錬金術師の町作り3
さて、戻って来たわ、終滅の地。ここで魔王の魂を錬成してしまった時はどうなることかと思ったけれど、今の所全てが滞りなく上手くいっているのよね。
「へー、ここが終滅の地かあ。初めて見たけど、荒れた大地、淀んだ空気、いかにもヤバそうだね。これはこれで残しておけば観光名所になるんじゃない?」
ノアが呑気なことを言っているけど、気にしないでおくわ。
「魔物がわんさか出るのに、観光に来る人なんているわけないでしょ。シロミン、浄化魔法の使い方を教えて、早速使ってみるから」
「浄化魔法っキュね。杖に聖魔力を込めて、浄化、と唱えるだけっキュよ」
シロミンに言われた通り私はペンダントを杖に変えて、瘴気の方へと杖を掲げる。そして、
『浄化』
と声高に唱えた。すると、聖なる波動が杖から迸り、瘴気を薙ぎ払うように広がっていった。
「良かった、成功っキュね!瘴気がちゃんと浄化魔法の浄化対象なのかはちょっと不安だったっキュが、杞憂だったっキュ」
ホッとした顔で喜ぶシロミン。
私は瘴気に使えないなら浄化なんて使い道がないと思ったのだけれど、瘴気が対象かどうかが曖昧だったのには訳があったらしい。何でも、世界というのはいくつも存在していて、精霊はそれらの世界を精霊界から観測できるため、瘴気以外の汚染の存在を多数確認していたそうだ。だから、その内のどれが浄化魔法の効果の対象になるかは実際に使ってみるまでは分からないらしい。
複数の異世界があるとか、精霊がそれら全てを見ることができるとか、にわかには信じがたい事ではあるけれど、初代勇者も異世界から来たのだしあり得ないとも言い切れない。
まあ、直接関わるわけでもない異世界のことを気にしすぎても疲れるだけだから、あまり気にしない方が良さそうね。
『くう……。我が最後の力を振り絞って穢してやったというのに、なんということをしてくれたのだ……』
シロミンに対して、グラトはとても悔しそうね。
「そんなにしょぼくれないの。終滅の地の瘴気は元々大陸の2割近くも汚染していたんだし、今のでも完全には浄化できていないと思うわよ。私も浄化だけに聖魔力を割くわけにはいかないし、瘴気が残っている時点であなたの勝ちよ」
『そ、そうか。やはり我は偉大だというのだな!それならば、多少の狼藉には目を瞑ってやろう!』
私の適当なあやしで魔王は機嫌を取り戻した。
ほんと、扱いやすくて助かるわ。
それじゃ、早速取り掛かろうかしら、町作りに。
そう、拠点作りではなくて、町作り。何故規模が大きくなっているのかというと、それは数日前までさかのぼる。
私たちは、私が追放後に辿った道を引き返すように終滅の地へと向かっていた。だから、当然私が半壊させた町に再び訪れることになったのだけれど、その時に町の人たちに、終滅の地を浄化して拠点を作る、という話をした。するとそれを聞いた町の人たちが、英雄エメラルドが守護する地に自分も移住したい、と言い出したのだ。
最初はどうしようか迷ったけれど、彼らが住む場所に困っているのは私のせいではあるし、自分にとって都合良く扱える町があるのは悪くない話でもあると考え、その話を了承してしまった。
今考えると安直すぎたかもしれないとも思うけれど、どうせ場所はたくさんあるのだし問題ないわよね?
「さてと、次の作業に取り掛かるわよ。良い場所を見つけて、そこに私たちが住む拠点を作るのよ」
町を作るのならば、場所をちゃんと選ばないといけない。浄化したといっても、終滅の地は地面が荒れ果てていて町を作るのには向いていない場所ばかりだ。
どうしたものかと私が悩んでいると、グラトがこの地の情報をくれた。
『場所なら良い場所があるぞ。我の城がある場所だ。あの周辺は比較的なだらかな土地が多かったはずだぞ』
「グラトの城……。いわゆる魔王城ってやつね。それは中々に耳寄りな情報だけれど、それをわざわざ教えてくれるってことは何か裏でもあるのかしら?」
何のリターンもないのにグラトが私を手助けするとは思えず、私は疑いの目を向けた。
『う、裏など何もないぞ。別に、しばらく見ぬうちに我の居城に異変が起きてないかが気になるとか、そんなことは考えてはおらん』
グラトは焦った様子でそんなことを言い出した。
家の様子が気になるのね。思っていたよりも全然かわいい理由で拍子抜けだわ。
「それなら、そこに町を作るかは別にして、ひとまずは魔王城へと行きましょうか。グラト、案内してくれる?」
『うむ、任せておけ。我の自慢の城の威風堂々たる佇まいに驚く準備をしておくがいい!』
グラトは意気揚々と宣言し、私たちを魔王城へと導き始めた。




