ペパーミントの思い
バレンタイン企画でやろうかなーと思っていた短編です。
「蒼祐と美紅」の番外編というかスピンオフ的な話。
謎の多い美女、中川碧さんが主人公。
でもってこれは今年の話ではなく、2010年のバレンタインの直前を書いてます。
つまり「Melting Chocolate」よりも前、蒼くんと美紅ちゃんが両思いになる前のお話です。
「Sweet Message」が「バニラフレーバー」なのでこちらは「ミントフレーバー」となっております。
2月の初め、節分が終わると街は華やかに衣替えをする。
すでに春だからということなのかもしれないが、厚いコートやファーつきのブーツは「SALE」のタグとともに隅に押しやられ、代わりに淡いパステルカラーのワンピースや柔らかなシフォンのスカートが売り場の主役となる。
そんな季節。
もうひとつ「春」を否応なく実感させてくれる行事があり、それが一層売り場の華やかさを演出しているのだ。
それは「聖バレンタインデー」
命をかけて恋人たちを守った聖バレンタインが見たら嘆きそうな緩い行事になっているが、逆に「よい時代になった」と喜ぶのかもしれない。
だがバレンタインデーなどというものは、わたしにとってはつねに鬱陶しいものでしかないから、早く終わってほしい。
「あ、中川さーん」
名前は覚えていないが、何度か講義でみかけたことのある男子が声をかけてきた。
気分としては舌打ちしたいところだが、まさか本当にそうするわけにはいかないので、わたしはお愛想笑いをした。
「こんにちは」
「こんなところで会うなんて、運命かなー、オレたち。しかもバレンタイン会場の前」
運命じゃなく、偶然でしかないし、店の正面はバレンタインコーナーで占められているから、会場の前で会うのは当たり前のことだ。
「中川さんからチョコもらえたらオレものすごくラッキーなんだけど。予定には入ってないよね、へへへ」
よく喋る男だ。遠まわしにチョコレートを要求しているのだろうが、かえって苛々する。そんなに欲しいなら堂々と「くれ」と言えばいいのに。
「ごめんなさい、わたし急ぐので、これで」
それ以上相手をすることに疲れて、わたしは彼を残してデパートを去った。
春物のショールを探しにきたのだけど、なんだかそんな気分ではなくなってしまっていた。またの機会にしよう。
聖バレンタインの思惑はわからないにしてもわたしにとって憂鬱な行事であることは間違いない。大半の日本人はカトリック教徒ではないから弾圧された歴史などないのになぜこんな行事を導入したのだろうか。
わたしは小さくため息をついた。
数日後。
1限目の講義を前に先週のノートをチェックしていたわたしは隣に人の気配を感じた。
横に誰が座ろうとわたしは関心がないから顔も上げずにいたらいきなり至近距離に男性の顔が現れた。
「おはよう、中川さん」
「おはよう」
一応そう答えたけれど、朝の爽やかな挨拶を交わしたというには程遠い気分だった。
声をかけてきたのは緑川誠人。
他人に関心のないわたしでも名前を知っているのは、彼に興味があるのではなく、彼のことを警戒しているからだ。
この男はとにかく評判が悪い。
お洒落で顔の造作もそこそこ整ってはいるので一部の女子学生からは人気があるのだが、女性関係と金銭にルーズで、しょっちゅう揉め事を起こしているらしい。
出来れば極力近寄りたくない相手だ。
あまり講義にも熱心に出ているほうではないし、ことに1時限めなどに出ることは珍しいのに。
「いやあ、普段この時間の講義に出ることってあまりないんだけど来てみてよかったな。中川さんの隣に座れるなんてラッキー、そうそうあるもんじゃないし」
わたしにとってはアンラッキー以外のなにものでもないのだが、緑川誠人はニヤニヤしながら体を寄せてきた。
ひどく不快だし、もっと言えば身の危険すら感じてきたので、よほど席を移ろうかと思ったが、講義の時間が迫ってきているため、近くに適当な席がない。
