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亡霊騎士団は突然に~其の二~

赤色の信号弾が打ち上げられる数刻前~


「いやー、新しい騎士団長の任命式、凄かったらしいな。」


馬上で手綱を握る、40半ばと思われる軽装備の騎士は、同じく馬上の新人騎士に話しかけた。


「ええ、父の話ではエリーナ姫が余りにも美しくて、拍手と歓声しか記憶に無いそうです。」


「なんだ、お前さん二世か。」


「あっ、はい…。」


二世とは、親が王国の政治家、若しくは騎士団等の関係者で、叩き上げの騎士等には、コネで入隊したのだろう、と誤解を受けることも少なくなく、すこぶる評判が悪い。


実際にそういう者もいるのだが。


「親父さんの話はしない方がいい。お前みたいな若い駆け出しはただでさえやっかまれるからな。まぁ、今、此処に居るのは実力なんだろうから、仮に何か言われても気にすることはないさ。」


「は、はいっ!」


「そうか…、姫様はそんなにお美しかったか…。」


「はい、後にも先にも存在しない程の美しさだったそうです。ところでジョゼさん、今日はいつもより遠くまで来ているみたいですが…。それに此処は何か禍々しい気配が渦巻いているみたいで…。」


二人と二頭の馬はいつの間にか、薄暗く霧のたちこめた森に踏み入っていた。


「お、おう。話に夢中になってつい進みすぎたな。しかしディーオ、ここも我が王国の領土なんだ。もっとも、先の魔法大戦でここは激戦地だったらしくてな、今も成仏出来ない亡霊がさ迷っているとかで、俺たちも中々来ることはないがな。」


「…」


「どうした?ディーオ?」


ジョゼは並んで歩を進めていたディーオから返事が無い事に違和感を感じ、呼び掛けると共に周囲を見回した。

ディーオは、ジョゼから馬二頭分後方で立ち止まっており、思ったより近くにいた事にジョゼは安堵し、馬を反転させディーオに近付いた。


「返事くらいしろよ。今日は戻るか。」


ジョゼが声を掛けても、ディーオは返事をしなかった。


ジョゼが、目を凝らしディーオの様子を伺うと、どうやらディーオは震えているようだった。


「おいおい、ビビり過ぎだぞ新人君。そんなんじゃ騎士隊には入れんぞ、あっはっは。」


「ジ、ジョゼさん、あ、あ、あれ…!」


ディーオはやっと口を開き、森の奥を指差した。


「ん?」


ジョゼがディーオの指差した方に視線を移すと、森の奥にユラユラと揺れる人影のようなものが近付いてきていた。

しかし、その人影は明らかに一度命の尽きた者で、錆び付き腐食した甲冑の隙間から覗く肉体は腐り果て、所々骨が剥き出していた。


「チイッ!」


ジョゼは、亡者の騎士と一気に間合いを詰め、背負っていた馬上戦闘用に切り詰めた刃長の槍を降り下ろした。

経年劣化した甲冑もろとも、亡者の騎士は呆気なく崩れ落ち、二度とよみがえることはなかった。


「ここは、魔法大戦の時の念やら気やらが大量に残っていて、たまーに今みたいな奴が迷い出て来るらしい。ま、実体が有る限り俺達のでもなんとかなるから、そうビビるなって。何事も経験、経験!」


ジョゼは、努めて明るく振る舞ったが、ディーオの震えが止まる事はなかった。

森は、当初から風など吹いていないのに木々や枝葉の影が揺らめいていたのだが、二人の目が薄暗がりに馴れるにつれ、揺らめきの正体が、今しがた打ち倒した亡霊の騎士の仲間であることを確信してしまった。


「参った。何てぇ数だ。俺は数字が苦手っつーのによっ!おい、ディーオ!お前がそこいらの二世でないことを証明するいいチャンスが来たぜ!」


「えっ?」


「こっから先は失敗が効かねぇ一発勝負だ。足下に細心の注意を払って絶対に馬を転けさせるな。勿論テメーも落馬なんかするんじゃねーぞ。あと、仮に俺が失敗しても絶対立ち止まるな。振り返らず真っ直ぐに詰所まで戻るんだ。いいな。行くぞっ!」


ジョゼとディーオは一斉に馬を反転させ、元来た道を走り出した。

木々の根や、腐った枝葉で足下は悪かったが二人は慎重な手綱さばきでなんとかスピードを緩めずに走り続けた。

もうすぐで森の入口が見えるか否かのところで、ディーオの馬が木の根に足をとられ転倒した。

勿論ディーオも派手に投げ出され、腐葉土でなければ身体中の骨がバラバラになる位、しこたま体を大地に打ちつけた。


「かはっ!」


ディーオの身体が呼吸を忘れ、痛覚ばかりが支配する中、ディーオは己が最期を感じた。


「チッ!世話のかかるっ!」


ジョゼは自身の馬を反転させ、倒れたディーオのところまで戻ると、馬上から手を差しのべた。


「生きてんだろ!さっさと掴まらねーと追いつかれんぞ!痛ぇのはまだ生きてる証拠だ。死ぬまで諦めんな!全力を尽くせ!」


「がっ!はっ、ぐぅっ…はいっ!」


ディーオは、痛みを押し殺し立ち上がるとジョゼの手を

しっかりと掴んだ。

ジョゼは、子供や彼女を馬上に招待するかの如く、軽々とディーオを自分の後ろに乗せ再び走り出しだ。


「よーし!上出来だ!このまま森を抜けるぞ!」


ジョゼとディーオは今度こそ無事に森を抜けることができた。


「ディーオ、お前の腰に信号弾があるな。」


「はい!」


「それに赤をセットしろ。やり方は解るな?」


「はい!」


ディーオはジョゼの言う通り、大きめのハンドガンのようなものに、赤い印が入った信号弾をセットし、上空に向け引き金を引いた。


パァァァァァン、スポンッ!


真紅の煙が軌跡を描き、軽い破裂音と共に一際大きな赤い煙の塊が上空に留まった。


「よし!詰所に戻って装備を整えるぞ!戦えるな!」


「勿論です!」


二人は仲間の待つ詰所に急いだ。

今回の没ネタ~

・ジョゼがディーオを先に行かせ、「ここは俺が食い止める!」←ベタすぎ。そんなに盛り上がるところでもないし。

・ディーオが、ジョゼを先に行かせ、「短い間でしたが今まで有り難うございます。ここは僕が食い止めます!」←オイオイ、展開ムリすぎ。

・ジョゼとディーオが奥義発動、敵を殲滅。←話が終わっちゃう。

・ジョゼとディーオが奥義発動。←ここでそんなに盛り上がられても…。

・取り敢えず、ジョゼとディーオが敵と戦う。←会話で尺を取りすぎて時間切れ。

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