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2話 アーノルド王子の初恋




「あら? あなたも迷子?」






どこから現れたのか、女の子が僕の横に立っていた。

キラキラと輝く金色の髪は肩でカールしている、まるでお人形のようなかわいい子がこちらを見ていた。


「……。」


無言で睨んで追い返そうとしたが、女の子は気にも留めないで僕の隣に座った。そして、聞いてもいないのにペラペラと話し出した。


「あのね、今日。おうじさまのお茶会に来たのだけど、どうしてもおトイレに行きたくておトイレから戻ろうとしたら戻れなくなっちゃった。」


「……あっちへ行け。」


なるべく口を見せないように俯いて言った。そんな僕を女の子は不思議そうに見ていたが何かに気づいたように慌てたように話しかけてきた。


「もしかしてどっか痛いの? 大人の人を呼んでこようか??」


「うるさい! あっちへ行けといっているだろっ。」


心配そうに覗き込む女の子に向かって思わず怒鳴ってしまった。そして慌てて口を隠す。


「あなた……。」


やっぱり歯が抜けたみっともない姿を見られてしまった。恥ずかしさのあまり思わず目を瞑った。


「あなた! わたしとおそろいね!!」


「?」


目を開けると目の前の女の子は笑って自分の歯に指をさした。女の子の上の前歯が一つだけきれいに無くなっている。


「ね、おそろいね!」


「なんでそんなに嬉しそうなんだ? 歯がないのは恥ずかしいことだろ?」


「あら、おかあさまから聞いてないの? 抜けたのは子供の歯なんだって、今度は大人の歯が生えてくるのよ。だから私達は大人の仲間入りしたのよ! 嬉しくないわけないじゃない?」


そう言って笑った女の子の笑顔がキラキラ眩しく見えた。そして不思議なことに色褪せて見えた僕の世界がぱあーっと女の子を中心に色付いて行くように感じた。顔が熱くなり胸の鼓動が早くなっているのがわかる。



そして顔が赤くなった僕を見て、「やっぱり具合が悪いのね」と女の子は僕の手を引っ張ってバラ園を出ると、僕を探していた侍女達に見つかってしまった。

僕がぼーっとしている間に女の子から僕の様子がおかしいと聞いた侍女たちが慌てて護衛に僕を部屋に運ばせた。ベッドに寝かされると本当に熱が出たらしく、熱にうなされて気づいたらあれから三日も過ぎていた。


熱にうなされている間、ずっと考えていたのは女の子の事だけだったが、そこで名前を聞いていなかったことに気付いた。

それでもこの熱が下がれば母上に女の子を探してもらえばいいと思っていたのに、世の中そうはうまくいかなかった。


やっと熱が下がり、母上との面会が叶って女の子の事を話したら、すぐに調べてくれた。


「アーノルド、あなたの探していた子はオルコット侯爵の娘。レーナ嬢でしたよ。ただ、彼女は‥‥‥。」


母上から聞かされたのは、女の子は数日間に侯爵の令息と婚約したらしい。


どうしても女の子を婚約者にしたくて母上にお願いしても駄目だと言われた。

僕は諦めきれずに父上にお願いすることにした。父上は王様なのだから息子の僕の願いなどすぐに叶えてくれるだろう。そう思ったのだが‥‥‥。





「駄目だ。」


僕の願いは、間を置かずに却下された。


「っ、何故ですか!! 父上!」


「政を行う者は私情を入れてはならぬ。もし余がお前の願いを叶えようとすれば臣下達の忠義は失われるだろう。」


「それでも、僕はレーナ嬢と結婚したいのです!」


どうしても諦めきれなかった。父上は少しの間、何かを考えていたが僕にある提案をしてきた。


「……ふむ、ではこうしよう。レーナ嬢がお前を選ぶというのなら認めることにする。但し、お前自身を選んでもらえるよう努力せよ。今までの不真面目な態度を改め勉学、鍛練を怠らずに誰もが認める男となれ! それが嫌なら諦めよ。」



父上の言葉に大きく頷いた。

まだ、希望はある。あとは努力するのみ!!





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