第三話「入隊試験」
第三話「入隊試験」
元極道の相馬零司と魔法使い見習いのミレアは
道中、魔物に襲われながらも城下町に着き、店でチンピラに絡まれながらもチンピラ達を叩きのめし、宿に泊まり一休みしたのだった。
城下町 宿
朝
「んん…ゴソゴソ…ふわぁ〜」ノビー
宿で休み、昨日の疲れがとれたミレアは昨日の事を思い出す。
「すごい強さだったなぁ…ソウマさん…。ゴブロを素手で倒すなんて…。それとあんな数の人達を相手に無傷だったし。」
ミレアは出会った当初こそ零司を怖がっていたが、町に向かう道中で自分の事を魔物から守り、歩き進むのに着いて行けなくなった時は待ってくれたりと、さりげない優しさを受ける内に怖さを感じなくなっていた。(チンピラを倒す時は応援していた)
「それと今日は人道軍に入隊志願に行かないと…ソウマさんはどうするんだろう?」
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ミレアは身支度を終え、零司の部屋を訪ねた。
コンコン「ソウマさーん。一緒に入隊志願に行きませんかー?」
ドアを叩き、訪ねても零司は出てこない。
「あれ?もう部屋を出たのかなぁ…?」
ミレアは宿主に零司がいつ部屋を出たのか聞きに行く。
「ああ、あの兄ちゃんなら見てないぞ?出て行ったんじゃないのか?あんたあの兄ちゃんの妹か何かかい?」
「えっそうなんですか!ありがとうございます!後、私はあの人の妹ではないです!」タタッ!
零司が宿を出たと聞き、急いで宿を出て追いかけるミレア。零司を探すが見つからない。
「ハァッ…ハァッ…いない…。この町に着くまで着いてきてもらうだけだったのに、なんで必死に探してるんだろ私。入隊志願に行かなきゃ…!」
◇
その頃零司は
ダララララ…カランッ!50の赤だ〜!
アーヤッタ~!クソォォォ!
「…!…!クッ…!何故だ…!」バンッ!
チンピラ達から奪った金で24時間空いているカジノで夜通しギャンブルをしていた。
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地方人道軍入隊受付所
ガヤガヤ…
「入隊志願はコチラでーす!受付が終わった方は待合室でお待ちくださ〜い!」
「うぅ…来ちゃった…。大丈夫かな。あうっ!」ドンッ!
「邪魔だよ、ど真ん中で立つな。」
「す…すいません…。」
(やめようかな…でも、何の為に村からでてきたの私!もう怯えて暮らすのはいやだ!)
「あの!入隊志願です!」
「お?女の子?珍しいね。じゃあこの受検書に名前、年齢と出身地、アピールポイントを記入して、大事な要項が書いてあるから読んで同意してからまた持ってきてね。」
ミレアは人道軍の受付に渡された受検書に言われた事を記入していく。
「…(アピールポイント…?魔法が使える、でいいかな。)」
書き終えた後大事な要項を読んでいく。
試験は軍の試験官との1vs1の腕比べの試験になります。
試験を受けるにあたって、試験で重症を負ったり、何かを失っても軍は保障はしかねません。
リタイアについてはこちらが試験続行不可能だと判断するか、ご自身でリタイアされるかで判断して頂きます。
尚試験不合格の場合は一年間試験を受ける言葉できません。
「腕比べ…?重症を負うって…?無理だよ、試験ってこれだけしかないの?試験落ちたら一年の間どうしよう。村に帰るしか…」
ミレアが試験の内容に絶望していると、その下にもう一つ要項が書いてある事に気がついた。
魔法は使えますか?〇 ✕
(魔法は使えますか?…使えるけどアピールポイントにもかいちゃった…。とりあえず〇!)
そしてミレアは記入を終え、受付に提出した。
「あのー書きました。」バサッ
サッ「はーい。えーと…ん?」
受付の男はミレアの受検書を見て驚く。
「ええっ!?君魔法使えるの!?」
「は…はい、一つだけ使えます。」
受付は驚いたようにミレアに聞く。
「これは…!ルシアさんに報告だ!ここで少し待っててね!」ガタッ!
「どうしたんだろ…魔法使えるとマズイ事でもあるのかな。…ハァ。あーあ、もう駄目なのかなぁ。」
◇
一方その頃零司は
パララララ…
「ストレートフラッシュ!」
オオー!スゲ~!
「…フッ。」
ポーカーで大勝していた。
◇
ガチャ…ギィィィィ…バタン!
ギラッ!