斜め後ろには席があるのだが丁度二人分空いているため、移動したとしても彼も一緒についてきそうだ。
そう思っているうちにも、新たな学生が次々と入ってきて、ほとんど空いた席はなくなってしまった。
仕方がない、不愉快だが我慢するしかない。
この軽薄な男のことはシンバルを持ったサルのオモチャだとでも思えばいいのだし。
だが、人間はサルのオモチャよりも数倍厄介だ。
「中川さんのノートってきれいに整理されてるねえ」
緑川はより一層顔を近づけ、わたしのノートを覗き込んだ。ノートの内容よりも体を近づけることが目的なのだろう。講義の間ずっとこの状態に耐えなければならないのだろうか。気分が悪くなってきた。
「オレ、先週の講義出てないからあとでノート貸してくれないかな。もちろんお礼はする、近くにいい雰囲気の店見つけたから奢るよ、ね!」
どうせノートなんかまともにとったこともないくせに。食事に誘うための口実にわたしのノートを利用されるなんて真っ平だ。気分が悪くなったことにしてもう帰ってしまおうか、いや、そんなことをしたら「送る」とか言って家までついて来るかもしれない。緑川というのはそういう男だ。
こんな男の隣に座らなければならないなんて、本当に今日はなんてついてないんだろう。
我が身に降りかかった不運に出かかった溜息を堪えていると、ふわりとミントの香りがして、緑川とわたしの間に誰かが割り込んだ。
驚いて見上げると、よく知った顔が人懐こい笑顔を見せた。
「橘くん?」
橘蒼祐、彼は緑川とは正反対の人物だ。
真面目で誠実だが気さくな性格で周囲を疲れさせることがなく、講義には欠かさず出ていて成績もいい。すっきりとした嫌味のない顔立ちでスポーツ万能、とくれば女子学生が放っておくはずはなくかなり人気が高いのだが、本人は鈍いのか女性に関心がないのか全く浮いた噂を聞かない。
わたしは今まで挨拶くらいしかしたことがないのだが、何か用でもあるのだろうか。
「中川さん、良かったら席代わってくれないかな」
「ええ、いいわよ」
どういう理由かはわからないが、渡りに舟だ、わたしは早速立ち上がろうとした。
と
「おい、ちょっと待てよ」
緑川が彼の腕を掴んだ。
「何か用か?緑川」」
「橘、おまえ厚かましいんだよ。もうすぐ講義始まるのに席代われとかどういうつもりだ。理由を言え理由を!」
「さっきうっかりコンタクトを落として黒板が見辛いから知り合いの中川さんに席を代わってくれるように頼んでいるんだ」
「それが厚かましいってんだ、中川さんに迷惑だろうが」
迷惑なんてとんでもない。こんな有難い申し出はないというのにこの男は何故邪魔をしたがるのだろう。
「迷惑か、そうかもしれないな」
「おお、そうだ。迷惑に決まっている」
彼の言葉に緑川は力を得たように意気込んで答えた。わたしが迷惑かそうでないか、緑川にわかるはずがないのに余計なことばかり言う。せっかくの席を移動するチャンスを奪われそうになり、あわてて
「わたしは迷惑なんかじゃ・・・」
と言いかけると橘蒼祐はクスリと笑った。
「だったらおまえが代わってくれるか?俺はどっちでも構わないけど」
「う、そ、それは」
緑川の顔が怒りと焦燥で朱く染まる。
緑川と橘が席を代わればわたしが橘蒼祐の隣に座ることになる。それは緑川とすれば我慢ならない展開なのだろう。
「わたし目はいい方だから後ろで構わないわよ、橘くんの席はどこなの?」
「ああ、後ろから2番目」
彼が指さす方を見ると確かに空いた席があり、隣には真面目そうな女子が座っている。
「わかったわ、じゃあ」
わたしは短く答え、ノートとテキスト、筆記具を持って後ろの席に移動する。席に着くと同時に教授が部屋に入ってきた。
助かった、ほっと胸をなでおろす。
机上にはプラスチックの小さなケースが置かれていた。橘蒼祐が席を確保するために置いたものだろう。
手にとってみるとそれはミント味のタブレットのケースだった。まだ中身がかなり残っていて清涼感のあるペパーミントの香りが漂ってくる。
