三秋縋『三日間の幸福』は私のために書かれたのでは?
なぜか昨日更新してからやたらPVが増えてました。なぜ?
それはさておき、昨日の続き的な内容です。
ここから読み始めた方はこの一個前の記事をご覧ください。
では本題です。
ちなみに本のレビューとかおすすめではないです。
昨日陰キャの救済について考えた私はふとVチューバ―の卯月コウさんの配信を思い出して三秋縋という作家の本を買いました。それがタイトルの『三日間の幸福』です。
ざっとしたあらすじは、冴えない大学生が残りの人生を三か月残して全て売り払うものの値段は三十万円にしかならない。残った余生を有意義に過ごそうとするも、次々と嫌な目に遭う。しかし余生の監視に現れたヒロインと惹かれ合っていく……という感じです。
まず私の心を捉えたのが、主人公の内面に強い共感を抱いたことです。もし私がもうちょっと恵まれない境遇で人生を送ればこうなっていたかもしれない、と思わせるに十分でした。
いくつか例を挙げると、
・他人に対して関心がない(好意を抱いてくれた人を無下にする)
・自分のことを特別だという気持ちを捨てきれない
・昔は勉強が出来た
・常に「何かいいことが起こる」と思っている
・読書が好き
・日々を無為に過ごしている(と思っている)
という辺りでしょうか。
そして寿命を三十万円で売り払った主人公は知り合いや十年前に別れた幼馴染に会いにいくんですが、自分の行動や選択の結果から残酷すぎるほどの報いを受けます。
ここまでがめっちゃ共感するけど「救われない」で終わる描写です。ここでもしヒロインが普通のヒロインだったら私は「また主人公がヒロインに救われるパターンか」と思ったかもしれません。
以下ネタバレを含みます。もしここまでの文章で「おっ」て思ってくださった方は出来れば作品を先に読んでからこの先を読んでください。何も思わなかった方は別にいいです。
ただ、今回のヒロインは「余生を売った人の監視」という仕事があり、その仕事中他の人から認識されることはないんですよ。どういうことかと言うと、主人公がヒロインに話しかけると他の人には虚空に向かって話しているように聞こえる訳です。それでもヒロインに惹かれた主人公は人前でも構わずにヒロインに話しかけ続けます。時には手を繋いだりキスをしたり。そんな主人公は当然他の人たちから奇異の目で見られます。嘲笑されたり、時には微笑ましく思われたり。
はい、ここで私はヒロインを趣味に置き換えました。つまり小説を書く行為ですね。私のようにラノベ新人賞に送り続けてもかすりもしないクソ雑魚作家志望が小説を書くという行為は、主人公が他の人には見えないヒロインに話しかけ続けるのと被るんですよね。
で、だんだん主人公のヒロインへの好意が強まるにつれて周りの人もヒロインが「実は存在するのではないか」と思ってくれるようになります。私もなろうで投稿してから割とたくさんの方に読んでもらえるようになり、これは最初は独りよがりだった趣味がだんだん認められていくことを表しているのかと。
以下核心的なネタバレを含みます。もしここまでの(ry
最後。ヒロインとの関係で人生が変わった主人公は絵の才能に覚醒します(元々絵を描いていたが、芽が出ずに筆を折っていた)。これは私で言うところの普通の仕事とかに当たるんでしょうか。例えば営業に就職したら実はめっちゃ才能があったとか?
そして残り一か月の寿命の価値が爆上がりした主人公はヒロインを救うため(ヒロインは借金があり監視員の仕事をしていた)再び寿命を売ります。もし一か月で絵を描いていれば美術史に名を遺す絵を描けたかもしれないにも関わらず。そして最後の三日をヒロインと一緒に過ごす、というところで終わります(色々端折ってますが)。私で言えば仕事をやめて最後に一作書き上げるみたいな感じでしょうか。
作者の方がそういう意図で書いたのかは全く分からないんですが、この話を読んで私は「誰に認められなくても自分が好きなことに向き合い続ければ、ちょっとだけ世界が美しく見えるようになる」というメッセージだと受け取りました。
作品内では最後ヒロインは色々あって他の人にも見える存在になっているんですが、それは些末なことです(私にとって)。
私が小説を書いているのを他の人に認められたり認められなかったりしても、本当に好きならそれはそれでいい。そう言われた気がしました。
という訳で私の現状に対してぶっ刺さった作品なのですが、そもそも主人公に共感できなければそんなに心を動かされることはないですし(ただ私の勝手な共感を差し引いたとしてもストーリーはストーリーでおもしろい)、趣味について応援をもらったと感じる人もそんなにいないでしょう。なのでこの文章はおすすめというよりは単に感動を書き記したかっただけです。
最後に、作者の三秋さんと紹介してくれた卯月コウさんにこの場でお礼を申し上げます。三秋さんの本は他にも何冊か買っているのでまた感想書くかもしれません。