プロローグ
「ねぇ明日があるとしたら何がしたい?」
ぼくは、夢の中でそんな言葉を聞いた。とても綺麗な声。だけど、姿が見えない。
「きみは、誰なの?」
僕は、何もない真っ黒な空間にといてみた。
「・・・」
返事は、無かった。
我ながらバカだな…なんて思いながら、もう一度
「きみは、誰なの?」
「・・・」
「・・答えて・・」
「えっ?」
「答えろって言ってるだろうが‼︎」
突然の怒鳴り声に僕は、心臓が飛び出しそうになるくらいびっくりした。
しかし、声質は、全く変わらなかった。
柔らかくて高くもなく低くもないそんな声。
僕が一番好きな声質なのかも知れない。
「おーい聞いてた??」
「はっすいません」
一体僕は、誰に謝ってるんだか…
と言っても明日やりたい事?そんなことも考えた事もなかった。
「うーん…仕事?」
「…なにそれ?…」
「仕事は、仕事ですよ。仕事しないとお金が無くなるし。」
「呆れた。。」
「だって、食べたり、飲んだりしないと死んじゃうじゃないですか…」
「聞いた私がバカだったわ。」
「なんかごめんなさい。。何処で貴方は、誰なんですか?」
「私?…わたしは…」
ピピッピピッ
うん?夢?
なんか変なところで目が覚めてしまった。
残念な気持ちと知ったらなんかやばい気がするという2つの感情を得て僕は、朝を迎えた。
なんともいえない…
こんな嫌な気分で朝を迎えたのは、久しぶりだった。
さてと。
朝ベットから体を起こし、朝ごはんを軽く取り、仏壇に合掌したら、歯を磨いて、スーツに着替える。
これが僕の毎日の日課。
繊細の性格なのかどれが順番を間違えても、忘れてもおかしくなるのだ。
仕事でミスを連発したり、電車を乗り間違えする。
我ながらめんどくさい性格だったりする。
さてと、全てを終えてこれが最後。
扉を閉める前に「行ってきます」一言言ってから出掛けるのだ。
普通の事だと思うが、ウチには、自分の他に誰もいない。
そう今現在僕は、一人暮らし。
だけど、言ってしまう。
昔の習慣が抜けないから。
「行ってきます!」
そう、いつもの声で。
「行ってらっしゃい!」
…えっ?
今誰かの声が聞こえた気がした。
もう一度
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
やっぱり…?
誰…もしかして幽霊?
いやいや、僕は、霊感なんて無いし。
動揺して固まっているとまた声が
「早く行かないと遅刻するわよ!」
えっ?あっまずい。
電車に乗り遅れる!
この謎は、また返ってきた後に解こう。
僕は、扉をバタンと閉め、早足で駅へ向かった。
これは、僕と謎の幽霊の物語
不思議で少し悲しい
だけど、どこか暖かい。
そんな物語。