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フユの場所 『なぞなぞろびー』




 ぬいぐるみ達に教えられた通りに、更に進んだ先には開けた空間があった。


 丸い形の部屋には、今通ってきた道の他に、五つの扉がつけられている。

 扉は赤、青、黄、緑、紫の五色。

 それぞれの扉にはピンが刺されており、そこに紐で扉と同色の人形が吊されている。

 ボタンで作った目に、縫い目で作った口、毛糸の髪の毛を生やした、人を模したぬいぐるみだ。

 それ以外に何かないか、クリフは部屋を見渡した。

 フユの部屋へと伸びる道の脇に、小さな台座が置かれている。フユの身長に合わせて作られたような台座の上にはメモとペンが置かれており、脇にはパネルが置かれており、そこにはこの部屋のルールが書かれていた。


1.ほとんどのぬいぐるみはうそつき

2.しょうじきものがひとりいる

3.でぐちはひとつ

4.でぐちいがいはおしおきべや


 更にその脇には、おもりで抑えられた一枚のメモが添えられていた。


『ぬいぐるみのことばをメモして、よくかんがえよう。がんばれ、フユ。 ハルねえより』


 クリフはおや、と首を傾げた。


(ハルねえ? ……三女様ってやつか? それに、このメモを見るとまるで……。)


 まるで、このクイズが、フユに向けて出題されているような書き置きである。

 そう言えば、とクリフはぬいぐるみ達の言葉のひとつを思い出した。


『……扉の位置はくるくる回る。わたし達でもどの扉がいつ、何処に通じているのかは分からない。知っているのは、常に扉の動きを見ている、扉の前の仲間だけ。』


 扉の前の仲間だけが知っている。その時は見落としていたが、その言い分だと、『フユも正解の扉を知らない』という事になる。

 ならば、この仕掛けは、この『ハルねえ』という、恐らく魔女であろうその人物が、作っているという事だろうか。

 何の為に?


(しかも、『おしおきべや』って……。)


 このクイズは、「間違えたらお仕置き。」と言っているようなものだ。

 どうも、この『ハルねえ』なる魔女のイメージは、ぬいぐるみ達から聞いた『三女様』とのイメージには合わない。クリフは何となくそう感じた。

 ならば、『ハルねえ』は、長女、あるいは次女という事だろうか? 先程のぬいぐるみ達の話を聞いた時点で、魔女は三人以上は居ると分かっていたので、クリフはあまり驚かなかった。

 ハルねえとフユ。二人の関係が少し気になったが、今はもたもたしていられない。

 クリフは急ぎ、ひとつの扉の方へと歩み寄った。


 その時、一斉にぬいぐるみが喋り出す。


赤『ここが出口の扉だぜ!』

青『ここが出口の扉です!』

黄『ここが出口の扉だよ!』

緑『ここが出口の扉よ!』

紫『ここが出口の扉だぞ!』


 びくりとクリフは思わず仰け反ったが、人形達の言葉から、出題内容を理解した。


 嘘吐き人形が四つ。正直人形が一つ。

 それら全部が「ここが出口」と言った、という事は、単純に正直人形が吊られた扉を選べば良いのである。

 さて、とクリフはまずは赤の扉の前に立った。


赤『何だお前、知らねえ顔だな!』


 嘘吐きを割り出すには、まず嘘を喋らせなければならない。

 ならば、人形と会話をしてみるべきである。

 かつ、「これは真実である」、または「これは嘘である」とハッキリと分かる会話をする事ですぐに分かる筈だ。

 クリフはひとつ、思い付いた質問を投げ掛けた。


「お前の色は赤だ。違うか?」


 赤い人形に向かって、「お前は赤い人形だ。」と聞く。

 もしも、赤い人形が嘘吐きであれば、「いいえ。」と答える筈だ。

 もしも、赤い人形が正直であれば、「はい。」と答える筈だ。

 この質問を、他の全ての人形に対しても行っていけば、正直者は簡単に割り出せる。

 我ながら名案である、と自信満々に答えを待つクリフに、赤い人形は答えを返した。


赤『俺は正直者だぜ! 他の奴らは全員嘘吐きだ!』


 どうやら、会話をする気がないらしい。

 しかし、今の言葉でクリフは理解した。


 『赤い人形は正直者である』。


 赤い人形が正直者だとする場合、言葉に矛盾は生じない。

 しかし、赤い人形がもしも嘘吐きだったとした場合。

 「俺は正直者だぜ!」という言葉に矛盾は生じない。

 しかし、「他の奴らは全員嘘吐きだ!」という言葉も嘘だとしたら、「他の奴らは全員正直者だ!」と言っている事になり、この部屋の「四人は嘘吐き、一人は正直者」というルールと矛盾が生じる。

 つまり、赤い人形は正直者でしか有り得ない。


 他の人形の話を聞く必要もなかった。

 クリフは迷う事なく、赤い扉に手を掛けた。

 扉は開き、その先には道が伸びている。

 この先に進んで、十字路を右に曲がれば、ひとまずは安心だ。


 この後、フユが追ってくるだろう。のんびりはしていられない。


 クリフは扉を閉じ、勢いよく走り出した。




 ガコン。




 クリフの身体がふわりと浮き上がる。

 一瞬見えた足元には、突然空いた大穴があった。

 

 クリフの耳元で、妖艶な声が響いた気がした。




 残念じゃったのう。ところで、おぬしは……。




 何かを言い掛けた女の声。

 その先をクリフが認識する前に、クリフの意識は深い闇の中へと落ちていった。





 ~~ GAME OVER ~~





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