ふと、さっきミントの香りがしたことを思い出した。あれはこのタブレットだったのだろう。
彼の笑顔を思い出す。
媚びるでもなく内面を押し隠すためでもない、他の思惑を全く感じさせない純粋な笑顔だった。あんなに自然な笑顔を見たのは久しぶりだ。いつ以来だろう、たぶんわたしがまだ小さな子供だった頃はみなごく普通に笑いかけてくれていたように思う。けれどわたしが成長するとともに純粋な笑顔を見せてくれる人は減っていった。
笑顔の下に透けて見える思惑。
それがわかるようになってから、わたしも本当の意味で笑うことがなくなった。
いつの間にか、わたしにとって笑顔は内面の思いとは全く関係のない社交のためのただのツールになってしまっていた。
なぜだか溜息が出た。
けれどそれはさきほど緑川の隣に座っていたときとは全く違うものだった。
講義が終わると緑川はそそくさと席を立ったが、橘蒼祐はまだ席についたままメモを取っている。
「橘くん」
彼が顔を上げた。
「次は143番教室でしょ。ここからはかなり遠いから早めに移動したほうがいいわよ」
「まだあと20分近くあるし大丈夫だと思うけど」
「でも大島教授の講義は人気があるから早く行かないと前の座席が取れないかもしれないし」
コンタクトがないなら、前から5列めくらいまででないと見辛いだろう。眼鏡を持っているふうでもないし。
「俺はどっちかというと後ろのほうが見やすいけど」
え?
「コンタクトは?見つかったの?」
「え?あっ!」
彼は一瞬不思議そうな顔をしてわたしを見、そして次の瞬間ぱっと赤くなった。
「ええと、その・・・」
答えに窮している彼を見ていると笑いがこみ上げてきた。なるほど、そういうことね。
「橘くん、視力は?」
「両目2.0。動体視力鍛えていたから、ちゃんと測ればもっとあるかもしれない」
「それならコンタクトは要らないわよね」
「うん・・・」
彼は申し訳なさそうな顔をして頷いた。
「さっきは、わたしが嫌がってるのがわかって助けてくれたんでしょ」
「いや、まあ。余計なことかなとも思ったけど、緑川にはあまりいい噂を聞かないから」
滅多なことで人を悪く言うことのない彼がこうまで言うのだから、緑川誠人はよほど評判が悪いのだろう。
「助かったわ、本当に困ってたの。もうサボって帰ってしまおうかと思ったくらい」
「そりゃダメだ。緑川のために講義を諦めるなんて勿体無い」
「そうね、全くだわ」
彼とわたしは一緒になってひとしきり笑った。
ああ、こんなに笑ったのは何年ぶりだろう。笑うって靄のかかっている気持ちが晴れてゆくような気持ちになるものなんだ。
それを久しく忘れていた。
「そうだ、これ」
ミントタブレットの箱を手渡す。
「あ、ありがとう」
「ミント味が好きなの?」
「うーん、まあそうなんだけど。なんていうか習慣みたいなものかな」
「習慣って?」
「俺、高2まで勉強は後回しでサッカーばかりやってきたから、そのツケが回ってきて3年になってから受験勉強が大変でさ、眠くなったときにこれ口に入れると目が覚めるからいつも大量に買ってた。それで合格してからもなんとなく、ないと落ち着かなくて未だに持ち歩いてる。それに今でもバイト終わってからレポート書いたり勉強したりするのにあると便利だし」
「そう。真面目なのね」
1年間の受験勉強だけでここに現役で合格するのはかなり大変だったはずだ。相当な努力家なのだろう。
「いや、単に貧乏暇なしって感じかな。バイトしなけりゃもっと余裕があるんだけど、塾長に便利にこき使われてて最近ほんと忙し・・・」
その時、彼の胸元で携帯が鳴った。
「あ、ごめん、ちょっといい?」
「どうぞ」
彼が軽く会釈して電話に出る。
「はい、あ、柚木さん?今、下?うん、いいよ、すぐ行くから」
声が弾んでいる、いい知らせでもあったんだろうか。
「何か用事?」
電話を切った彼に聞くとちょっと済まなさそうな顔をして頷いた。
「サークルの友達に本貸す約束してて、今下のロビーに来てるらしいんだ。だから」
