表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第七章 再起と記録

正しさって、ひとつじゃない。

誰かにとっての正義は、別の誰かを傷つけることもある。

それでも、ぼくらは生きている。

生きて、悩んで、間違いながらも前に進んでいく。


この章は、そんなぼくらの再出発の物語。

戦いのあと、ぼくたちはひとつの村に身を寄せた。

静かな場所だった。草の匂いと、風の音だけが、心をなでるように響いていた。


ミオは、まだ眠っていた。

呼びかけても反応はないけど、手当てしてくれた人が「意識は戻るはずだ」と言ってくれた。

根拠はなかったけどそれが、唯一の希望だった。


あの夜のことは、今でも思い出したくない。

仲間がたくさん殺された。

ぼくたちは、守ることもできなかった。

ただ、逃げて、助かっただけだった。


それなのに。

ぼくは怒りに任せて、敵の村に向かった。


その村で出会った戦士は、ぼくを見ても抵抗しなかった。

何も言わず、ただ静かに、こうつぶやいた。


「殺してくれ。楽になりたいんだ」


その顔は、どこかぼくに似ていた。

恐怖でも、後悔でもない。

ただ、深く疲れて、もう苦しみたくないという顔だった。


その戦士は言った。


「人を殺すたびに、自分の中の何かが壊れていった。

最初は“正義のため”って信じてたけど……今はもう、わからないんだ」


ぼくは何も言えなかった。

怒りが消えたわけじゃない。

でも、その人も、戦争の中で傷ついていた。


「敵」じゃなかった。

苦しんでいる、同じ「人間」だった。


その夜、ミオが目を覚ました。

ぼくを見て、かすかに笑ってこう言った。


「……生きてて、よかった」


その一言に、ぼくは救われた気がした。


ぼくは、もう戦いたくない。

でも、何もしないわけじゃない。

誰かの言葉に耳を傾け、苦しみを受け止めて、少しでもやさしさを広げていく。


ぼくは日記を書きはじめた。

失った仲間のこと。出会った人たちのこと。

それから、あの戦士のことも。


いつか、戦わずにすむ世界をつくるために。

この記録が、誰かの未来を守る力になるように。


この章でレイは、はじめて「敵もまた傷ついている」ことを知りました。

怒りではなく、理解しようとする心。

その小さな一歩が、世界を変えるかもしれない。


正しさに正しさをぶつけるだけじゃ、終わらない争いもある。

だからこそ、わかりあう勇気と、やさしさを忘れないように。


ぼくらができることは小さいけれど、

その小さな優しさが、きっと誰かを救っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