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後編

大変長らくお待たせしました。

後編執筆しましたので投稿しました。

翌日、ジルフェイ様の要望により、ニーナ、私,兄,そして何故かアクシス様が皇居に呼ばれた。

陛下の御前、嘘偽りのない事実を述べることを先に宣誓し、兄が仕切る形で始まったニーナへの尋問。


「妹の、殿下に対する認識を間違って知らせた挙句、愛し合っている二人を引き離すかのような行動を取った理由は何なんだ」


兄は静かに口を開いてニーナへ問いかけた。

ジルフェイ様は私の隣に立ち,優しく手を握ってくださっていた。

別に怖いわけではないが、数えるほどしか顔を合わせたことのない陛下の前で足が小さく震えてしまったためだ。


「私はエティの言葉をそのまま殿下にお伝えしました」


「エティの好きな男性像とは真逆のものを殿下に伝えていたようだが」


「それは申し訳ないわ。きっと勘違いしていたのね。失礼致しました」


冷静なニーナの受け答えに私はおろおろしていた。昨日、ジルフェイ様は『ニーナはエティを嵌めたんだ。きっと、私の妻という座に就いて権力を振り翳したいがためにあんな嘘を吐いていたんだ』と険しい顔で言っていた。

しかし、どうも私はそのように思えなかった。


「では、これを見ても言い逃れできるとお思いか?」


のらりくらりと質問をはぐらかすニーナに、兄はあるものを突きつけた。

私から見えるのはただの紙切れだ。小さい字で色々書かれているようだが、なんなのだろうか。


「それは」


ニーナが息を呑む。


「目を通させてもらいましたが、殿下と妹の婚約破棄を綿密に計画していたようですね」


「違うわ、嘘よ」


「ニーナ嬢の自室から見つかった紙片だが」


兄の言葉に、毅然とした態度をとっていたニーナが膝を突いた。


「ええ、ええそうよ。美しく頭の良い殿下には私の方がふさわしいと思っての行動。自分で言っていたけれど、エティは身分が低すぎるもの。あんなエセ貴族なんかよりも、王族の血が濃い私の方がふさわしいのよ」


あの優しいニーナからの言葉だとは思えなかった。


「エティを侮辱するのか」


ジルフェイ様が怒りを殺した声でニーナに問いかける。


「今更婚約者気取り?笑えるわね。今までほったらかしていたくせに。本当は愛していないのではなくて?エティの有能なお兄様を将来自分の近くで働かせたいがためにエティと愛のない結婚をするのかし」


ニーナの言葉は途中で切れた。

ジルフェイ様がニーナの顎に剣の切先を向けていたからだ。


「それ以上、口を開くな。今なら見逃してやる。このまま皇居から出て行け。そして」


言葉を切って、今までに聞いたことのない冷たい声で言い切った。


「一生エティに近づくな」


ニーナは手が切れることも構わずに剣を手で掴み、避けた。


「ええ、そのつもりよ」


チラリと私の方を向いたニーナはひどく優しく微笑んだ。

そして、優雅に部屋から出て行った。


「ジル」


今まで黙って会話を聞いていたアクシス様がジルフェイ様の名を呼ぶ。


「何だ」


「ちょっと退席しても良いかな」


ジルフェイ様は陛下を見た。

陛下は自身の前で行われていたことに目を丸くしていたが、アクシス様に退席の許しを出す。


「ジルフェイ」


陛下が落ち着いた声でジルフェイ様の名を呼んだ。

ジルフェイ様は目を陛下に向ける。


「対話は大切だ。話さないと思っていることは伝わらない。後に後悔することもある。言いたいこと,したいことはどんなに恥ずかしくてもした方が良い」


陛下はことが終わったと判断したようで部屋から出ていかれた。

出て行く途中、私の頭を優しく撫でて「息子を見放さないで欲しい」と言われた。

そして、兄はいつの間にか姿を消し、ジルフェイ様と私しかいなくなった部屋で私はジルフェイ様と見つめ合っていた。


「エティ」


ジルフェイ様が私の手を掴んで、伏し目がちに問いかけてきた。


「話を、しないか」


きっと、これは良いことだ。


「はい、たくさん話してジルフェイ様のことを知りたいです。そして、どれだけ私がジルフェイ様を愛しているかを知っていただきたいです」


オープンな言い方に、ジルフェイ様は顔を横に向けて頬を赤らめた。


「ああ」


でも、繋いだ手はそのままだった。

きっと、今からでも遅くない。

お互いを知るタイミングに早い遅いなんてないはずだから。










「ニーナ嬢」


部屋のドアの横、顔を手で覆って啜り泣くニーナを見つけたアクシスは声をかける。


「アクシス様。無様な私を笑いに来たのかしら。悪趣味ね」


嫌味を受け流し、ズバッと言った。


「自ら悪役を買って出て親友の恋を取り持つとは捨て身な考えだと思っただけ」


「挙句、大切な友人との接近禁止令。こんななら、エティを攫って海外に飛べば良かったわ」


「やはり、ニーナ嬢は」


エティ嬢を恋愛的な目で見てしまっていたのか、と続けようとしたアクシスだが、そこまで無粋ではなかった。

ただ、悲しげに笑うニーナの顔がその言葉を肯定していた。


「この想いを止められるうちに殿下にはエティを幸せにして頂かなくてはいけなかった。勿論、エティが殿下を愛していなかった場合には問答無用で婚約破棄を提案する書状を出していたわよ」


エティ嬢の兄が証拠として出した紙片。

あれが見つかった経緯が不自然だったのだ。まるで見つけて欲しいかのような場所に放置されていた。

アクシスはハンカチを出してニーナに差し出した。


「お互い、苦労したんだな」


そして、遅れて部屋から出てきた陛下が『わかっている』と言った風にニーナの肩を叩き、隙を見計らってジルフェイに言っておくと言葉をかけた。


「貴族というのは本当に辛い生き物だな」


陛下はそう言って去って行った。

まずは息子と可愛らしい婚約者の仲を良くして、と色々と頭の中で計画を練りながら。

誰もが幸せになれる未来にするにはどうすれば良いのかを考えながら。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

しっくりこない終わり方となってしまいました。

もっと良い終わり方が見つかったら変更するかもしれません。




※誤字脱字報告ありがとうございます。該当箇所を修正しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「ツンデレは苦手ですし、ジルフェイ様の態度はただただ嫌っている人に対するものでした」  ツンデレが可愛いのは創作の世界だけで、ただ迷惑で腹が立つのだよね。うちの母はデレもしないツンなの…
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