表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

育児ノイローゼ

意気揚々と始めた "ボケ防止メニュー" だったが・・・

意気込んでメニューを増やし頑張り過ぎた所為か、三月みつきも経たないうちに

お互い失速してしまった。


今にして思えばあの頃の私と母は、必死過ぎてイタい教育ママ(死語?)と

反抗期のウザい娘のようだった。介護と育児は別ものということをつくづく

思い知らされた。日々進化を遂げる子供と退化の一途をたどる高齢者。

自分では何もできなくても自尊心だけはたっぷりある年寄りと、自我の確立

していない従順な幼子を同等に扱うことは、所詮無理がある。


"優しく・忍耐強く・リスペクト" しながら接しなければ、と頭の中では

十分理解はしている。けれどこの認知症介護の大原則、親戚の叔母さんや

近所のお年寄にはできても実母となると、やはり理性より感情のほうが

先走ってしまう。『出来る事』が減り『出来ない事』が増えていく母親に

歯がゆい思いと苛立ちから、つい声を荒げてしまう娘———


「どうしてできないの!? この前はちゃんとできたじゃないの!!」

「なんで今さらこんなことしなくちゃいけないのよ!!」

「やらなけりゃ、どんどんボケていくのよ! 私だってこんなこと

 好き好んでやってるわけじゃない!」

「親をボケ老人扱いするつもり!? もうほっといてちょうだい!!」

「わかった、恍惚の人になって野垂れ死にすればいいわ!!」


こんな会話やりとりが頻繁に繰り返されるようになり、最後には母が私にノートや

カードをぶつけて来るようになった。これまでの日課をすべて拒否して

部屋に鍵をかけハンスト状態になることもあった。娘を拒絶するように

補聴器を外しろくに返事もしない。そんな相手に対して私のストレスは

マックスに達し自室に駆け込み声を張り上げて泣く。

狂人化wした二人の女の間で最初のうちはオロオロしていた夫も、私の

カタルシスが終わる頃には絶妙のタイミングで "Are you okay now?" 

と言いながらハーブティーを運んでくる。

お茶を飲んで少し冷静になると、母親に暴言を吐く自分が情けなくて

今度は言いようのない嫌悪感に襲われる—— まさに負のスパイラル。

こんなことが周期的に繰り返されていた。


当時の私の精神状態は最低最悪だった。

鬱の一歩手前、いや、軽い鬱状態だったかもしれない。


『こんなに頑張ってるのに、なんで分かってくれないの!?』


育児に疲れ自信を失った母親のイライラを感じ取った子供が情緒不安定

になるように、私が一生懸命になればなるほど母の状態は悪化していく。


——昼夜を問わず用もないのに何度も私を呼びつける。しかも、補聴器を

装着していなので自分の声が聞こえず大声を張り上げる。

使用済みのパッドや汚れた下着を引き出しの中に隠す。(当時の母は

尿漏れ用のパッドは使用していたが、まだ排泄の介助は必要としていな

かった)現物を目の前に突き付けても自分はやっていないと言い張り、

自分の非はゼッタイに認めようとはしない——


心に余裕がある時はこれら認知症特有の問題行動も軽く受け流せるが、

そうでない時は一つ一つが神経を逆なでする。


『あの時、老人ホームを選択していてくれれば……』


今頃は趣味の教室にでも通い友達とランチし週末は主人と二人で外食、

のんびり気楽に暮らしていただろう。母も娘にガミガミ言われることも

なく、施設の職員さんと軽口を叩きながら娯楽室でお仲間たちと賑やか

に楽しく余生を送っていたかもしれない———。

こんな思いが日に何度も頭を過る。


『もうこんなことイヤ! 私にはムリ!』



育児放棄寸前だった。

そんな私を救ってくれたのはカウンセラー的存在の娘の助言でも、夫の

淹れてくれる癒し系のハーブティーでもなく、なんと、あの悪名高きw

"2ちゃんねる" だった・・・









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