亡霊騎士団は突然に~其の三~
「鳳翼の陣!」
ヴァンレットの号令は復唱され、第二騎士隊は敵の前方500メートルの位置で、敵を半円で囲う様に展開した。
死の国から呼び戻された死人の騎士達は、王宮を目指す個々が集まり、漆黒の集団となっていたが、騎士隊に囲まれても物怖じすることなく前進を止める気配は微塵も感じられなかった。
数十メートル四方に広がる敵の集団は、ゆっくりと、がが確実に王宮を目指しているものの、統率されていると言うわけではないようだった。
ヴァンレットは、傍らに待機している第二騎士隊長に二言三言声をかけると、単騎、敵の黒き群集に向かっていった。
先頭の亡霊騎士が纏っている甲冑の色形が判別出来るくらいの距離で馬を止めたヴァンレットは、両の腰に携えた剣をすらりと抜き、互いの柄先端を結合させた。
人の身長より長くなった双頭剣は、頭上にかざされたヴァンレットの手を離れ、光を帯びて回転を始める。
双頭剣は回転を重ねるごとにその速度と輝きを増し、それがまさに光輪と化した時、ヴァンレットのもとを離れ、亡霊騎士団に吸い込まれていった。
無言の断末魔と共に、光輪に触れた亡霊騎士は消滅していき、一通り群集を蹂躙した光輪は再びヴァンレットの手に戻り元の双頭剣となった。
ヴァンレットは手綱を握っていた手を離し、今度は両手を頭上にかざした。
双頭剣は再度回転を始め、両腕を一度引き、胸の前に突き出す動きに合わせてヴァンレットの頭上から馬の鼻先に回転の中心を変えた。
それはレシプロ飛行機のプロペラのようで、やがて回転速度は安定し、ヴァンレットは手綱を握り直した。
「ハッ!」
気合いと共にヴァンレットは斑になった亡霊騎士団の中央に馬を疾走させると、回転する双頭剣が屍を蹴散らしヴァンレットは騎士団を一直線に突き抜けた。
たった二度の攻撃ではあるが、亡霊騎士団の数は四分の一ほどになり、もはや集団とは程遠い存在と化した。
しかし、亡霊達は歩みを止めようとはせず、それでいて自分達の仲間を葬り去ったヴァンレットには見向きもしなかった。
ヴァンレットそれを確認すると、騎士隊に合流することなく、王宮とは反対方向、亡霊騎士がはじめて確認された森の方へ独り突き進むのだった。
王宮近衛騎士団第二騎士隊~
騎士団において、最強と吟われる剣術、魔術双方をそつなくこなす部隊。
「第一騎士隊」を語らないのは、己が能力に傲ることなく、更に上を目指すとういう戒めである。
隊長の名はモンド・クレイストン。
21歳の若者ではあるが、第二騎士隊を束ねるには充分な能力を持つ青年である。
モンドは、ヴァンレットが森の方へ向かうのを確認し、部隊の交戦を許可した。
精鋭達は放たれた猟犬の様に、残った亡霊達を次々と敵を葬り去る。
そして、モンドが袈裟懸けに剣を降り下ろすと同時に、最後の亡霊騎士が崩れ落ちた。
「部隊後退!」
モンドの号令で、騎士隊は再び鳳翼の陣形に戻った。
カタッ、カタカタッ!
亡霊騎士の破片が一つに集まりだした。
破片は、みるみるうちに一体の巨大な骸骨騎士となった。
「ウォォォォォォォォォン!」
草原におどろおどろしい雄叫びが響き渡った。
今回の没ネタ~
・亡霊騎士が後から後から涌き出てくる。←話エンドレス突入。
・ヴァンレットの攻撃が通じない。→「な、何ィ!」←そんなんじゃ、この先戦えません。
・ヴァンレット「気○斬!」←訴えられます。
・第二騎士隊大苦戦。←王国大丈夫?
・巨大骸骨が口からビーム。→実戦投入が早すぎて自壊。←訴えられます。