永遠に続く悠希への語録<1>
これは悠希がこの世に残す語録集。
何もない悠希の精一杯が積み重なっていく物語。
「いつかこの物語が誰かの何かになれますように。」
可愛いと言われたい。いつからか、かっこいいと言われるよりも可愛いと言われる方が好きになった。俺には何もない。今まで何か一つのことを続けてきたことはなく、小学生の六年間より長く続けたことは一つもない。陸上、バスケ、書道、塾と、いくつか部活や習い事をしてきたが、全て途中で辞めてしまった。続かない、続けれない。最初は楽しいけど、必ず楽しくない時間が来る。そんな時、練習中、考えてしまう。「つまらない。」って。その瞬間に自分の中ではすでに続けることを辞めている。周りへの体裁だけで、だらだら続ける日々。「辞めます」の一言も言えないまま、すぎる時間。そしてそれっぽい理由が目の前に転がって来た瞬間に言葉にする。今までそうやって生きてきた。俺が何かを始めるきっかけはいつも憧れ。最初は、姉に憧れた。勉強も、スポーツも俺から見たら全てができていて、俺の中にないものがあって。羨ましくて、近づきたくて、同じことをやった。やるたびに俺もあっち側にいけると思った。でもすぐにわかってしまう。俺のやっていることはどこまでも偽物で、気づいたら逃げたいと思っている。最初に感じた憧れはそこにはないと感じてしまう。「その先に本物がある。そこを乗り越えれば見つかる。」なんて何度も考えて、自分に言い聞かせた。今思うと気持ち悪くて、吐き気がする。俺はそういうひたむきな努力が、大好きで大っ嫌いだ。他人の描く物語は好きだ。でもそこに俺がいないのがムカつく。目の前の綺麗なものに俺は入っていない。入れない。入りたい。気持ち悪い感情が、誰にも言えない醜悪さが俺の中にだけ存在し、誰にも言えない、言いたくない気持ちは膨らみ続ける。二十四年間、その気持ちは膨らみ続け、消えることはない。誤魔化してきた二十四年間が、何かを成し遂げてきた画面の向こうの奴らに食い破られる。そうやって食い破られるたびに俺の中の本当の思いと向き合わされる。「何も残さず、死にたくない。」「誰かに必要だと思われたい。」「あなたがいたからって言われたい。」「誰かの心の中に、残れる人間になりたい。」そんな願望が俺を今のままではいさせてくれない。「承認欲求を満たしたいだけ」と言われればそうなのかもしれない。だって、満たされた経験がないから。でもそんな薄っぺらいものじゃない、俺の存在が誰かの何かを、刺激するような、突き動かせるような、そんな人間になりたい。だから、画面の前の、目の前の現実に、現状の立ち位置に吐き気がする。なぜ俺はここにいるのか。あそこにいないのか。なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ。羨ましい。ムカつく。何もない。空っぽな俺では、もうこの育ってしまった感情をどうにかしてあげることもできない。「ごめん。」しか言えない。これまでの自分はどうやったら捨てられるのだろうか。捨てたいけど、捨てられない。弱虫。それが僕だ。
俺は、「ごめん」という文字を書くのが嫌いだ。文字にすると残り続けるその一言は、人を喜ばせる文字ではない。だからその分、「ありがとう。」を残すことにしている。言葉にする「ごめん」と、文字にする「ごめん」には大きな差があるように、感情→言葉→文字へと情報量が絞られていく中で本当に伝えたい思いは伝わらなくなっていく。この文章もそうだ。伝えたいことの十パーセントも伝わらないのだろう。素直な気持ちは、特にそう。伝えたくても伝わらない。伝えられないもどかしさ。そういった言葉にできない感情を文章にできる人には本当に憧れる。それだけじゃない。俺にはできないことが平然とできる人はみんなそう。本当にムカつく。
大学生の時、人生で初めての「仲良くなれない人」に出会った。その人は、俺にできないことを平然とやってのける。本当に、気持ち悪いと思った。嫌いとかそういうわけではなくて、ただただ仲良くなれないという現実が目の前にあることを実感した。その出会い以降、俺は出会った人のことを「仲良くなれる人」と「どれだけ努力しても絶対に仲良くなれない人」「仲良くしたくもない人間」に区別するようになった。その対象は画面の向こうの有名人も同じだ。割合的には、八対一対一程度。もちろん「誰が嫌いだ」なんてことは誰にも言わない。というか言う必要もないし、言ってスッキリするのは自分だけで誰も喜ばないとわかっている。ここまで読んだ人ならわかると思うが、こういうことを平然と人前で言う奴とそれを聞いて喜んでいる奴が「どれだけ努力しても絶対に仲良くなれない人間」と「仲良くなりたくもない人間」に含まれている。人は誰しも合わない部分が存在し、それを許容できるかどうかで社会は成り立っているが、何でも許容するのは気持ち悪すぎる。「人間っていう皮を被りすぎていて気持ち悪い。」という表現が一番かもしれない。ここまで書いてきて、何が言いたかったのかというと、「特定の誰かや、団体、グループについての悪態を、そんなに親しくもない人や大勢の前で話す奴、嫌い。」ということを言いたかった。⤴︎⤴︎⤴︎⤴︎⤴︎⤴︎⤴︎⤴︎⤴︎
「はぁ〜、今日も書きたいこと書けた。」
一月。例年より寒い冬が悠希を家の中に押し込める。そんな中、家の中でやることがない悠希は、年末年始に向けて契約していたサブスクでいろんな作品に触れていた。今回の文章は、さまざまな作品に触れ、溜まってしまった鬱憤を晴らすために書かれた語録。ずっと書き続けられる語録集。永遠に続く悠希への語録の始まりである。
読んでいただきありがとうございます。
定期的に続編を書いていきます。