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【風が……泣いています】


「今回、上杉イッキにはクラスメイトである木下コトネさんと親しい仲である疑いがかけられている」


 淡々と俺に尋ねるコウジ。

 俺は多目的室で椅子に縛り付けられコウジを始めとしたクラスの男子たちに尋問されていた。


「さて、本人に訊くが上杉イッキが木下コトネと親しい仲なのは事実か?」


「「「事実か?」」」


 男たち複数によるハーモニー。まったく耳障りが良くない。

 俺は首を横に振って否定した。


「事実じゃない」

「そうか、あくまで否定するか。よし佐々木」

「はい」


 佐々木が前に出てきた。お前もいたのかよ佐々木!

 高杉、牧田と仲がいい佐々木。少し長めの髪をかきあげながら、口を開く。


「えー、上杉イッキは昨日、自分を含む数名に聞き取り調査をしていました。その内容に関しては割愛しますが、問題はそれを木下コトネと2人で行なっていたという点です! 許せん! なんでコトネちゃんとそんな羨ましい事してんだよお前はぁ! みんな、許せないよな!?」


「「「許せない!」」」


 血の涙が出そうな勢いで佐々木はそう言った。

 お前そんな目で俺たちを見てたのかよ。そういえばこいつ、木下のこと誘ってたな。


「上杉イッキ、今のに関して言うことはあるか?」

「まぁそれに関しては事実だ」

「よし、死刑。皆、異論はないな?」


「「「異論なし」」」


 コウジの問いかけに即座に答える男子たち。俺の味方はいなかった。


「ちょちょちょ! 死刑のライン低くないか!? あの聞き取りは必要だったからやってただけだ、理由は……話せないがお前らの勘ぐるようなことじゃない」

「ほう? では木下コトネと親しい仲ではないと?」

「ああ」

「ならば牧田」

「あいよー」


 ま、牧田。お前もいたのか。佐々木牧田とくれば、高杉も……いなかった。

 高杉は加わってないようだ。

 牧田はニヤニヤと笑いながら俺に近づいてきた。


「よぉ上杉。俺はな、実は見ちまったんだよなぁ〜今朝、お前と木下さんが2人で屋上に向かうのをよ〜」


「「「な、何ぃ!?」」」


 男子たちがざわつき始めた。


「2人は屋上で何を?」

「だから授業に遅れたのか」

「まさか屋上であんなことやこんなことを?」

「くぅー裏山けしからん!」

「論理的に考えて羨ましいですねはい」

「許せねえ! 死刑だ死刑!」


 各々言いたいことを言っていた。

 そして、お前は詰みだとでも言いたそうな顔でコウジが俺を見てくる。


「さて、上杉イッキ。これは事実か?」

「じ、事実だ」

「よし、死刑」


「「「死刑!」」」


「ちょ、ちょっと待てって、それもいろいろあってだな!」

「もはや言い逃れはできん。イッキよ。お前には死が待つのみだ」


 ま、まぁ死刑とは言ったところでどうせ本当に殺すことはできるわけないんだ。特に俺が何か反論する必要も――


「さて諸君、ここには中二の時、イッキがSNSに書いていた日記のスクショがある」

「すみませんでしたぁあああ!!」


 全力で謝る俺。

 な、なんで消したはずの俺の黒歴史が??

 コウジ、あの野郎こういう時のためにスクリーンショットでとってやがったのか。


「『今日も風が泣いている……俺には風の泣き声が聞こえる。助けてくれと、さけんでいる』」

「ぐおおおおおおおお! や、やめてええええ」


 俺のライフポイントはゼロだ!!!

 胸をドリルでこじ開けられるような痛さを感じる。


「『世界は0か1でしかない。だが俺は刹那に生きる。一瞬の輝きを目指して』」

「ぬおおおおおおおおお!!」

「まだまだあるぞ? どうだ、イッキ。真実を話す気になったか?」

「う、ぐぐぅ」


 真実つったってどうせ信じてくれやしないのに何を話せってんだよ!


「『俺は過去に囚われない。なぜなら過去は俺が置いてきたものだからだ』」

「ぎゃあああああああ」


 その後コウジによる黒歴史の音読会は続き、俺が完全にやつれてきたあたりで授業開始のチャイムが鳴り、やっと俺は解放された。

 俺はボロ雑巾のように床に倒れた。


「では、みんな解散」

「イエッサ!」


 そして誰も俺を介抱することなく消えていった。

 俺はふらふらと教室に戻って授業を受けた。

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