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【現実的ファンタジー世界】


 俺たちは再び現実に戻され、屋上に立っていた。木下は、中原に人差し指をつきつける。


「あなたの記憶、見させてもらったわ! やはりあなたが犯人だったのね」


 そういうと中原は悔しそうに顔をしかめる。


「う……ぐぅ。ま、まさか僕以外にも“力”が使える奴がいたなんて」

「観念なさい。早く北条さんにかけた異能を解くのよ」

「だ、誰がとくもんか。解いたらまた上杉と仲良くするに決まってる! そ、それならいっそこのまま……」

「てめえ何無責任なこと言ってんだ!」


 俺は思わず叫んでいた。そしてそのまま中原の元へと近づき、胸ぐらを掴み上げて威嚇する。


「さっさと解除しやがれ……!」

「ぐ……お、お前さえ、お前さえいなければ……僕は、ぼくは……僕はぁあああ!」

「なっ!?」


 中原の絶叫のあと、彼の体がどす黒く変色し始めた。俺は思わず奴から離れ、距離を取る。

 やがて彼の周りに黒い渦のようなものができ、彼を覆っていく。


「お、おい。あれも異能なのか?」

「いえ、見たこと無いわ……あんなの」


 そして渦が消え、姿を現したのはもはや中原ではなかった。緑色の皮膚を持ち、高い鼻に長い耳を携えた醜悪な見た目。

 俺が何度も異世界で見た怪物モンスター。そうだ、あれは――


「ゴ、ゴブリンだと……?」

「ちょっ、ちょちょちょ。上、上杉君、あれ何!?」


 木下がかなり動揺している。どうやら予想外の展開らしい。


「お前も経験ないのか」

「な、ないわよあんなの! 人間じゃないじゃない!」

「あれは……ゴブリンだ」

「ゴ、ゴブリン? ゴブリンってあのファンタジーとかの?」

「ああ。なんで中原がゴブリンに……。まぁいい、理由はともかく戦闘態勢をとれ! ゴブリンは好戦的だ!」


 俺は身構えた。ゴブリンは低く唸るような声を上げながら俺に突進してきた。そのまま奴は俺に殴りかかってくる。

 俺はそれをギリギリでかわし、逆に奴の腹に1発お見舞いしてやった。


「ぐおっ」


 奴は腹を抑え身悶える。


「ぐ、ぐぅ……う、上杉ぃ……!」

「まさかお前がそんな姿になるなんてな。何したらそうなるんだ?」

「僕は、僕はお前をぉぉ殺す!」


 厄介なことに話は通用しないらしい。

 奴は手から紫色の球体を次々に放出してきた。あれはさっきユイにぶつけてたやつか。当たるとまずそうだな。

 俺はその場から逃げ、球体を避けた。球体は壁に当たって弾けて消える。


「ぐ、ぐぅ」


 異世界にいた強力な魔物たちの攻撃に比べれば随分と遅い。避けるのは造作もないが、決定打に欠けるな……。

 打撃だけじゃ気絶までは持ってけなさそうだし万が一あれを食らっても面倒だしな。

 かといって俺は今魔法も使えないし。


「なぁ木下、お前例えば呪いを消したりする魔法――じゃなくて異能使えないのか?」

「呪いを? 私の異能じゃ無理だけれど……あ、もしかして!」


 木下はごそごそと懐をまさぐると、何かを取り出した。それは白い札のようなもので、そこには赤い文字が何か書かれていた。


「なんだそれ」

「これは、私の上司にあたる人から今回の任務に就くにあたって貰った物だけど……必要な時に使えと言われて何に使うのかわからなかったのよ。でももしかしたら……」

「お前の上司が何者か、は置いとくにしてもあいつを抑えるのに使えるかもしれないな。試してみる価値はある」


 その札があいつの異常を抑えてくれるのを期待するとしよう。


「俺が隙を作るからお前は札を貼れ!」

「わ、わかったわ」

「ぐおおおおお!」


 迫って来た元中原ゴブリンの攻撃を避けつつ、俺は彼の腕を掴んで捻り上げた。


「ぎゃああああ!」


 俺はそのまま両腕を固定し、後ろから羽交い締めにした。


「今だ木下!」

「やあっ!」


 木下は札を中原の額に貼り付けた。瞬間、中原は苦しむように声をもらし、身体が光り始めた。


「なにっこの光は!?」


 まばゆい光が消えると、そこには元の人間に戻った中原の姿があった。彼は目を瞑り、気絶している様子だ。


「も、戻ったの?」

「そうみたいだな。どうやらその札で正解だったみたいだ」

「わけのわからない体験をしちゃったわね……」

「さて、こいつをどうするか」


 気持ちよさそうに伸びている中原。

 起きる気配がなかったので、彼は廊下で倒れていた事にして、保健室に運んだ。先生は驚いてすぐに救急車を呼んだ。その後中原は病院へと運ばれていった。


 そして俺たちは自分のクラスへと戻ったわけだが、授業前にあんなゴタゴタをしていたせいで俺らは2人揃って授業に遅刻する羽目になってしまった。

 当然周りからは変な目で見られる。


「んん? 上杉に木下か、遅刻だぞ、早く席につけー」


 現国の吉田先生がそう言ってきた。俺たちは素直に従い、授業を受けた。

 授業中に何度かユイの方を見たが、どうやら元気そうだ。よかった。

 でも一回目があった時、あいつは少し悲しそうな目をしてた。なんでだろうか。


 授業が終わり、ユイに直接体調を聞こうと思ったが、その前にコウジに捕まってしまった。

 コウジの目は血走っていて恐ろしい。なんだどうしたんだこいつ。


「い、いい、イッキおま、お前……木下さんと遅れて一緒にやってきて、な、ななな何してたんだおい? なぁおい」

「……別に、なんもしてねえよ」


 何かと思えばまたそのことか。まったく、なんで俺がそんなあらぬ疑いをかけられなきゃいけないんだ。


「そんな嘘が通用するかーっ! おいお前ら! イッキを捕まえろ!」

「サーイエッサ!」


 うわっ、またかよ! 

 なんの罰ゲームなのか俺はクラスの男子たちに捕まって連れ去られた。

 俺はユイの様子を知りたいのに!

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