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惹かれ合う者達

 ギャザリーの船を脱出して、ジャンヌはゲルマン星へ向かおうとしたが、

「何よ、これ? 何語で書かれているの?」

 現在位置を確認しようとしたが、座標に表示されている文字が読めない。反共和国同盟軍は乗っ取り対策として座標を古代文字で表記していたのだ。それは操作で標準文字に変えられるのだが、ジャンヌにはわからない。

「はっ!」

 ジャンヌが小型艇を強奪した事が同盟軍の本部に伝わり、惑星ミンドナから掃討部隊が飛び立って来た。

「私には戦闘意志はない! 絡んで来ないでよ!」

 ジャンヌは座標を諦め、ミンドナの公転域から離脱する事にした。しかし、掃討部隊の艦隊は執拗にジャンヌを追いかけて来た。

「しつこい!」

 ジャンヌはジャンピング航法でミンドナの公転域を離脱した。掃討部隊の艦隊はジャンヌの行き先をトレースし、すぐにジャンピング航法で追いかけた。


「ジャンヌを手放すのは惜しいが、反共和国同盟軍を叩きのめすのは嬉しいね」

 ギャザリーはキャプテンシートに座ると、目の前に広がる惑星ミンドナを見つめた。

(情報部の大佐の命如きで、脅しは無理だろうけど、弾除けくらいにはなってもらわないとね)

 ギャザリーはギルバート・マクロムを薬で自白させ、目的が何なのかを掴んだ。

「まずは大佐のふねを頂こうか。この船よりは頑丈だし、貴重な軍艦を破壊する程、同盟軍は裕福じゃないだろう」

 ギャザリーは部下をギルバートの戦艦に乗り込ませ、立ち所に占拠した。そして、自分の船を戦艦の格納庫に入れると、ミンドナへと降下を始めた。

「見えるかい、大佐殿? ミンドナだよ」

 ギルバートは大男達に気絶寸前まで殴られ、目もまともに開かないくらいの顔になっていたが、ブリッジの天井にフックを付けて吊し上げられた状態で窓の外に見えるミンドナを見させられた。自白剤によっていろいろな事を喋ってしまった自覚があるギルバートは、本部に戻ればどうなるかわかっており、顔色は優れなかった。

「大佐殿から聞き出したコードを入力して、本部に近いドックに着陸しな。そこから先は、好きにしていいよ」

 ギャザリーは部下達に携帯端末で呼びかけた。元々、荒くれ者達を束ねて作られたギャザリーの組織は、旧帝国時代に存在したトムラー反乱軍の傭兵部隊出身者が多い。それ以外にも、ドミニークス反乱軍のロボテクター隊に所属していた者や、フレンチ反乱軍の軽身隊にいた者達も多い。要するに寄せ集めではあるが、ギャザリーのカリスマ性で統率された精鋭部隊なのだ。陸戦ともなれば、反共和国同盟軍の部隊など、敵ではなかった。

(それ程の連中をたった一人で制圧したジャンヌは扱い切れない。逃して正解だったね)

 ギャザリーは改めてジャンヌの強さを思い知った。


 クラークの小型艇はアメアの戦艦に再接近して、錨を発射すると、戦艦の突起物に絡ませ、それを手繰り寄せる事で攻撃の死角に入った。

(一人で白兵戦とは、あまりにも無謀だが、相手も二人。しかも、アメアはカタリーナという大きな枷を連れて来ている。勝機は我にあり)

 クラークは宇宙服を着込むと、小型艇を出て、アメアの戦艦に張り付いた。

「むん!」

 クラークは精神波を使って装甲を引き剥がし、内部に侵入した。

「待っていたぞ、クラーク・ガイル!」

 そこにはアメアが立っていた。

「何!?」

 クラークは驚愕した。

(何故わかった?)

