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【部活を作ろう】


 授業も終わり、俺はやっとユイに話しかけることができた。


「ようユイ」

「あ、いっくん。どうしたのぉ?」

「体調はどうだ?」

「それがねそれがね、ついさっき朝急に良くなったの。重たい感じがしてたんだけど、それがなくなったぁ」

「本当か。それは良かった」


 俺はホッと胸を撫で下ろした。

 するとユイは俺の顔をチラチラと伺いながら話を続ける。


「あの、ね。それで、いっくんが木下さんと付き合ってるって噂を聞いたんだけど……本当?」

「またそれかよ。嘘だよそれ。まぁちょっと色々あってあいつとは話したりする機会が多いけど、付き合ってなんかない」

「そ、そうなんだ……そっか。よかったぁ」


 なんだかよくわからないが安心したようだ。


「まぁとりあえず体調がまたおかしくなったら言ってくれ」

「うん、わかったぁ」


 ユイは朗らかな笑顔でそう答えた。

 俺はその後も授業を真面目に受け、家に帰った。既にアリサが家にはいた。


「お帰りなさい兄さん」

「ただいま」


 その後アリサと他愛ない話をしつつご飯を食べて風呂に入ってリビングでテレビを見ていると、パジャマ姿のアリサが神妙な面持ちで風呂場から出てきた。


「ど、どうしたアリサ」

「兄さん……私に隠してる事ないですか」


 隠してる事だと? まぁ異世界の事とか異能の事とかいっぱいあるけど、まさかそれがバレるわけもないし……。

 アリサはいったい何を?


「いや、隠してる事なんてないけど」

「本当ですか? じゃあなんでシャツから女の人の匂いがするんです?」


 し、シャツから女の人の匂いだと?

 制服の下に着てるシャツだからそりゃ何かしらの匂いはつくだろうが女の匂いなんて心当たりは……あった。

 記憶の中で木下コトネに抱きつかれた時か?


「き、気のせいじゃないか? そもそもなんでお前俺のワイシャツの匂いなんか嗅いでんだよ」

 

 それは洗濯物としてカゴに入れといた筈だが。


「それは勿論日課だかr――そんな事はどうでもいいでしょう。今は私が質問してるんです」

「ま、まぁ確かにちょっとだけ女子と触れ合う機会があったがそれだけだ。他に何も無いよ」


 なんで俺はこんな浮気がバレそうな男みたいな言い訳をしてるんだろうか。


「ふぅん。でもこの女の人、前に一度家に来てた人ですよね?」


 こいつの鼻は警察犬か何かか?


「そ、そうだけど」

「やっぱり。随分と仲がいいんですね。それって最近転入してきた木下コトネ先輩でしょう?」


 そう言ってアリサは詰め寄ってくる。

 こ、こいつ。全部知っていやがったのか。なんて恐ろしいやつだ。


「な、なんでそれを知ってる」

「今のはカマをかけてみただけですよ。中等部にも噂が立ってますから。超美人の先輩が転入してきて、それが兄さんと仲がいいっていう噂がね」

「転入してまだ数日だぞ? 情報が回るのが早すぎる……」

「SNSもありますし。まぁそれより、兄さん何故私に隠してたんです? まさか付き合ってたりしないですよね?」


 アリサの笑顔が怖い。いつも天使のように可愛い子なのに。


「つ、付き合ってなんかない。これは本当だ。最近あいつとは話す機会が多くてそういう噂が立ってただけだよ」

「ふぅん、そうですか。まぁなら兄さんの言うことを信じましょう。とりあえず兄さん、私に隠し事しないでくださいね? 私、泣いちゃいますよ?」


 そう言ってにこりと笑うアリサ。

 最近は、俺がアリサにベタベタするのを嫌ってたと思ったのに、どういうことだ。こいつ思ったよりブラコンじゃないか?

 寂しがり屋なのは知ってたけど、けっこう重度な気がするな……。


 不安を抱えつつ、俺は部屋に戻って寝た。次の日の朝、アリサは何事もなかったかのように俺と一緒に登校していた。逆に怖い。


「あら、おはよう」


 教室に入ると木下が挨拶してきた。するとやはり周りの目が俺たちに集まる。

 面倒だな。


「おはよう」


 そう言って通り過ぎようとしたのだが、


「ちょっと待って上杉君」


 何故か呼び止められた。


「なんだよ」

「私、部活を作る事にしたの」

「部活?」


 俺たちが通う青春あおはる中東教育学校は部活に関しての規定が緩い。まぁ他も色々と緩いんだけど。

 別に部活に入ろうが入らまいが自由だし、そもそも自分に合った部活がなければ作ってもいいよ、というスタンスなのだ。


「ええ、その方が動きやすいと思って」

「まさかとは思うが……」

「そう、異能探偵としてよ」


 こいつ、どこまで本気なんだ?


「それでね、部活を作るにあたって部員のサインが必要だから、書いて」


 そう言って俺に紙を渡してきた。

 やっぱりそうなるか。


「断るって言ったら?」

「あなたに弱みを握られて無理矢理従わされてるって噂を流すわ」

「それは死ぬな俺。わかった書けばいいんだろ」

「あら、随分素直じゃない。もっと拒むかと思ったのに」


 俺もそうしたかったが、こいつは考えようによってはラッキーだ。これで木下と話しててもそこまで不審がられる事はないだろう。同じ部活なんだからな。


「それよりお前の方こそ俺には興味なくなったんじゃないのか?」

「一時は完全に素人だと思ったけど、昨日の件をみてあなたには何かあるって確信したわ。だから探偵、手伝ってもらうわよ」

「へぇ、まぁいいけど。暇してたし。これでいいか」

「ええ、ありがとう。あとは私がやっておくわ。放課後教室に残ってて」


 そう言って彼女は紙を机の中にしまった。部員は最低3人必要だ。あと1人誰を誘うつもりなのか、聞いてみたが「お楽しみに」との事だった。


 放課後になった。みんなはもう教室にはいない。

 地味に今日一日、俺自身部活についてワクワクしていたのがちょっとムカついた。

 木下はどこかに出かけてしまっていないので俺は1人教室で夕暮れの中ポツンと待っていた。


「待たせたわ」


 木下がやってきた。それに後ろに誰かいる?


「紹介しましょう。この子が私たちのもう1人のメンバーよ」

「高等部1年、斎藤さいとうミナミっす!」


 ショートヘアーでいかにも活発って感じの女の子が出てきた。身長は小さいけど胸がやたら大きい。


「えーと、上杉イッキだ。よろしく」

「よろしくっすイッキ先輩! 自分の事はミナミって呼んで欲しいっす」


 すげえ指定してくるじゃん。まあいいけど。


「そ、そうか。よろしくミナミ」

「彼女は異能関係者よ」

「え? そうなのか?」

「当たり前じゃない、じゃなきゃ部員にできないわ」

「自分、前に異能関係でコトネ様に助けられた事があるんすよー」

「コトネ様って……まぁいいか」

「さて挨拶も済んだ事だし、私たちの部活の名前を発表するわ。その名もこれよ」


 木下が広げた紙には仰々しくこう書いてあった。


『異なる悩みを持った人々を能動的に探し解決する部活』


 いや文章的過ぎない?

 しかもよくわからんし。何が言いたいんだこれ。


「略して、『異能部』よ」


「それが言いたかっただけだろ」


 俺のツッコミは虚しく響いた。

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