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嫉妬の応酬

 バレルは長年の夢が叶い、ジャンヌとしっかりと抱き合った。

「バレル、貴方の事が大好き。バレルは?」

 ジャンヌは潤んだ瞳でバレルを見つめた。

「俺もだよ、ジャンヌ。宇宙で一番、君が好きだ」

 バレルはジャンヌを見つめ返した。

「嬉しい」

 ジャンヌは更にバレルを抱きしめた。

「ジャンヌ……」

 バレルはジャンヌの柔らかいものを感じ、反応してしまった。

「え?」

 ジャンヌは腰の辺りに違和感を覚えた。

「あ、ごめん、ジャンヌ、その、ええと……」

 バレルはジャンヌが激怒すると思い、慌てた。しかし、ジャンヌは微笑んで、

「いいよ、バレル。それって、私の事が好きだからなんだよね」

 顔を赤らめた。

「おのれ……」

 カサンドラは二人がいい感じなのを見て、ますます苛立っていた。

「落ち着け、カサンドラ。皇太子殿下は、ジャンヌに独占させたりしない。お前も殿下の御子を産むのだ」

 クラークはカサンドラに囁いた。

「はい、父上」

 カサンドラはクラークの精神波で強く縛られた。

(そして、バレルを縛り、ジャンヌを籠絡させる。そうすれば、御子が二人同時に臨める。しかも、カサンドラが男子を産めば、私は皇帝の外戚となり、神聖銀河帝国を思うがままに動かせる)

 クラークの野望の炎が燃え上がった。彼はバレルに精神波を放った。バレルの目が虚になり、ジャンヌを強く抱きしめた。

「バレル……」

 幼い頃から好きだったバレルに強く抱きしめられ、ジャンヌは夢見心地になっていた。

「ジャンヌ」

 バレルは更にジャンヌにキスをして来た。それも唇にである。舌が入って来たのを驚くジャンヌであったが、すぐに受け入れた。

(バレル……)

 ジャンヌはそこがゲルマン星の司令長官棟だという事を忘れてしまった。二人のキスが激しくなり、お互いが貪るように求め合った。

「カサンドラ、行くぞ」

 クラークは忠実な操り人形になったカサンドラを連れて、部屋を出た。バレルとジャンヌは二人きりになった。

「ジャンヌ、俺の子を産んでくれ」

 バレルが虚な目で告げた。

「え? 子供を産む?」

 ジャンヌはハッと我に返った。

(ダメ、このままでは、あのクラーク・ガイルの思う壺……)

 ジャンヌはバレルから離れようとしたが、バレルはジャンヌを放そうとしない。

「いや、やめて、バレル!」

 ジャンヌはバレルのものが押し当てられるのを感じて、力任せに彼を突き飛ばした。

「ぐ……」

 バレルは皇太子の椅子に座ってしまい、頭を強く背もたれに打ち付けた。

「ジャンヌ、恥ずかしがらないで。優しくするから」

 それもバレルは虚ろな目で微笑み、ジャンヌに襲いかかった。

「やめて!」

 今度はジャンヌは容赦なくバレルの股間を蹴り上げた。

「ぐおおお……」

 その衝撃の強さで、バレルはうずくまった。

「あ、大丈夫、バレル?」

 やり過ぎたと思ったジャンヌが声をかけると、

「いや、これくらいでちょうどいい。俺、またあのおっさんに支配されかけていた」

 バレルは涙目でジャンヌを見上げた。痛みが上回り、精神波の支配が緩んだのだ。

「バレル!」

 ジャンヌは正気に戻ったバレルを立ち上がらせた。

「グローヴをおっさんに奪われた。あれをしていないと、またおっさんに支配されちまう。取り戻さないと」

 バレルは股間の痛みに堪えながら、立ち上がった。

「ごめんね、バレル……。痛くない?」

 ジャンヌは心配そうにバレルの股間を撫でようとした。

「あ、やめて! 今、ジャンヌに触られると、もっと痛みがひどくなる」

 バレルは苦笑いをした。

「そうなの?」

 意味がわからないジャンヌはキョトンとした。

「おっさんとおっぱい姉さんが戻って来る前に、ここを出よう。グローヴを見つけ出して、ゲルマン星を脱出するんだ」

 バレルが言うと、ジャンヌは半目で、

「おっぱい姉さんじゃなくて、カサンドラね」

「ああ、はい」

 ジャンヌがカサンドラに敵意ではなく嫉妬をしているのを気づいていないバレルは顔を引きつらせて応じた。


「む?」

 クラークは執務室へ戻る途中、バレルの縛りが解けたのを感じた。

「如何されましたか、父上?」

 カサンドラがクラークを見上げた。クラークは前を向いたままで、

「いや、何でもない。ついて来い、カサンドラ。お前をもっと殿下に相応ふさわしい女にしてやる」

「はい、父上」

 カサンドラはバレルへの執着も相まって、クラークへの忠節心が強まっていた。

(バレルとジャンヌを会わせたのは、諸刃の剣だったな。悪い方へ作用してしまったようだ)

