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出会った四人の仲間 彼等は村に向かって

「俺は、フォルカー・ヴァーゲンザイルだ、出身はバイエル帝国だ」


「私は、ザミーラ・デアフリンガーよ、仕事は貴方達と同じ傭兵ね」


 バイエル帝国武装親衛隊員の服装をした男と、バイエル帝国陸軍補助婦の格好をした女性は名を名乗った。



「俺は山田太一、で此方の御嬢様が」


「谷川千ゑです、御嬢様は余計よっ」


 太一と千ゑ達も、目の前の彼等に自分達の名前を名乗った、そして次の質問をフォルカーは問い質す。



「それで、君達は何処へ行くんだ?」


「私達は、此処から先の小さな集落へ向かうんだけど」


 フォルカーが行き先を尋ねると、助手席に座るザミーラも懐から地図を取り出した。



「この⭕の部分よ」


「ん?、ああ丁度、私達もそこに行くところよ」


 ザミーラの指差した地図を眺めた千ゑは、笑顔で正面のザミーラに答えた。



「旅は道連れ、世は情けっ・・て言うし、一緒に行きましょうよっ!」


「えっ!そうですね?私達は貴方達に助けて頂いた事ですし・・・御礼もしたいですから一緒に行きましょう」


 千ゑのいきなり出した提案を、快く受け入たザミーラは柔らかな笑みを浮かべて快諾した。



「じゃあ早速行きましょうねっ!ほら太一、発進させてってば」


「あいよ、我が儘なお嬢だぜ」


 千ゑの頼みを聞いた太一は短く返事を返すと、広い荒野に九七式測車付自動二輪を発進させ、先に走り出して行った。



「あっ!早いわ、私達も後を追わなきゃ!フォルカー頼むわ」


「へいへい、じゃあ出しますぜっ」


 彼等の後を、フォルカーとザミーラ達も追い掛け、ツェンダップKS750を急発進させて行った。


 荒野を走る四人の乗った二台のサイドカー、その先には雑草が辺りに疎らだが映えており。


 段々と奥に行くに従って、彼等四人の走る足元には、雑草だらけの地面が増えてきた。



「雑草だな、ヤバいなぁ?」


「雑魚魔物が出ると厄介ね」


 太一と千ゑ達は、周囲の雑草が覆い繁る地面に目を配り、何か不審な物は無いかと警戒感を強める。



「ねぇ?アレは何っ!」


「何か地面に居るぞっ」


 ザミーラ、フォルカーの周囲の草むらを、高速で走り抜ける正体不明の魔物が居た。



「そいつ等は【擬態雑草】だっ!」


「火炎瓶を一発喰らわせてっ!」


 太一が後ろを走る二人に向かって叫ぶと、千ゑは補助席の中から瓶を取り出して、瓶の口の丸めた紙に火を着けて右後方へと投げる。



『ガチャンッ!』


 投げられた瓶は弧を描きフォルカーとザミーラの右側に落ち、擬態雑草の紛れる雑草事焼き払う。



「ピギャアッ!」


「ピギャッ!?」


 段々と燃え広がる雑草の中から、燃盛る身体の痛みに耐えきれず、悲鳴を上げた擬態雑草が飛び上がった。


 その姿は、雑草を背負い全身の毛が苔の様に成っている、四つ足が根っ子状の鼠の様な魔物であった。



「アレが草むらの奴等の正体か!?」


「火炎瓶は無いけど、これならっ!」


 フォルカーが段々と離れていく、後方で泣き喚く擬態雑草の姿を見て叫ぶと、ザミーラ柄付き手榴弾を二本投げた。


『ドーンッ!ドーーンッ!』


 爆音を立てて炸裂した柄付き手榴弾に擬態雑草は吹き飛ばされ、三匹纏めて御陀仏と成った。



「終わったな」


 太一は前方を見ながら呟く、その後

面倒な相手が居なく成った事で四人の乗ったサイドカーは真っ直ぐ村まで行く事が出来た。


 草むらは少しずつ無くなってきて、代わりに大根畑が黄土色の道路の横に出てきた。



「間も無く村が見えてくる筈だ」


「アレよ、アレ、彼処の楼塔よ」


「彼処の楼塔?」


「あの塔の事かしら?」


 太一、千ゑ、フォルカー、ザミーラ達が目を向けた左側の遠くには、複数の木像家屋と、村にの石垣を組んで作られた(やぐら)が二つ見えた。



「そうだ、彼処が目的地の村だ」


「弾丸の補充が出来ないかしら」


「商人が居れば出来るけど、居るか?」


「どうかしら、居てくれると助かるわ」


 近付くに連れ、村の周囲は円形状に二メートル程の高さの土壁で覆われており、その下には五メートル程の溝が掘られているのが確認出来た。


 その左右には二つの楼塔が、土壁の中には小さな家屋が十軒程並び、村の入り口には見張りの自警団員が見えた。


 水色の野戦服と野戦帽を被った、村の自警団員二人が入り口の前の土嚢の裏に立ち、此方を睨み警戒していた。


 彼等の背後には縦に六メートル、横に三メートル半程の長さの、木製の跳ね橋が有った。



「誰だ、お前達はっ!」


「大和人らしいなぁ?」


 正面入り口の満人自警団員達は、現れた怪しい四人に対し、漢陽八八式を向けてきたが。



「よせ、その人達はきっと先の二人が言っていた傭兵だろう」


 自警団員の背後の壁の上から、上半身を出した紅い帽子と中華服に身を包んだ老人が現れ、自警団員達を制した。



「こんな国境地帯の辺鄙な集落に何の様ですかな?」


 老人が笑顔で四人に接すると、それを見た自警団員は漢陽八八式を下げた。



「私達は旅の途中で寄ったの」


「そうだ、補給の為にな」


「我々二人は先に到着していた者達と合流するのが目的だ」


「彼等は今何処に居ますか?」


 千ゑと太一達は素直に老人に答え、フォルカーとザミーラ達も先客の仲間だと答えた。



「やはり、そうでしたか、貴方達の仲間の御二人は先に魔物退治に向かいましたよ」


「彼奴等は無茶しやがって」


「また勝手に動いたのね?」


 老人の話を聞いてフォルカー、ザミーラ達は、先に行動を開始していた二人の仲間に呆れていた。



「仕方無い、そいつ等の後を追うぞ」


「やるしか無いわねぇ、面倒だわ~」


 太一が半ば呆れつつ呟くと、横の座席に座る千ゑは、マッチで煙草に火を着けて煙を深く吸い込んだ。



「じいさーん、あたし等は馬賊じゃないのは見れば分かるだろうから、中に入れてくんないかな?」


「はは、これは失礼しました、では中に御案内致しましょう」


 千ゑが口に加えた煙草を右手で摘まみ、土壁の上の老人に中に入れる様に頼むと、老人は快く了解した。



「橋を下げて、彼等を中に入れて上げなさい」


 老人が命令すると跳ね橋が下ろされ、四人は村へ入る事が出来る様に成った。



「これで村に入れるな」


「ああ、やっとかぁ~」


「はぁ、一息つけるぜ」


「私達も一息つけるわ」


 太一、千枝、フォルカー、ザミーラ達は、サイドカーを走らせ下ろされた跳ね橋を渡り、村の中へと入っていった。






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