表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DECEMBER  作者: 竜月
アントラクト
38/63

間章 -次の日のはじまり-


 暗い森。

 風が梢をざわざわと揺らしていて、何かが迫ってくるような不安を漂わせていた。

 手の届く範囲しか見えない闇を、二筋の光が通り抜けた。

 何度も森の影に隠れながら近づくそれは、低い唸りを上げて、やがて見えてきた光は獣の両眼のようだった。

 車。

 黒いワゴン車だ。

 ワゴン車はかなりのスピードで狭い道を走り、そして、ある空間で停止した。

 ドアが開く。


「こわかったー、もお飛ばしすぎだよ」

「大丈夫だって。俺、めっちゃ運転うめえんだから」


 笑顔で車から降りてきたのは、十代から二十代前半ほどの若者だった。男子二人と女子二人。一様に派手な色彩をしているが、暗闇であまり見えない。

 車のヘッドライトは建物を照らしていた。

 白い壁。割れたガラス窓。三階建てほどの建築物。まるで森に抱かれるように建っていた。


「ねえここ? めっちゃこわくない?」

「肝試しなんだからこんくらいじゃなきゃ」


 エンジンとヘッドライトが消えて、世界は真っ暗の森に戻る。


「きゃあっ!」

「ははは、大丈夫だって。ほら掴まって」

「あ、気を付けて、そいつに掴まるほうが危ないかもよ?」

「何言ってんだバカ」


 懐中電灯が灯り、四人は建物へ向かっていく。


「……――?」


 ふと、最後尾を歩いていた女が振り返った。

 視線の先には森、その向こうには街がある筈だ。


「どうしたのー?」


 先を行っていた男が尋ねる。

 女は男を見て、


「なんか……パトカーの音が聞こえなかった?」

「え? 聞こえなかったけど」

「そう……」


 女は名残惜しげに視線を残していたが、やがて振り切って建物へ向かった。


 四人は闇に飲み込まれた。

 誰も知らぬうちに。

 


      ☨




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