 クラークはバレルがジャンヌを取り込むと思っていたのだが、バレルの思いがジャンヌの思いと相乗して、精神波による支配を跳ね除けてしまったと考えた。

(予想以上にバレルとジャンヌのお互いへの思いは強かったという事か。カサンドラの入る隙間はないな)

 バレルを精神波で操っても、ジャンヌへの思いがまさり、カサンドラがバレルを誘惑しても、ジャンヌが現れれば、バレルは支配を抜け出してしまうのが見えている。

(ならば、ジャンヌを消してしまえばいいか)

 クラークの顔が狡猾に歪んだ。

「カサンドラ、皇太子殿下がお前を受け入れてくれないのは、ジャンヌがいるからだ。ジャンヌを殺せ。そうすれば、殿下はお前を受け入れ、世継ぎを産ませてくれる」

「はい、父上」

 カサンドラの目を怪しく光った。クラークはそれを見てニヤリとした。

「私だ。皇太子殿下とジャンヌをこの建物から出すな。各員、戦闘配置に着け」

 クラークは携帯端末に告げた。

「了解しました!」 

 端末から応答が聞こえた。

「私も参ります」

 カサンドラが言うと、

「いや、お前はその前に殿下のために身体を磨くのだ、カサンドラ」

 クラークはカサンドラの肩を抱き、再び歩き始めた。


「こっちだ!」

 バレルは自分のグローヴを探知して、長い廊下を走った。ジャンヌはそれに続いた。

「あっ!」

 すると、反対側からニューロボテクター隊がゾロゾロと現れた。

「ざっと数えて、五十人てとこか?」

 バレルは眉間にしわを寄せた。

「敵じゃないよ」

 ジャンヌはバレルを置いてニューロボテクター隊へと走り出した。

「え、ちょっと、ジャンヌ!」

 グローヴがないバレルは躊躇した。

「バレル、こいつらの弱点は首よ! そこなら、グローヴなしでも倒せる! パットがやってみせたわ!」

 ジャンヌが叫ぶと、ニューロボテクター隊が動揺し始めた。

「わかった!」

 バレルも走り出した。ニューロボテクター隊は盾を取り出して、首を防護しながらジャンヌを待ち構えた。

「但し、私はそんなの関係ないけどね!」

 ジャンヌは全身を白く輝かせて、ニューロボテクター隊を次々に拳で打ち倒していった。

「さっすがあ!」

 バレルはジャンヌの攻撃を掻い潜ったニューロボテクター隊の残党の首を殴り、昏倒させていく。あれ程いたニューロボテクター隊は半分以上が倒されていた。

「よし、もういいわ、バレル! 先を急ごう」

 ジャンヌは戦意を喪失したニューロボテクター隊を尻目に廊下を走り去った。

「わかった!」

 バレルは倒れているニューロボテクター隊をかわしながら、ジャンヌを追いかけた。


「時間稼ぎにもならんとはな」

 クラークはニューロボテクター隊の惨状を知り、溜息を吐いた。

「カサンドラがうまく機能してくれれいいのだが」

 クラークはカサンドラのコスチュームを替えた。バレルの性格を考慮してのものだった。

「長官、タミル・エレスから通信が入っています」

 携帯端末から声がした。

「わかった。私の部屋に回しておけ」

 クラークは培養液が入ったたくさんの人間大の透明の容器が並ぶ暗い部屋を出た。


「ここから先は行かせない」

 ジャンヌとバレルの前にカサンドラが現れた。

「え?」

 ジャンヌはカサンドラの軍服を見て、ギョッとした。彼女はインナーのような服装になっていたのだ。へそが丸見えで、太ももも剥き出しである。

(素肌が見えているのかと思ったけど、違う。透明な繊維で、おおわれているようね)

 ジャンヌは眉をひそめた。

「どういうつもり、カサンドラ!?」

 ジャンヌが尋ねると、

「殿下の一番になるのだ」

 カサンドラはフッと笑った。

「はあ?」

 ジャンヌはバレルを見た。バレルはカサンドラの刺激的な服装を凝視していた。

(バカ……)

 ジャンヌは頭が痛くなりそうだった。

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