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ミンドナ燃ゆ

「一体どういう事だ!? マクロムが反乱を起こしたのか?」

 反共和国同盟軍の最高司令官マーカム・キシドムは情報が錯綜しているため、何が起こっているのか掴みかねていた。

「何事です、大声を出して、マーカム?」

 マーカムが指揮をしている執務室に白のワンピースを着た銀髪碧眼の女性が入って来た。彼女はマーカムの母、エレクトラである。その面差しには、かつて反共和国同盟を手中に収めたエレン・ラトキアの面影があった。彼女はエレンの大叔母であり、若い頃はもっとエレンに似ていたのがわかる。

「大した事ではありません、母上。ネズミが一匹、侵入しただけです」

 マーカムは作り笑顔で応じた。エレクトラは不満そうに同盟軍の旗を見上げた。それには女性の横顔が刺繍で描かれているが、それは亡きエレンのものである。二十年近く経った今でも、マーカムはエレンを忘れられずにいる。そのため、エレクトラは旗を見るたびに不機嫌になるのだ。

「それなら良いのだけれど」

 エレクトラは執務室の中央にある革張りのソファに座り、足を組んだ。

(ギャザリー・ワケマクの組織は、あのトムラー反乱軍の傭兵部隊の残党が大半と聞いた。我が防衛部隊では太刀打ちできんだろう。母上を早く避難させなければ……)

 マーカムはエレクトラの向かいに座ると、

「万一の時に備えて、母上はミンドナを脱出してください。危険な目に遭わせたくありません」

 真顔で告げた。エレクトラは右眉を吊り上げて、

「どういう事です? ネズミが一匹侵入しただけなのでしょう? どうして避難しなければならないのです?」

 足を組み替えた。マーカムは母を動揺させないようにゆっくりと話し始めた。

「ネズミ一匹といえども、油断大敵なのです。どうか、お聞き届けください」

 エレクトラは息子の目が真剣なのを感じて、ピクンとした。

(本当にまずい事になっているの?)

 エレクトラは何不自由なく育ち、反共和国同盟の出資者の一番手であるキシドム家に嫁いだ。天の川銀河全域に亘って繰り広げられた旧帝国と反乱軍の抗争の時も、危険な目には遭わず、ニコラス・グレイの乱の時にも直接は戦争に巻き込まれなかった。エレンが最高司令官になったのは知っていたが、彼女の死が己の野望によってもたらされたのは知らない。だから、エレンは戦死したとしか理解しておらず、死の事情を知らないため、エレンに執着する息子が心配なのである。

「わかりました。では、手配を頼みます」

 エレクトラはソファから立ち上がった。

「承知しました」

 マーカムはそれに応じて立ち上がった。


「殿下、では貴方の御子を授かるための儀式を執り行います」

 カサンドラはその豊満な胸を露わにして、ベッドに仰向けに寝ているバレルの上にまたがった。バレルは虚な目のままである。

「良きに計らえ」

 バレルは普段絶対に口にしない言葉で応じた。彼はカサンドラを通じてクラークに操られていた。

「では、失礼致します」

 カサンドラはバレルの衣服を脱がし、生まれたままの姿にした。

「おお……」

 カサンドラはバレルのものを見て、歓喜の声を上げた。

(父の命を受けなくとも、この男は我が夫としたい)

 カサンドラは本気でバレルに心を動かされていた。


「バレル、何をしているの!?」

 バレルの危機にジャンヌとパトリシアがシンクロして叫んだ。


「わわっ!」

 その波動が届いたのか、バレルは自分を取り戻した。

「うは!」

 バレルはまず自分が全裸なのに気づき、股間を隠した。そして次にカサンドラの巨乳を見て、鼻血を噴き出した。

「くっ!」

 カサンドラはバレルの鼻血を胸に受け、思わず後退あとずさった。

「な、何をするつもりだったんだ?」

 バレルは慌てて衣服で身体を隠し、ベッドから飛び降りた。

「殿下の御子を授かりたいのです。どうか、お情けをください」

 カサンドラは涙を浮かべていた。

「え?」

 カサンドラの凄まじい形相ばかり見て来たバレルは、彼女の涙に驚いた。

(このお姉さん、可愛いとこあるじゃん)

 バレルの悪いところが出てしまった。

「殿下!」

 カサンドラはその機を逃さず、バレルに近づくと、その唇を貪った。

「はが……」

 バレルは抵抗するいとまもなくカサンドラのキスに骨抜きにされた。身体を隠していた衣服を落としてしまい、また露わになっていた。

「さあ、もう一度」

 カサンドラは軽々とバレルを抱きかかえるとベッドに戻した。


「バレル、しっかりしてよ!」

 ジャンヌはまたバレルの意識が途絶えてしまったので、涙ぐんで戦艦の狭い通路を走った。

(どうして敵兵が現れないの?)

