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灰色の魔導士〜レディキャットの婚活調停〜  作者: 玖桐かたく
第四章
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遺産と欲望Ⅴ

「そうだな、それが世界の理。だが、真実を知る必要は…お前にはもうない」


 二頭の蝶を舞わせながら、シルバーは纏っているマントをふわりと翻させて、その身を飾る魔導士の位を示す左右のガラス玉を露わにした。これまで、纏っていた白マントに執拗に隠されていた右のガラス玉すらも見せつけるかのように、黒ローブの男の視線に晒す。


 数えきれない左側に飾られていたガラス玉を優に越す、右側に飾られたガラス玉。


 それは、広間の入り口でシルバーの結界に守られていたレディ・キャットとエーベルハルド殿下にも驚愕をもたらしていた。


 わざわざ、シルバーは黒ローブの男に絶望を与える為に、隠されていた右側のガラス玉を露わにした辺り、その性格の悪さは一品だろう。実際に、黒ローブの男はガラス玉を見て、恐怖の余りにカラカラに乾いた喉から短い悲鳴を上げた。


「ひっ………な、なんだ、なんだお前は。こんなのは聞いていない!」


 自らの声が震えるているのも自覚していないだろう黒ローブの男は、幾度も後ずさり壁にその背が付くと逃げ出すという事を思い出したかのように、踵を返そうとした。


 だが、その直前にシルバーが指を鳴らしただけで、黒ローブの傍にいた石像が一体動き、黒ローブの男の退路を断つべく腕を振り下ろし、大きな音と共に石像が腕を壁にめり込ませた。


「逃がすわけないだろう?はぐれであれば、それだけで抹殺の対象であるのに、遺跡に踏み込み神々の遺産に手を付けた盗人を」

「は、はぐれだとしても、この遺跡に入ったのは依頼されたからだ!私の本意ではない!」


 宝珠すら持たず、石像を動かすという魔導士としての力量の差が余計に感じられ、黒ローブの男は無我夢中で叫び声を上げていた。


「本意?うん、判ってないようだな。行動したという、それだけで既に……」


 シルバーは何か言いかけるものの、広間の入り口にいる二人の存在を思い出して続きの言葉を閉ざす。


「レディ・キャット、エーベルハルド殿下。もう、広間に入っても大丈夫ですよ。ただ少し狭苦しいので、私の背後辺りに移動してくれれば、それなりの空間もあるから移ってくれるかな」


 シルバーの指示に、レディ・キャットを守るかのように、エーベルハルド殿下がレディ・キャットをエスコートして石像の間をすり抜けて動き出した。

 その二人が石像の間を動いている事で、石像の巨体により黒ローブの男が見えないのを利用し、シルバーはアンシャルを恐怖に震えている黒ローブの男の元へと飛ばすと、その両の目の前を掠める前に飛ばせて、両目を刻む様に眼を抉らせた。


「アンシャル、眼と足と手だ。後は聞きたい事があるから残しておけ」

「ひっ…ぎゃああああああああ」


 黒ローブの男の絶叫に、レディ・キャット達の歩みが止まり、エーベルハルド殿下が腰に佩いていた剣の柄へと手をかける。石像たちが相手であれば、エーベルハルド殿下がどれほど優れた剣士であろうとも役には立たないのだが、条件反射というものだろう。


「な、何が起きたのシルバー」


 レディ・キャットが、思わずシルバーへと声を掛けるが、石像の上に座り込んだシルバーは何でもないとばかりに笑顔を浮かべ、手をひらひらと振った。


「大したことじゃない。先程まで立派な悪役ぶりを演じてくれていた、はぐれが逃亡しないように、身柄の確保をしているだけだから、もう少し、耳障りな音が聞こえるかも知れないけれど二人とも気にしないで、こちらに移動してくれていいよ。遺跡に関する大半は、すでに私の支配下に置いてあるからね」

「安全という事なのは判ったが、はぐれというのはなんだい?」


 シルバーの返答に、安全は確保されたと判断したレディ・キャットは、言われるままにシルバーの方へと石像をかいくぐって行く。

 代わりに、エーベルハルド殿下は知識欲が刺激されたのか、はぐれについて問いかけながら、レディ・キャットの後を追うように移動していた。


 アンシャルへと、黒ローブ男の眼の次にその両足の腱を切るように指で指示を出しながら、男の絶叫を聞きながら表情も変えずにエーベルハルド殿下の質問に答える。


「はぐれというのはね、魔導教会において使い魔を得られなかった、魔導士見習いにもなれなかった僅かな魔導力しかない存在の事であり、その微かな魔導力でもって、魔族と偶に契約を交わす存在がいるんだ。その、魔族との契約をして魔導力を行使する事が出来るようになった輩を、総じてはぐれと呼ぶ。これは、魔導教会の管理の外にいる存在だから、どんな事も行う。それこそ、通常魔導士に頼めない後ろ暗い事等が主だね。だから、魔導教会としては、はぐれは見つけ次第討伐が義務付けられているのだが…」


 まるで、講義でもしているようだと思い、シルバーは苦笑を零すものの、黒ローブの男の両目、足の腱、両手の腱をアンシャルに切らせたのを確認すると、アンシャルとキシャルをその身の内へと戻した。二頭の蝶たちは、嬉しそうにシルバーの首筋へとその姿を消した。


 そして、レディ・キャット達二人がシルバーの背後の空間に辿り着いたのと時を同じくして、先程アンシャルが飛んできた方向から二人の人物が走って来たのが見えた。


(おさ)!」

「隊長、何事ですか!」


 二人の声が同時に広間に響き渡る。

 片方がチェルソで、片方がハーラルトであるが、どちらがどちらであるかは、自明の理であった。


もっとグログロにしたかったのですが自重してモチベ下がっていたのと、あまり需要がないようなので、エタろうかと思っていました。

最後までプロット作ってあるのでもう少し続けようかと思います。

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