亡霊騎士団は突然に~其の八~
亡霊騎士団編は、これでひとまず終了です。
でも、話はまだまだ続きますよ~。
一日が終わりを告げた。
結局、異形の者が現れたにも関わらず、特に被害を受けることなく事態は収拾した。
町の人々にとっては、訓練があったくらいにしか感じていないかもしれない。
その程度の事件だった。
若干二名、モンドとベルーテが医務室に運ばれていたが。
医者の診断では、モンドは、実践訓練におけるオーバーワーク。ベルーテは、肋骨骨折並びに全身打撲。
両名とも、悪魔にても襲われたかのような怯えっぷりだったそうな。
翌日、エリーナ姫の部屋に大工や左官が数名、壁の修復の為雇われた。
大工達は勿論口止めされたが、姫の部屋は、何か人知を越えた闘いの痕跡がみられたらしい。
王宮は何事もなかったかのように佇んでいた。
エリーナ姫の美しさに骨抜きにされた者は、エリーナの言うがままに政を行い、騎士達は鍛錬に励んでいた。
エリーナの部屋に、一人の騎士が招き入れられた。
「ヴァンレット、貴方は今回の件についてどう思いますか?」
静かに姫は問いかけた。
「原因はよくわかりませんが、何らかの力で森に魔力が流入し、大戦の亡霊が甦ったのだと思います。」
「そうですか。他に何かありますか?」
「いえ、特には…。」
「あなた方の働きには大変感謝しています。これからも活躍を期待しています。」
「御意。」
ヴァンレットは一礼すると部屋を後にした。
ヴァンレットが王宮を出ると、昼に近いのか太陽がほぼ真上まで昇っていた。
ヴァンレットは突然の眩しさに目を細め、騎士達が訓練をしている王宮前の広場に歩を進めた。
空は澄みわたり、小鳥のさえずりが平和を告げていた。