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エピローグ

その日は突然にやって来た――


『今日は何だか疲れたからもう寝るわ』


これが最後の言葉になった――



前日まで普段通りの日常生活を送り、その夜はいつもより早く就寝。

私が寝る前に部屋を覗くと、いびきをかいて熟睡しているように見えた。

が、翌朝起こしに行くと意識がなく、救急隊が到着した時にはすでに

心肺停止の状態だった。


苦しんだ様子もなく、とても穏やかで綺麗な顔をしていた。

認知症と診断されてから6年、”恍惚の人” になることなく天寿を全う

してくれた。

まさに『ピンピンコロリ』90歳の大往生、誰もが望む理想的な最期に

『お母さん、アッパレ』と拍手を送ってあげたい。


正直、早く解放してほしいと思ったことも何度もあった。

そう遠くない将来、この日が来ることも漠然と覚悟していた。

だがこんな急にあっけなく逝かれてしまうと、心にポカーンと穴が空いた

ような虚無感があり、一か月くらいは寝たきりでも良かったのに・・・

不可解な感情に苛まれ涙がポロポロ零れてくるのが自分でも不思議だった。


手抜きながらもずっと傍にいて看取ったという安堵感のような思いと、

もっと優しく手厚い介護ができたんじゃないかという後悔が、私の中で

交錯する――

この6年間のすべての負の感情が払拭され、母との良い想い出ばかりが

頭の中を駆け巡る――



『温泉付きの老人ホームじゃなくて江莉子との同居を選んで正解だったよ』



32年ぶりに再会する父に、母はそう伝えてくれるだろうか・・・







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