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「なるたる」から考えるいじめによる二重の孤独

最近見たアニメ「なるたる」の感想です。

「なるたる」は鬱作品業界で有名な漫画です。


本記事に関係するあらすじだけを説明すると、

・主人公は「明るい」「元気」「前向き」「友達多い」みたいな小学六年生

・友達のひろ子はクラスの女子にいじめを受けており、家でもテストで満点をとれないと主人公と縁を切るよう強要されるなど酷い状況(唯一の救いは主人公だが、主人公にこのことを話せない)

・そんなある日、女子からとりわけ酷いいじめを受ける。クラスの男子がそれを見つけて助けてくれるが、それまで使わなかった「竜の子」の力を使っていじめっ子に復讐する

・主人公が止めようとして失敗する


という感じです。



 まず、いじめは受けている間も一人なのですが、それを誰にも言えないという点で二重の孤独を発生させます。傍から見ていると主人公にいじめのことを話せば解決するか、少なくとも一緒に立ち向かってくれそうに見えます。

(話したくない理由については明示されてませんでしたが、「いじめを受けている=悪」という意識や、余計な心配や同情を受けたくない、話すことで友達関係を終わらせたくない、などの理由と思います)


 凄惨ないじめ描写自体もそうなのですが、そのすぐ近くにいるはずの主人公がそれを全く知らずに「明るさ」「前向きさ」などを発揮しているという対比構造が良かったです。

 途中でいじめのことを知らない主人公の家にひろ子がご飯を食べに行くというシーンがあるのですが、一緒にご飯を食べて楽しんでいる(その時だけはひろ子は本当に楽しんでいる)のに、いじめの件を話せないばかりに二人の間には見えない壁があり、ひろ子は孤独です。


 その後ひろ子は女子にかなりやばい行為を受けそうになるのですが、途中で男子が見つけて助けてくれます。ですが、その後、家に帰った後に親ともめたこともあって、ひろ子は「竜の子」の力を使うことを決断します。

 決断した後にその男子に告白されてひろ子は「遅いよ。もう少し早かったら頑張れたのに」ということを言います。そういう意図があったのかは分かりませんが、基本的にいじめが発覚するのはすでに手遅れになった後の状況であることが多いということを想起させられました。


 その後ひろ子の竜の子がいじめっ子への復讐を終えた後学校に侵入するという出来事があった後、主人公はひろ子の家に行きます。そこでひろ子に復讐をやめるよう説得するのですが、ひろ子はそれを受け入れませんでした。

 ここでひろ子が主人公の説得を受けていると、「美談」で終わってしまっていた気がします。ここでひろ子は主人公の親も殺そうとするのですが、これは結局二重の孤独状態に陥っていたひろ子が、主人公を自分と同じ境遇に引きずり込むためだったのかもしれないと思いました。


 あと、その直後に主人公が制服を父親に見せているシーンがあって、「ああ」てなりました。結局主人公はとことん「光」の存在で、「陰」であるひろ子と真の意味で一緒になることはなかったということを描ききったのだな、と。




 一つだけ問題があるとすれば、いじめの描写が非常に猟奇的で、「みみず」「試験管」ばかりが記憶に残ってしまうことですかね。



 なるたるのいじめは大分極端ですが、二重の孤独状態に陥った人と同じ土俵に立つのは難しいという話でした。

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