続けている。なぜ戦争が始まったのか。なぜ僕たちは、無意味に命を奪い合っているのか。僕自身が今、戦争という現実の中で生きているという事実をどう受け入れればよいのか、答えが見つからない。
でも、ミオの目を見て、僕はあることを確信した。戦争を終わらせるためには、ただ命を守るだけじゃ足りない。自分自身を見失わず、他人の痛みを感じ取ることができる人間であり続けることが、大切なんだと。
僕はもう、戦争の中で人を殺すことが正しいとは思わない。たとえそれが生き残るために必要だとしても、そんな方法では平和は訪れないと感じている。それに気づいた僕は、改めて心の中で誓った。
戦争を終わらせるために、僕はまだ、何かをできるはずだ。僕の力では小さなことしかできないかもしれない。でも、仲間がいてくれる限り、僕は歩き続けるつもりだ。
「ミオ……」僕は彼女の名前を呟いた。彼女が微笑んだ。その笑顔を見て、少しだけ心が軽くなった気がした。
戦争を止めるために、どんな行動が必要なのか。答えが見えないまま歩き続けてきたけれど、この章を通して少しだけその答えに近づけた気がする。ミオと共に過ごす時間が、僕にとっては何よりも大切なものになっている。彼女と一緒にいることで、戦争が終わった後の世界を夢見ることができる。そして、今はそれを実現するために何かをしなければならないという気持ちでいっぱいだ。
僕たちが進む道には、まだ多くの試練が待ち受けているだろう。しかし、共に歩みながら、少しずつでもその先を照らす光を見つけたい。戦争がなくなる日が来ることを信じて、その日まで共に生き抜くことを誓いながら。