回想1 ~王様との謁見~
これは、僕らが王様の下へと辿り着いた時のお話。
無理矢理村から追い出された僕とマリィは、苦労しながらも(主に僕が……)何とか王様のいるお城へと辿り着く事が出来た。
門番に事情を話した僕達は、すぐに王様の下へと連れていかれる。
今まで見た事も無いような煌びやかな城内を通され、僕らは謁見の間へと辿り着いた。
「そなたが選ばれた勇者か?」
玉座に座る王様が、威厳のある声でマリィへと聞いてくる。
だけど、マリィはぼんやりと王様を見ているだけで何も答えなかった。
そんなマリィの態度に、王様が不審そうな顔を向けてくる。
ヤバい! ヤバいですよ!
「そ、そうです、王様! この娘が勇者に選ばれたマリィベルです! ほら! ちゃんと聖剣もありますよ!?」
「あ、ああ……うむ」
僕は慌てて王様へとマリィの紹介をした。
ちょっと勢いが強かったようだ。王様が若干引いている。
「そうか。こんな少女に魔王討伐の任を命じるのは心苦しいが……頼れるのはそなたしかいない。どうか、よろしく頼む」
マリィへと頭を下げる王様。
本来、王族はそんな事をしない。
それだけ王様が困っており、真摯な気持ちで魔王討伐を頼んでいるんだろう。
そんな王様の想いに、
マリィはまたもや無言だった……。
返事の無いマリィに、王様が再び不審な目を向けてくる。
「だ、大丈夫ですよ王様! マリィはちょっと緊張しちゃってるだけで……ちゃんと魔王討伐は引き受けますから!」
「お、おお、そうか。それならば儂も一安心じゃ」
安堵の笑みを浮かべる王様。
よし! 何とか乗り切ったぞ!
無事に切り抜け、僕が胸をなで下ろしていると、
「ロイ、何でそんなに慌てているの? あの人のせい?」
いきなり、マリィが剣へと手を掛ける。
その鋭い視線の先には、王様の姿が。
突然の出来事に、周囲が騒然とする。
「僕が慌てているのはキミのせいだよ! それに何で剣を抜こうとしているのさ!?」
「あの人のせいなら……黙らせようと思って」
「王様に何する気だよ!?」
僕は慌ててマリィの手を剣から離させた。
「すみません王様! この娘に悪気はないんです! ただちょっと……いえ! かなり変わっておりまして!」
ヤバいヤバいヤバい! これ絶対反逆罪とかだよね!?
衛兵さんとか、凄い睨んでるし……。
ああ……この歳で打ち首なのかなぁ……。
僕が世を儚んでいる間も、衛兵さん達がジリジリと近づいてくる。
「止めよ、皆の者」
そんな彼らを、王様の一言が止めた。
「彼女は魔王を討伐できる唯一の希望。この程度の事で咎める気はない」
「王様……」
慈悲深い王様の判断に、僕の目から涙が溢れ出る。
凄い人だよ、王様。
マリィに睨まれたのに平然としているし、無礼な事をしたのに許してくれるし……。
本当に凄い人だ。
そんな風に僕が見ている事に気が付いたのか、王様が微笑んでくれる。
眩しすぎるその笑顔。
僕は正面から見られず、視線を下へと下げてしまう。
そして、気が付いた。
王様の足が、凄まじい速度で小刻みに震えている事に。
「……」
王様、やっぱり貴方は凄い人ですよ。
そんなにビビってるのに、表情に一切出さないなんて……。