メイドの話
視点が交互に変わります。
奥様と旦那様の婚姻は詳しくは知らないんですがこちら側からみたいですね。
でも奥様がいらした時はみんな「偽物じゃないか?」と言っていました。だって見窄らしかったしたったお一人で馬車にも乗らずにいらしたから。
その時は着て居るものはボロボロのドレス、髪はボサボサで結んでいるだけ、肌はカサカサで手もザラザラでしたんで、仕事の募集を見て来た人じゃ無いかと、裏にお通ししたんですよ。でもお手紙をお持ちだったのと仕草と言葉遣いで奥様だとやっと分かったんですよ。
で、お部屋にご案内したんですが、お荷物は少しの着替えと古い櫛と祈祷書だけがトランクに入って居てしかも「こんな素敵な部屋で申し訳ない私なんかが使って良いのかと」と驚かれてその後は何もかも恐縮して居ると言うか、お茶をお持ちしても「申し訳ない」お顔を洗う水をお持ちしても「ごめんなさい」お召し替えをしても「ごめんなさい」で謝ってばかりなんですよ。
それに普通貴族のご令嬢ってお茶会でお茶を飲んだり舞踏会に出たりする以外って何をして居るんでしょうか?聞いた話じゃ読書や刺繍とかですよね。お掃除とかあと繕い物とかじゃ無いですよね。目を離すと直ぐに掃除しようとするんでお止めするのが大変でしたよ。
こりゃただ事じゃないぞと執事さんが調べてみたら、ご実家で酷い扱いを受けてそう居たんですよ。お父様が再婚されてその義理のお母様に、お話しみたいな事って本当に有るんですね。
それにしても酷い話ですよねお父様は仕事ばっかりで奥様のことはほったらかしだったみたいです。
あんなボロボロになるまで放っておくなんて酷いじゃないですか。
それから皆で奥様をお助けしよう!笑顔にしよう!健康にしようと頑張ったんですよ。ドレスやアクセサリーを買い揃えたり、季節のお花をお部屋に飾ったり、お菓子や果物をお持ちしたりとか、元気づけようとしたんです。
でも奥様「見窄らしい私になんかに似合わないからごめんなさい」「手間をかけさせてしまってごめんなさい」「食べられなくてごめんなさい」って誤ってばっかりで、メイド長やコック長は「謙虚でお優しい」と褒めるんですけどね。
あんなに謝られるとどうもなあ・・・
やはりここは旦那様がどうにかするしか無いなあ。