 ジャンヌはすんなり進めるのを妙に思っていた。

(罠?)

 ジャンヌは警戒しながら先へと走った。

「パット!」

 ジャンヌはパトリシアの気配を宇宙そとに感じて立ち止まった。


「ジャンヌ?」

 パトリシアもまた、クラークの戦艦の中からジャンヌの気配を感じた。

「そこか!」

 パトリシアは宇宙服を着込むと、小型艇を乗り捨てて、ブースターで戦艦へ接近した。そして一番近いハッチに取り付くと、力任せに引き破り、中へと侵入した。

「ジャンヌ、どこだ!?」

 パトリシアは塞がっていく装甲をチラッと見てから、通路を走り出した。

『パット、母さんとアメアさんはブリッジにいるわ』

 ジャンヌの声が聞こえた。

「わかった! それぞれ、そこへ向かうぞ」

『ええ!』

 二人はブリッジへと走った。


(来るか、ジャンヌ、パトリシア。皆私の強い子を産むのだ)

 クラーク・ガイルのよこしまな気が艦内を埋め尽くすように広がっていく。

「お前も終わりだ、クラーク・ガイル。我が妹と娘に退治されるがいい」

 アメアはクラークを睨みつけたままで毒づいた。

「それはどうかな?」 

 クラークはフッと笑うと、カタリーナを見た。カタリーナはその視線にギクッとした。

(この男は恥も外聞も関係なく、私を利用してジャンヌとパットを跪かせるつもりだわ)

 カタリーナはどこにいるのかわからない夫に祈った。

(ジョー、助けて。私のせいで、ジャンヌとパットが……)

 クラークはカタリーナが涙ぐんでいるのを見て高笑いをした。

「どうやら、カタリーナは覚悟を決めたようだぞ、アメア・カリング。お前も私に平伏ひれふせ。そうすれば、娘と妹は側室にはしない」

 クラークはアメアに揺さぶりをかけて来た。しかしアメアは、

「何を言っている、クラーク・ガイル。娘と妹はお前如きにやられはしない。覚悟するのはお前の方だ!」

 挑発をし返した。


「準備はできたか?」

 マーカムは側近に尋ねた。

「はい。ミンドナを失うのは大きな痛手ですが、ギャザリー・ワケマクは共和国と深い繋がりを持つ女です。その女を葬れるのであれば、元は取れます」

 側近の一人が答えた。マーカムは頷いて、

「母上は脱出されたのか?」 

「はい、先程軍の大型戦艦に乗られました」

 側近が告げた。マーカムは眉間にしわを寄せて、

「アンドロメダ銀河連邦から入手した兵器を使えば、天の川銀河統一の日も近くなる。今はその日を信じて、この屈辱に堪えよう」

 通路を大股で歩き出した。

「はっ!」

 側近達は敬礼をして、マーカムについて行った。

(好きなだけ、ミンドナの基地を破壊しろ、ギャザリー・ワケマク。貴様は組織諸共、根絶やしになるのだ)

 マーカムは不敵な笑みを浮かべ、通路を歩き去った。


「妙だね」

 ギャザリーは反共和国同盟軍の反撃が弱くなっているのを見て、眉をひそめた。

「どうしたんですか、姐さん?」

 大男が尋ねた。ギャザリーは大男を見て、

「抵抗が弱過ぎる。いくら我が精鋭が強いとはいえ、おかしい。何かある」

 場数を踏んで来た勘が働いた。彼女はビリオンスヒューマンではない。あくまで経験と知識の導き出した勘である。

「罠だって事ですか?」

 大男はギャザリーの勘を何度も見て来ている。そのほとんどが当たっていたのだ。

「全員を撤退させな。これは罠だ。何かある」

 ギャザリーは素早く決断を下した。

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