「ッ…!」
夜通しギャンブルをしていた為、朝日が眩しく感じた零司は、少女が言っていた事を思い出す。
『人道軍の試験があるんです!』
「…。(忘れていた。)」
ミレアが宿にまだいるかもしれないと思った零司は
一度宿に戻る事にした。
◇
宿屋
「あの嬢ちゃんならあんたを追いかけて出て行ったよ。なんか必死だったから追った方がいいんじゃないか?」
「…そうか。礼を言う。」
そう言われた零司は、一度自分の部屋に戻り身支度をして、少女を探す事にした。
「…。」タッタッタッ
『ソウマさんは試験うけるんですか?』
「…(試験場の場所を聞かなければ。)」
零司は町の人に声をかける
「(あいつでいいか)おい、人道軍の試験場はどこにある。悪いが案内も頼む」「何で俺に言うんだよ、他を当たりな!」
「これでいいか」チャリ
「おっ…。ああ、分かったよこっちだ。」
零司は試験所の場所を人に尋ね、そこに向かった。
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人道軍受付所
「アナタ…魔法を使えるのね?私はルシアよ、よろしく。」ニコッ。
「は…はい!ミレアといいます!よろしくです!(きれいなお姉さん…まさかこの人がこの軍の魔法使い?)」
その頃ミレアは受付所にてルシアという女性に質問を受けていた。
「じゃあ早速お願いできる?」
「どこに向けて使えば…。」
「そうねぇ、じゃああそこに立っている男めがけてその魔法を使ってみて。」
「いやいや魔法はキツイっすよ!ルシアさん!」
「うるさい!死にはしないわよ!さぁお願いね。」
「は…はい!(怖い人を吹き飛ばしたイメージで…!)やぁぁー!」ヒュゥゥゥー!
「(風ね…!)」
ゴォォォォ!「うわぁー!ぁぁ…あ、あれ?これだけ?」
「(威力がないわね。)」
「なんかすみません…。(昨日はもっと威力あったのに…。)」
「アナタ…眼を見せなさい。」
「え…眼ですか?」パチッ
ジロジロ
(魔眼が薄い?だから魔法の威力がないというわけか。それでも貴重な魔法の使い手なら…)
「あ…あのー私色んな魔法を使えるようになりたくて、ここに志願しに来たんです。やはり駄目でしょうか…」
「いいわよ。合格!」「えっ!?」
「城の中に来なさい。まずあなたの部屋を用意してあげるわ。」
「あ…ありがとうございます!(やったー!)」
そうして魔法使い見習いのミレアは入隊できたのだった。
「さぁ行くわよ。」
「はい。(…ソウマさんも試験を受けて入隊してくるよね、あんなに強い人なんだから。)」
ルシアに案内され、ミレアは零司の事を考えながら城の中に入って行った。
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人道軍入隊受付所
ザッ。
「ここか。」
試験所の場所を尋ね辿り着いた零司。締め切り間近なのか入隊希望者は零司しかいないようで、
ミレアを探すがいない。
『最強の騎士がいるんです!』
「…。」
最強の騎士という人物が軍にいると聞いていた零司は入隊はしなくても手合わせしてみたいと思った。だがミレアも見当たらず、もうこの場所に用はないと思い零司はこの場を後にしようとする。すると
「志願するのかい?」
バッ!「!?」
突然後ろから声をかけてきた男に零司は振り向く。
(気配を感じなかった…!?)
「?」ニコ
気配もせず、声をかけてきた男は細身の長身で金色の長いシャギーの髪型をしており、服装は白いワイシャツと黒いレザーパンツを着用し、胸元をあけていて軽そうな人物と感じさせる姿をしていた。
「いや。正義に興味は無い。」
「じゃあ何故ここに来たんだ?」
「ここの最強の騎士と手合わせがしたい。」
「…そうか。じゃあなおさら志願して入隊しないと今は闘えないね。」
「…。」
零司は「正義」の軍などに志願する気はなく、元の世界での荒れた暮らしをこの世界でもやるのかと思っていた。
だが、そんな考えはあのミレアという少女との出会いと、最強の騎士という存在によって少しだが薄れている。
そしてその騎士の事を意識した時に零司の闘争本能は燃え、正義かどうかなどよりも軍に入り騎士と闘うという事だけが男を動かした。
「そうだな。それなら志願しよう。」
「僕は受付ではないから受付に行ってきなよ。もし君が受かったら軍で会おう。それじゃあね」ザッ
「…。」
軽薄に立ち去る男。
零司はその男に何か底しれない強さを感じながら受付に向かった。
「入隊希望だ。」
「おっ!運が良いね。今日は君が最後の志願者になるね!」
◇
「この受検書の要項に従って記入して持ってきてね!」
「…(そういえば字は日本語で書いていいものなか?)」
零司はとりあえず受検書に日本語で記入をしてみる。すると日本語を書いているはずの文字がこの世界の文字になり、記入される。
「…(何だか分からんが簡単でいい。出身は…適当にカタカナの村にして、アピールポイントは…回し蹴りの威力の強さと書こう。)」
「…」スッ
「あ!書けた?ふむふむ…聞いたこと無い村の名前だけど、まぁいいか!
後、書いてある決まり事読んだと思うけどもう一回ちゃんと説明するね。
今回受ける試験落ちたら一年間は再試験できないから頑張ってねー。
試験官めちゃくちゃ強くて怪我するか死ぬ思いするかもしれないけど、こっちは責任は持たないからね。生きてたら治療はしてあげるけど。
以上だけど大丈夫かな?」
「ああ。」
「じゃあそこ入った所の待合室で試験始まるまで待っててね!暇だったら見学席行って試験見ててもいいよ。頑張ってね〜」ヒラヒラ
「行くか。」ザッ。
零司の入隊試験が始まろうとしていた。