第二話 霊界観光
最後に来た場所は居酒屋だった。
「名前は真打。色んなお酒やおつまみ、手料理などを提供するお店だよ。」
「俺まだ18歳なんですけど....」
「大丈夫。真打には色んなお酒があって中には程よく酔える幻酒って言う未成年専用のお酒もあるから。
「そんな夢の様な酒作るなよ.....」
「まぁ、未成年って言っても15歳以上だけどね。」
「はぁ、今何時だっけ?」
「もうそろそろで5時になるよ。」
(せっかく来たしな....)
「行くか。」
「うん!」
そして、中に入ると座敷とカウンター席
んで、でかいテーブルと椅子が6脚でセットの配置になっていた。
そして何故か客の全員が俺に驚いた様な視線を向けた。
俺は思わず小声でシクに聞いた。
「おい、大丈夫なのか?これ。」
「うん、大丈夫。」
するとシクは大きな声で
「安心してください。彼は私の友達で良い人です。どうか、同席させてください。」
安心したのかみんな俺から視線を外して各々の食事を再開した。
「へい、らっしゃい。」
店主と思しき人が声を掛けて来た。
(声のトーンが低い....)
「なぁ、シク。なんかあったのか?」
「え!?」
シクは驚いた。
「え、えっと....」
言おうか迷っている様だ。
「お客さん!!」
すると、店主が大きな声を上げた。その声はまるで鋭い刃物を首に突きつけられている様な
そんな、圧があった。
「世の中には知らない方がいい事があるって親に言われなかったかい?」
物凄い圧を感じる。でも....
「知らない事方がいい事って何ですか?」
「ちょ!」
シクが止めに入って来た。だが、それを無視する。だって、このままハイそうですかと言ってそのままにしておくと後悔すると思ったからだ。
「知らなければ何も出来ない。けど、知れば何か出来る事があるかも知れない。」
「ほう!言うじゃねぇか!だったら、あんたに何が出来るって言うんだよ!!」
「受け止める。」
「はぁ!?」
「俺が、この店に入った時あなた方は俺を驚いた様に見た。つまり、人間が何かをしでかたと言う事。」
「.......」
「その人が何かしでかしたのであれば、ああなるのは必然的だ。」
「......」
「それに、たとえその人が死んでいたとしてもその人の責任はその人のだけじゃ無い。」
「俺にも非がある。だから、その責任を取らせてください。」
店内は静まり返っていた。すると店主が口を開いた。
「俺には、妻と娘がいた。」
「ある時俺は謝って霊界に来てしまった丁度お前くらいの男を俺は家に連れて匿った。」
「そして男と娘は直ぐに仲良くなった。毎日遊んでいた。俺と妻もその姿を微笑みながら見ていた。」
「......」
「そしていつしか、男と娘は結婚した。そこまでは良かった。」
「だが、事件は起きた。男と娘が結婚して数日後俺はその日用事で夜遅くまで出掛けることになった。」
「男と娘そして妻が店番を任していた。そして、俺は意気揚々と家族が居るであろうこの店真打に向かった。」
「そして俺は、ある異変に気付いた。いつも営業しているはずの時間帯だったが何故か今日は店の電気が消えていた。」
「俺は妙な胸騒ぎがした。嫌な予感がしたんだ。そして、嫌な予感は当たってしまった。」
「店の中に入ると同時に見に写り込んできたのは妻と娘の死体だった。」
「.......」
「だが、娘はかろうじて生きていた。だが、助かる見込みは無かった。そして、娘は最後にこう言った。」
「透さん....どうして.....」
「そう言い残し娘は死んでいった。透という名は娘と結婚した男の名前だった!!俺はあの時誓った。」
「人間など2度と信じてなるものかと。」
「......これで話は終わりだ。満足した...か..?」
何故か店主が驚いている。そればかりか周りのお客さんまでもが驚いていた。
「何で驚いているんですか?皆さん。」
俺には分からなかった何故皆んなが驚いているのかが。すると、シクが優しく教えてくれた。
「何でって、ソウ君。君が泣いているからだよ。」
「え?」
俺は言われて初めて気付いた。自分が涙を流している事に。
「あれ?なんで涙なんか....」
「それは、君が純粋だからだよ。」
俺は急いで涙を拭いた。
「.....この話をして泣く奴なんて今まで居なかった。ましてや真面目に聞いてくれる奴すら居なかった。」
「人間にもこんな奴が居たなんてな.....」
「ありがとよ。」
「いえいえ!こちらこそ、勝手に泣いてすいません!」
「謝る必要あるかよ。馬鹿タレが!」
「ええ!?」
「フフッ、」
「あっはっはっは。」
その日の居酒屋真打はいつも以上に賑やかだった。