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おまけに本性になって、つまり竜の姿に戻っていた。ショックだったんだなー。まだ小さいから時々戻ってしまうのはあったんだけど。
誰もいないので、とりあえず整理しよう。
日本人から転生したこと。
まぁ、これは受け入れた。だって死んだだろうものをあれこれいっても仕方がないし。転生先が竜とはファンタジーだなとは思うけど。
前世は普通の会社員で事務員だった。恋人もいなかったし、両親には親不孝したことになるから、それだけは申し訳ない。本が好きだったのと、語学が好きだったのがちょっと性格がわかるところだろうか。おかげで転生を受け入れるのが早かった。
もうひとつは電撃的に番がわかったこと。
これはとうさまにお話しなければ。とうさま?当然王様ですけれども。
反応が予測できないなぁ。可愛がられてきてるから……。かあさまはたぶん喜んでくれると思うけど。
番がわかったのはいいことなんだけど、相手はたぶん普通の人間の男の子なんだよね。いきなり言われても意味が分からないと思う。
ここは普通に落としていきますかー。
できるといいなぁ。だって前世でも恋愛経験ゼロだったし、経験値で言えば自信なんか無い無い。
ただ当然というか幸いというか、竜一族はもともと人外だけあって見目は整っているし、わたしも頬はふっくらとして桃色、唇もつやつやで、おめめぱっちり、可愛いと思う。レティティアは瞳は紫色、髪は紫がかった銀色で、髪の色は相手とおそろいと言い張れなくもない。
うん、愛嬌ふりまいて頑張っていこう!おー!
と気合を入れたところで喉が渇いた。
んしょ、と人の姿に戻る。
横になって手元の鈴を鳴らす。
するとしばらくしてボブヘアの若い女性が入ってきた。
「レティさま。お加減はいかがですか?」
「マリー、喉が渇いたの」
「それでは水差しとお茶のポットを用意しますね」
この女性はマリー。私の面倒を見てくれている通いの女性だ。五歳の私と目を合わせて話をしてくれるし、絵本も読んでくれる。
お茶を飲むと、早速マリーに訊いてみた。
「こうなる前に男の子を見かけたのだけれど、帰ってしまったかしら?」
「ルキウス様ですね。いえ、まだおられると思いますよ。侯爵閣下がお連れになったようで、まだ御用がお済でないようですから」
「ルキウスって仰るのね。とうさまは今大丈夫かしら?」
「ええ、侯爵閣下のお子です。陛下は明日までお忙しいと伺っていますよ。王妃陛下にお会いしますか?」
にこにことマリーが訪ねて言うのに少し考える。
「かあさまに会うわ。そのあとルキウスに会えたらいいな」