亡霊騎士隊は突然に~其の六~
王宮内は騒然としていた。
サナリィの部隊が各々配置につくのを見計らったかのように、亡霊騎士団が、王宮内に突如として出現した紫の光を放つ魔方陣から現れたのだ。
魔方陣は、エリーナ姫の部屋にも出現した。
サナリィや、軽口を叩いていた長身の男ベルーテ、小柄なシャンテ、フードの付いた術士装束のレルは一斉に各々の武器を構え、魔方陣から現れた亡霊騎士達を迎え撃った。
まず、サナリィは怪しく光る剣を隙間の無い鎧甲冑に身を包んだ騎士と切り結び、続いてベルーテは両腕に鉤爪を備えた騎士、シャンテは二刀流の騎士、レルは巨漢の騎士とそれぞれ相対した。
この亡霊騎士達は、第二騎士隊と戦った騎士に比べると上位なのか、明らかな攻撃意思を持ち、目標も定めているようだった。
「ドケ、ジャマダ。」
まず、巨漢の亡霊騎士がレルとの間合いを詰める。
エリーナの部屋はかなり広く、天井まで4メートルは軽く越えている。
巨漢の亡霊騎士はその半分くらいの背丈であり、レルの倍以上の大きさであった。
レルは怯むことなく、円筒状の武器を持つ手とは反対の、術符を幾重にも巻かれた左腕を突き出した。
「キサマ、マホウツカイダロ。ザンネン、オレノヨロイニ、マホウキカナイ!」
巨漢の亡霊は、その巨大な拳でレルを打ち砕こうと、大きく振りかぶった。
レルの左手から一筋の光が放たれ、騎士の胸部中心を捉えた。
「ダカラ、キカヌト…!?」
胸に当たっている光は徐々に広がり、すぐに巨漢の亡霊騎士全身に広がった。
鎧は溶けだし、やがて本体もろとも消し去った。
「バ、バカナァァァ…。」
断末魔を最後まであげることなく、巨漢の亡霊騎士は消滅した。
「図体とオツムは反比例のようだな。魔法が効かないといっても、無限では無いだろうに。まぁ、部屋を燃やさなくて済んだのは鎧様々といったところか。」
レルは懐から封印の術符を取りだし、器用に巻きはじめた。
一方で、シャンテと相対している二刀流の亡霊騎士は、半歩踏み出し口を開いた。
「来ないのか?ならば行くぞ!秘技!サウザンド…」
二刀流の亡霊騎士が攻撃を繰り出そうとしたとき、シャンテは既に騎士の後ろに立ち、片刃の剣を鞘に納めたところだった。
遅れて、騎士の身体は十字に切り裂かれ四散した。
「遅い。何もかも遅すぎる。」
飛燕抜刀術~
神速の剣技で、行動の全てが攻撃に変わる無敵の流派であった。
しかし、無敵のであるゆえに他流派に忌み嫌われ、滅亡に追いやられた悲運の術である。
シャンテ自身、 この技のため疎外され、先の第四騎士隊副隊長に出会うまで不遇の時期を過ごしていた。
「喋るなら勝敗が決した時に好きなだけ喋ればよい。」
シャンテの言葉に、二刀流の亡霊騎士が答えられるはずもなかった。
今回の没ネタ~
・鎧の亡霊騎士の名前→アグニス←間違いなくチョイ役なので勿体ない。(笑)以下他の騎士も同じ。
・もっとレルとか、シャンテの戦闘を厚めに表現。←やりたいよ、やりたいけど我がキャパシティがムニャムニャ…。
・サナリィ隊大苦戦→ヴァンレット登場→敵殲滅←時間的に無理ですからね…。魔方陣から現れたら一緒にやられちゃいそうだし。あ、魔方陣使えば…。←後の祭