「わたしに気を遣わなくてもいいわよ、じゃあ・・・」
「うん、また後で」
慌てて部屋を飛び出してゆく後ろ姿を見送ってテキストとノートをブックバンドで一つに纏めた。
掌にはまだ僅かにミントの香りが残っている。
ほんの少し胸の奥に痛いようなざわめきを感じた。
それが何なのかわからなくて落ち着かない。こんな気持ちは初めてだ。嬉しいでもなく悲しいでもないし、不愉快でもないけれど快いとも微妙に異なる思い。
自分の感情のどこのカテゴリに入れたらよいのかどうにも判断できなくて。
もう考えるのはやめよう。
わたしは大きく頭を振って部屋を後にした。
2月11日、建国記念日。
祝日だということでデパートは賑わっていた。
人込みは好きではないから休日に街に出ることはほとんどないのだが、明日は久しぶりに母がこちらへ来るというので、母の好きな和菓子を買っておきたかったし、この間見られなかったショールも欲しかった。
幸い込んでいたのは紳士もののフロアと一階の特設会場だけで、婦人ものの売り場は比較的空いていた。
紳士ものの売り場が込んでいたのはバレンタインの影響なのだろう。
付き合っている男性にはチョコレートだけでなく、プラスアルファのプレゼントをつけるのが普通らしい。他の男性との差別化を図るという意図のほかに「先行投資」の意味もあるのだろう。
ひと月後、自分の贈ったプレゼントに見合うお返しをくれなかった男性にまず未来はない。その点、女というのは実に現実主義でシビアな生き物だ。
プレゼントを贈ること自体にロマンを求めるのはほとんどが男性だ。毎日片思いの相手に薔薇の花を贈り続けるなんてバカなことをするのは男しかいない。
バカなこと、と言ってしまうのは失礼なのかもしれないが、実際そんなことで心を動かされる女性などまずいまい。
少なくともわたしはそうだ。
わたしが高校生のとき、実際そういうことをやった男がいた。
うれしく思うどころかはっきり言って気味が悪かったが、花に罪はないからあちこちに生けていたのだが、花瓶が足りなくなり、ついに「花をおかないでください」と張り紙をしたら次の日「きみに永遠の愛を捧ぐ」というカードと赤い薔薇の花束が届いた。
そんなもの捧げられてもわたしは少しも嬉しくない。
愛情の押し付けなど相手に精神的負担をかけるだけなのに、なぜそれがわからないのだろう。幸い、花束を贈ったことで自己完結したのか、それ以降花が届くことはなかったけれど、その後も似たようなことは何度もあった。
わたしは次第に人付き合いが苦手になった。
人とは距離をおいて付き合う。聞かれたこと以外は答えない。話が長くなりそうな時は適当な理由をつけてその場を離れる。そういうことを続けてきた。
寂しくはなかった。
長く話していたいと思うような相手はいなかったし、気を遣いながら人付き合いを続けるより、ひとりでいるほうがずっと気楽だった。
そんなことを考えているうちに、目当ての婦人洋品売場に着いた。
外の風はまだ冷たいが、ここはまさに春爛漫。
明るい色彩と薄く柔らかな素材が売場に溢れかえっている。
北国で育ったわたしは温かい地方の人より一層春への思い入れが強い。
少しくらい寒くても春は先取りして待っていたい、そう思うのだ。
春物のショールは冬のそれと違い、薄くて軽く、そして色鮮やかで、見ているだけで心が浮き立つような感じがする。
菜の花のようなイエロー、桜を思わせる薄ピンク、陽光を集めたようなオレンジ、どれも魅力的だ。
でも、わたしが特に惹かれたのは僅かに青味の強い淡いグリーンのショールだった。子供の頃、母とデパートに行くたびに必ずねだって買ってもらったミントアイスクリーム。まさにそのものの色あい、あの頃の空気までが蘇ってくるようだ。
「いかがですか、きれいな色でしょう」
販売員の女性がにっこり笑って声をかけてきた。勧められるままに肩にかけてみる。とても軽くて肌触りもいい、春を纏っているような気分になってくる。
