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勇者魔王魔法少女悪役令嬢錬金術師  作者: 鎌ろん
第一章:悪役令嬢の復讐
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王子の怒り

 コーライン王城のジェード王子の執務室へと、二人の兵士が呼び出されていた。執務室へ呼ばれるという誉高い状況のはずの二人は、どういうわけか顔を青ざめさせていた。彼らはジェードの直属の護衛兵で、今回の公爵令嬢エメシー・ゴ・コヤマの追放でエメシーを監視し、その最期を見届けるのが役目だった。

 兵士の一人が執務室の扉をノックすると、


「入れ」

 と、部屋の中からジェードの声が聞こえた。


「失礼します」

 兵士達は緊張した声色でそう言いながら部屋へと入る。部屋の中には、足を組んで尊大な態度で椅子に座るジェードの姿があった。

 兵士達はその前で跪く。


「今回の監視の任務、ご苦労だった」

 ジェードは兵士たちを見下ろしながら労いの言葉を投げかける。


「は、はい!ありがとうございます!」

「我々には勿体なきお言葉でございます!」


 兵士達は緊張しつつも、ジェードの労いに答える。


「うむ。して、あの女はどのような最期を迎えた?泣き叫んで許しを請いでもしたか?」

 ジェードの問いに、兵士達は固まる。彼らはこの問いを恐れて顔を青ざめさせていたのだ。

「そ、その、殿下。一つお伝えせねばならぬことがあります」


 兵士の一人が恐る恐るそう口にする。


「む、何だ?思いの他抵抗が無かったのか?」

 期待していた答えが得られないと感じたジェードは、若干顔を曇らせた。


「それがですね、殿下。我々があの者を移送している最中に、森でホワイトタイガーに遭遇しまして……。Aランクで危険すぎる魔物であったため、あの者を囮にして途中で引き返してきたのです」

「そ、そうなのです!Aランクの魔物は熟練冒険者が複数人居てやっと倒せるかどうかの相手。その目の前に一人置き去りにすればそれは死ぬのは確実ですから、やむなく死刑の形を変更に……」


 二人の兵士がそこまで説明したところで、ガンッ!という大きな音が部屋に響いた。ジェードが拳を机に叩きつけた音だ。

  あの時の状況を説明すれば納得してもらえるのではないかという希望を持っていた兵士達も、ジェードのその反応を見て絶望で表情を真っ暗にした。


「終滅の地まで辿りつけなかっただと……?それどころか、誰もあの女が死ぬところを見てすらいないとは、よくもそんなずさんな仕事ぶりで私の前に帰って来れたな!」

 ジェードは怒りで顔をドス黒くさせ、立ち上がり二人の兵士を見下している。


「し、しかし、あの状況ではああしなければ我々が生きて帰れる可能性すら絶望的で……」

「そんな言い訳が通用するか!あの女は勇者の力を持つのだぞ。死ぬところを見届けなければ死んだと断言することはできん!私を満足させることもできんとは、貴様らには失望した。あの女の代わりに貴様らの死で贖ってもらうぞ!」


 ジェードはそう怒声を上げた後、剣を抜いて兵士達へと斬りかかった。


「ど、どうかお許しを殿下…グギャアアアアアアッ」

「ヒェアァァァ止めて…キャフッ」


 許しを請う暇も無く、兵士達は胸を剣で斬り裂かれ、二度と口を開くことのない屍へと成り果てた。

 その血は新品の如く汚れ一つない薄黄色の絨毯を黒い赤へと変色させていく。ジェードはしばしの間その彩りを虚ろな目で眺めていたが、やがて再び声を荒げて叫ぶ。


「クソッ!使えない奴らが!私の邪魔をしやがって!こいつらだけでは気が収まらん!おい!ここにルナを連れてこい、今すぐにだ!」


・・・


 新しく作った町で、私達は問題なく一晩を過ごせた。

 住居と食料の準備をもできて、後は希望者を誘導するだけだ。技術力のある人間を優先して、次に来る時までにどのように町開発を進めるかを考えておいてもらうことにする。


 ふふっ、この町でどれだけの聖魔力を集められるか、とても楽しみだわ。

 聖魔力は私が他人に幸福をもたらさなければ得ることはできないみたいだけれど、一から私が作った町で生まれた幸福なら、私の功績だと判定される可能性は高いはずよ。だから、もし皆が幸福になれる町を作れれば、半永久聖魔力製造機を手に入れたに等しいわ。

 まあ、本格的に運営するのは復讐が終わってからだけれどね。


「エメシー、本当に復讐をしてしまうっキュか?」

 再びハミングの城へと戻るための旅の途中、シロミンが悲しそうな目つきで聞いてきた。


「しつこいわね。何度言っても私の気は変わらないわよ」

「でも、最近のエメシーは王子が居なくても楽しそうじゃないっキュか。その王子はもう別の女を愛してるんっキュよね?なら、もう別の愛を探しに行った方がいいと思うっキュ」

「そうやって私の心を惑わそうとするのがあなたの手法でしょ?愛がどうのって言えば私が戸惑うと思っているのよね。けれど、それは無駄なのよ。ジェード様への愛とルナへの憎悪は、関連してはいるけれど別物なの。あの泥棒猫から受けた屈辱は返さなければいけないわ」


 何を言われたところで私の復讐心が揺らぐことはない。もうこの心は誰にも止められない。

 そして、道中の町でアルキロス殿の使いの者と出会った。私は今から二週間後に王城へ来るよう招待されたとのことだ。


 これならアルキロス殿の所へ向かう必要はないわね。手間が省けてありがたいわ。

 復讐の舞台は整ったし、後は本番のために気を引き締めるだけね。



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