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勇者魔王魔法少女悪役令嬢錬金術師  作者: 鎌ろん
第一章:悪役令嬢の復讐
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錬金術師の町作り1

 ハミングの城を出て、今私が目指しているのは満を持して王都。ではなく、終滅の地だ。

 ハミング伯爵が国王へと英雄エメラルドの希望を伝達するまでには時間がかかる。だから、その暇な時間で魔法少女の浄化魔法を試しに使ってみようと思った。

 そして、なぜわざわざ近場の瘴気溜まりではなく終滅の地まで出向くのかというのにも理由がある。

 終滅の地は人間が利用できる土地ではないので、現在はどの国の所有地にもなっていない。だから、浄化さえできれば終滅の地は私有地として自由に扱っても構わない。

 今まで瘴気の浄化なんて誰にも出来なかったからそんな決まりに意味は無かったけれど、今の私には浄化魔法がある。

 そこで私は浄化魔法の試用のついでに、今後の事を見通してその地に活動拠点を築き上げようと考えたのだ。


「タダで土地を手に入れようだなんて、さすがはエメシー。そういう狡いことを考えるのが本当に得意だね!」

 当然のようについてきたノアが、褒めているのか貶しているのか分からないことを言う。


 まあ、ノアは私の血を吸わないと理性を保てないからついてくるのは仕方がないわ。私もノアには側にいて欲しいし。あくまで力仕事を任せたいという意味でね。けれど、ノアは日光を避けるために深くフードを被っているから、知らない人に見られたら怪しまれそうだわ。加えて私も魔法少女の衣装を着ているのだから、周りから見たら奇妙極まりない二人組になっていることでしょうね。

 旅の道中は人と会うことが少ないからいいとして、町に入る時なんかはできるだけ日が暮れてノアがフードを被らずに済むようになってからにした方がいいわね。


 そして、ノアのことはいいとして、一人グチグチとうるさいのがいる。


『むぅ、我が穢してやったあの地を浄化されるというのはどうも気に食わんな……』

 私の計画を聞いてから機嫌が悪くなってしまっているグラトだ。


「いくらなんでも、あの瘴気は範囲が広すぎるわよ。どれだけ縄張りを広げても全体を管理できないなら意味がないでしょう?私がきれいに掃除してあげるから次はもっと節度を保って縄張りを作りなさい」

 グラトに対してどことなく母親のような気分で叱りつけるように私は言った。


 まあ、次の機会が来ることはないでしょうけれど。


 その様子を横で見ていたノアが興味深そうに私に言う。


「もしかして今、エメシーの魂に住んでるっていう魔王と話してたの?魔王がどんな感じなのか気になるのに、ボクには声が聞こえないのが残念だなあ」

 ノアは何故かグラトのことが気になっているみたいだけれど、そういえば、ノアにはグラトの声が聞こえないのね。


『我もノアとは話してみたいものだ。吸血鬼の家系の者だと聞いた時は嫌なことを思い出してしまったが、我の偉大さは分かっているようだからな』

 意外にもノアに対して友好的なグラトが、何だか誇らしげにしている。


 一体何を言っているのかしら、と思ったけれど、さっき私がノアに私の力について話した時にノアは魔王の力なんてすごい!って言っていたわね。あれはグラトのことというよりも、魔王の力を私が持っている事がすごいって意味だと思うのだけれど、それは黙っておいてあげましょう。


「魔王、私はグラトって呼んでいるのだけれど、グラトもノアと話したがっているわよ」

「えっ、そうなの?なら、グラトが復活できた時が楽しみだね!ボク、力にはかなり自信があるし、力比べとかもしてみたいなあ」

『我に力で勝つつもりか?良かろう、身の程というものを教えてやるから、我の復活を首を洗って待っているが良い!』


 何だか勝手に盛り上がってるし。私、グラトを復活させる気なんて全くないのだけれど。まあ夢を語るのは自由だし、これも黙っておきましょう。


「なんで復活するのが前提なんっキュか。そんな妄想話よりも、僕はエメシーとノアのことが気になるっキュ。ノアにはエメシーの血が必要なのは分かったっキュけど、二人の関係はそれだけじゃないっキュよね?」

 シロミンが呆れたように突っ込みを入れつつ、そんなことを聞いてきた。


「そういえば、まだあまり深く話していないわね。私とノアの出会いは、4年前の私がまだ学園に入っていない頃に貴族の付き合いとしてハミングの城へと出向いた時だったわ。その時に地下に閉じ込められたノアの話を聞いて、何となく気になって、私がノアの面倒を見るから出してあげて、と頼んだの」

「うんうん、あの時のエメシーは悪の親玉から姫を助けるヒーローって感じでかっこよかったなあ」


 私の説明に、ノアがうっとりとした表情で頷いている。何だか、少しフィルターがかかってしまっているような気がするけれど……。


 よく覚えていないけれど、私がノアを助けたのは、吸血鬼の力が利用できそうだとかそんな打算があったからのような気がするわ。


「ま、まあそんなことがあって。その時に私の血がノアの凶暴な気性を抑えられるって分かって、それからはずっと私と一緒に居るようになったのよね。それで学園にも一緒に入って、4年間一緒に勉強して、時にはルナへの嫌がらせの手伝いもしてもらって……。それがジェード様にバレて、ノアは卒業前に退学させられてしまったのだけれど」

「あー、あれは本当に悔しかったなあ。エメシーの作戦はどれも良い感じだったのに、何故かいつも王子がルナを助けに現れて失敗に終わっちゃったんだよね」


 私とノアは学園でのことを思い出して、悔しさに浸る。


「そうだったわね……。けれど、この復讐だけは絶対に成し遂げてみせるわ」

「ボクも楽しみだよ。あの女への復讐、派手にやるんでしょ?」


 そうよね。私が味わった屈辱の分、ルナにはたっぷりと絶望してもらわないとね。


 私は私の中で揺らめく憎悪の影を強く認識する。


 うん、大丈夫ね。魔王の力に煽られてはいるけれど、変に歪んでしまってはいないと思うわ。外的要因に歪まされた心でする復讐は本当の復讐にはならないから、自分の心の変化には気を配っておかないと。


「エ、エメシー。顔がすっごーく怖くなってるっキュよ?魔法少女がしちゃいけない顔っキュ……」

「あら、そうだった?自分の復讐心を再確認していただけだから気にしないで」


 シロミンに怖いと言われ、私は心を落ち着けた。


 下準備は整ったのだから、後は時を待つだけ。何も焦る必要はないのだから、復讐をどのように飾り立てるかを集中して考えましょう。


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