 破った装甲はたちまち塞がっていた。

「お前はバカか? あれ程の力を使えば、どこにいるのか丸見えだぞ」

 アメアはせせら笑った。クラークは宇宙服を脱ぎ捨てると、

「それはしくじったな!」

 いきなり精神波を放った。ところが、アメアはそれを跳ね飛ばした。

(やはり、こいつには精神波は効かないか。カタリーナ・パンサーを使うしかなようだな)

 クラークはカタリーナの居場所を探った。

「母上には近づけさせないぞ、下衆め!」

 クラークの思考を見抜いたアメアが叫び、飛びかかって来た。

「私に肉弾戦を挑むとは、向こう見ずな女だ!」

 クラークはアメアと力比べを始めた。二人の両手が互いを掴み合った。

「ぐうう!」

 体格差では圧倒的にクラークが有利に見えたが、実際にはアメアが優っていた。クラークは手首の骨を折られてしまう寸前まで押された。

「このアメア・カリングを甘く見るな、下衆め!」

 アメアが更に力を込めた。ゴキッという鈍い音がして、クラークの両手首が折れた。

「がああ!」

 激痛のあまり、クラークは叫んだ。

「下衆は死ね!」

 アメアは畳み掛けるようにクラークの顔面に頭突きを食らわせた。

「うごお!」

 クラークは鼻をへし折られて鼻血を噴き出し、仰向けに倒れてしまった。

とどめだ!」

 アメアは足でクラークの顔を踏みつけようとした。

「ダメ、アメア! 殺してはいけない! そいつはパットの命を握っているのよ!」

 そこへカタリーナが駆けつけた。

「母上!?」

 アメアは思ってもみなかったカタリーナ登場に動揺した。

(これは好機!)

 クラークは鼻血を止めながら、カタリーナに精神波を放った。

「きゃっ!」

 カタリーナはその衝撃で弾け飛んだ。

「母上!」

 アメアは慌ててカタリーナに駆け寄った。

「何、今のは?」

 カタリーナは鼻血を垂らして起き上がった。それを見たアメアは切れてしまった。

「ああああ!」

 アメアは目を吊り上げ、全身から凄まじい気を発すると、クラークに突進した。

「アメア・カリング、お前が私を殺すよりも早く、私がお前の母親の息の根を止めるぞ!」

 クラークは狡猾な笑みを浮かべて立ち上がった。

「くっ……」

 怖いもの知らずのアメアも、カタリーナの命を盾にされると、立ち止まるしかなかった。

「一歩でも動いたら、カタリーナの命はないぞ」

 クラークはニューロボテクター隊を呼び寄せると、アメアを拘束させた。通常の手枷では引きちぎられてしまうので、内部にレーザーを通したものを使用した。

「先程の礼だ、アメア・カリング!」

 超回復で治った右手で、クラークはアメアの顔を殴りつけた。

「アメア!」

 カタリーナは自分のせいでアメアが無抵抗になっているので、涙を流して叫んだ。アメアは口から血を流して立ち上がった。

「まだだ!」

 クラークはアメアを何度も殴った。

「やめて!」

 カタリーナは泣きながら懇願したが、クラークは嬉しそうにアメアを殴り続けた。アメアはその度に無言で立ち上がり、クラークを見た。

「流石に頑丈だな。私の拳の方が壊れてしまうよ、アメア・カリング」

 クラークは腫れ上がった自分の右手を見た。

(私のせいで、アメアが……)

 カタリーナは一緒に来た事を悔やんだ。


「くっ!」

 ジャンヌはジャンピングアウトした宙域にすぐに掃討部隊の艦隊が現れたので、舌打ちした。

(ゲルマン星の絶対防衛ラインの内側にジャンピングアウトするしかないか)

 ジャンヌはまたジャンピング航法に入ろうとした。その時だった。

「母さん?」

 ジャンヌはカタリーナの泣き叫ぶ声を聞いた。

「アメアさん?」

 そして、クラークに殴られるアメアが見えた。

「今行くわ、二人共!」

 ジャンヌは白く輝くと、ジャンピング航法に入った。


「すぐにトレースしろ!」

 掃討部隊の隊長が命じたが、

「トレースできません!」

 部下が叫んだ。

「何だと!? そんな事があるか!? その小型艇は我が軍のものだ。トレースできないとはどういう事だ!?」

 体調は部下の襟首を捻じ上げた。

「わかりません! 何故か、トレースしようとすると、妨害電波のようなものが発されて、トレースができなくなるのです」

 部下は涙ぐんで告げた。

「ええい!」

 隊長は部下を放すと、やり場のない怒りを近くにあったシートの背もたれにぶつけた。

「このままでは、我が部隊は本部に申し開きが立たん! 何が起こっているのか、すぐに調べろ!」

 隊長はブリッジにいる全員に命じた。

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