王様ゲームの悲劇
「俺っすね。」
そういって手を挙げたのは、井上だった。
「んー。…じゃあこれ使って今日一日女装しといて、3番。」
リュックからウィッグを取り出して言った。
「はぁ?いや待ってや俺今制服やん?絶対似合わんて。」
3番は邦海だった。
「王様の命令は絶対だし…。服は何とかなるんじゃね?」
「えー…。」
「あーいた!森あんたせりちゃんに呼ばれてたよ!」
階段から、女の子の声が聞こえてきた。
「え、なぜ?集合は7時半だろ?佐久間。」
佐久間と呼ばれた子は、腕に付けていた時計を俊太に見せた。
「今40分だけど。」
「…マジ?あ、ホントだ…。わりい、俺ちょっと行ってくるわ!有間。」
「何?」
「楽しみにしてるぞ。」
と言って、邦海にウインクした。そして、階段を駆け上がっていった。
「…」
「何々?何してたの有間君。」
「え、あ、えっと…。」
邦海が戸惑っていると、代わりに誠介が言った。
「王様ゲームしててさ、邦海がウイッグ使って女装する…こ…」
説明をしている途中で、誠介は椅子から立ち上がった。そしてそれと同時に床に倒れた。
「一条!?」
「え、なななな何があったんだよ!」
「えええええええええ嘘でしょぉー!」
3人が戸惑う中、邦海は落ち着いていた。
「あー大丈夫やで、2~3時間寝たらまた起きるから。ま、逆に言うと、2~3時間は何しても起きへんけどな。」
「何って…どの辺りまで?」
佐久間が、恐る恐る聞いた。
「まあ…竹刀で50回叩いたり大音量かつ耳元で音楽流すぐらいだったら全然起きへんね。」
邦海は自慢気に言った。
「そ、そーなんだ…。」
「あ、そうだ!」
急に、石橋が叫んだ。
「話変わるけどさ、佐久間から服借りればいいんじゃねーの?」
「あ、いいね。」
「あーそれじゃあ仮楽屋に来てよ。今日結構服もって来てるし、どうせ女装するならメイクとかもして完璧にしたい!」
「え…?」
「ほら有間君。行こ行こー。」
というと、佐久間はウイッグを持ち、邦海の腕を引っ張って廊下を走っていった。
「さてさてどうなることやら…。」
「結構楽しみだな。けどさ…。」
「あ、お前もそう思うか。ギャップがすごいことになるんじゃ…。」
そう、邦海は男子の中でもかなり声が低い方だった。
竹刀で50回叩かれるってどれ位いたいんやろか