「とてもお似合いですよ、この色、なかなか難しい色なんですけど、お客様は色白で顔立ちがはっきりしておられるから印象がぼけることがなくて、色の鮮やかさが引き立ちますね」
勧め上手なその販売員の声に背中を押され、わたしはショールの購入を決めた。
明日、母が来たときにこのショールを見せてミントアイスクリームの話をしてみよう。もう随分昔のことだが母は憶えているだろうか。
ショールの入った紙袋を手にわたしは食品売場に向かい、母の好きな和三盆の干菓子と桜きんつばを購入した。
これで用事は終わり、早く帰ろう。
そう思ったとき、隣の洋菓子売場に置かれているものに目が止まった。
当然のことながら今の時期はここもバレンタイン一色なのだが、たくさんのチョコレートの中に懐かしいものを見つけた。
外国製のチョコレートで、薄い2枚のチョコレートの間にラズベリーやオレンジ、ミルクなどのフィリングが入っている。
東京で輸入食品を扱う会社を営んでいる叔父がよく贈ってくれた。わたしは特にラズベリーが好きだったっけ。
残念ながらラズベリーは人気があるのかすでに売り切れていた。仕方がない、オレンジにしよう、そう思ってオレンジ色のパッケージを手にとったわたしは、その隣に同じ製品の緑色の箱を見つけた。初めて見る色だ、日本向に抹茶フレーバーでも追加したのだろうか。
そう思ったのだが、それは抹茶ではなく、ペパーミントのフレーバーだった。
日本ではあまりみかけないがヨーロッパやアメリカではチョコとミントの組み合わせは結構多い。
何故か橘蒼祐の笑顔を思い出した。
そして、気がついたらオレンジではなくミントフレーバーのそのチョコレートを購入していた。
「お待たせしました」
頼んでもいないのにバレンタインの包装が施されたチョコレート。
それを受け取ると、わたしは急いで家路についた。
なんとなく今知り合いに会いたくなかった。
部屋についてすぐにチョコレートは戸棚にしまった。
どうしてこれを買ってしまったんだろう。
戸棚の扉は確かに閉めた。そのはずなのに。
なぜだかまだ部屋の中にミントの香りが漂っている、そんな気がしていた。
END
「ペパーミントの思い」を読んでくださったかた、本当にありがとうございます。
実に2年越しで「虹色マカロン」の補足ができました。
あのとき、筆の赴くままにというか、キーボードの赴くままに、碧さんが蒼くんにバレンタインチョコをあげた、と描写したのですが、あとで「なんであげたんだろうか」と、私自身が疑問に思ってしまったのでした。
「橘くん、これバレンタインのチョコレートなの、受け取ってくれる?」(頬を染める)
なんて、この人やりそうもないぞ、似合わないし。
でも、作品ってのは不思議なもので「チョコ渡した」って書いてしまった時点で、私の中でそれは「事実」になってしまうのですね。
その後「碧の章」で本音らしきものが見えてきたのですが、まだ「どうして」という謎は私の中で解明されないままでした。碧さんというのは蒼くんや美紅ちゃんに比べてわたしにとって圧倒的に「わかりにくいキャラ」だったのですね。
でも、頭の中で碧さんとの付き合いを続けていくうちに少しずつ彼女の姿が見えてきたような気がしました。
で、やっと今回のエピソードが浮かんだ、というよりは「わかった」のですね。
碧さんに限らず、このシリーズは途中から完全に「わたしが考えて作った話」というより、「彼らと付き合い続けてきた結果わかった話」になってきたように思います。
これから碧さんと同じくらい、いや、ひょっとしたらそれ以上にわかりにくいキャラクター藍崎くんの話の続きも書いていかねばなりませんが、さて、どうなることやら。
そして主役のふたりにもまだまだいろんなことが起こる予定です。
彼らがこれからどのような運命をたどることになるのか、それは彼ら自身が私に教えてくれる、そう思います。
できましたら、末永く彼らを見守ってくだされば、これほどうれしいことはありません。