3話 納得がいかない!
グリフォン王国は、近隣国と比べると広大な土地を有している。肥沃な大地で作物多く生産され、諸外国への輸出も盛んに行われている。そして外交においても優れており、ここ数十年において国同士の争いは起こっていない。
ただ、一つ問題があるとすると国の境目に沿って大きな山脈が連なっていることだ。それが国の三分の一を占めている。そしてその山には魔物が生息地となっていて、山を下りては人や作物を食い荒らすという被害が頻繁に起きている。
それに対して国は魔物討伐に特化した軍隊を作り、魔物の撃退を行っている。それからギルドを作り冒険者を募って、魔物のランクごとに分け報酬を与える等をしている。その報酬の高さに他国からの冒険者が訪れることも多い。
そこまで読むと、アーノルドはため息をついて本を閉じた。
「先生、この国の事はすでに知っています。僕はもっと色々なことを学びたいのです。」
アーノルドが父の国王と約束してからすでに1週間経っていた。最初はやる気で充ち溢れていたが、今まであんなに勉強をさせたがっていた教師たちが慌てることはないとなぜかあまり教えたがらなくなった。
「アーノルド殿下は、まだお若いのでそんなに一気に勉強なさることはありません。少しずつでいいのです。」
「しかし、僕には時間がないのです。今まで分を取り戻さないといけません。」
今まで、遊んでいた時間は戻ることはない。だからこそ、その倍以上は頑張らないと父上との約束が果たせない。
「焦ることはございません。ゆっくりでいいのです。今日はこの辺にしておやつにいたしましょう。今日は殿下の好きなケーキをお持ちしました。」
先生はにっこりと笑ってそう言いだした。まだ授業が始まって1時間も経っていない。前の僕だったら何も考えずに喜んでいただろう。
「授業をしないのなら、鍛錬にいきます。甘い物は食べない事にしたので次からは持ってこなくてもいいです。では、これで失礼します。ありがとうございました。」
僕の言葉に驚いたような顔をしていたが、僕は構わずに部屋を出た。
「アーノルド殿下、どちらに向かわれるので?」
部屋の外に待機していた護衛が付いてきた。
「訓練場に行く。ヒース殿に鍛錬してもらう。」
「…殿下、ヒース様より本日は休養にして頂くようにと伝言を預かっております。」
その言葉に、僕は足を止めた。
「ヒース殿になにか急用でもできたの?」
「いえ、ヒース様は殿下の体調を気にしておられるようです。毎日のように運動をするのは体に良くないと……。また体調を崩されるのではないかと心配されておりました。」
「………。」
ああ!もう!! なんでこんなにやる気に満々なのに止められるんだ!?
そりゃあ、前の僕と比べたらおかしくなったと思われているかもしれないけどさ。それにしてもこれはちょっと過保護すぎるのではないだろうか。
「……父上の執務室に行く。」
僕はこのままではいけないと思い、父上に直談判することにした。