episode-6 ~同居~
「ちょっと狭いけど……大丈夫かな?」
「あぁ。 これぐらいがちょうどいいさ。」
現在、俺――
紅月 希は、さっきこの次元で出会った少女――みすずの住むマンションの一室に来ている。
みすずはこの次元に飛ばされてるので、現在この部屋はみすずの部屋というわけではないのだが、
"次元変動にあった人が住んでいた部屋"というのもあり、住居者はいない。
だから、まだここで暮らしているそうだ。
そして、一番の問題、"どうして俺がみすずの家にいるのか"についてだが……
まぁ慌てるな。
「テレビはずっと付きっぱなしだけど…… 消せないから……」
「俺は全然大丈夫さ。 むしろ、情報が入るのは嬉しいことだ。」
「じゃ、じゃあ…… 改めて、これからよろしくお願いします!」
「あぁ、よろしくな。」
この会話で分かってきた人もいるのではないか。
そう、
俺はみすずと同居することになったんだ。
まぁ、焦らずここまでの経緯を聞いてくれよ。
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――――数十分前。
俺の手は、みすずの手をすり抜けた。
「みすず!?」
俺は瞬時にみすずを警戒した。
自分に害を与える者かと疑ってしまったからだ。
しかし、みすずも困惑した顔でこちらを見ている。
つまり俺の疑いは間違っていたのだろう。
俺とみすずの間に重い沈黙が降りかかる。
しばらくして、みすずが何か覚悟を決めたように、ゆっくりと口を開いた。
「こんな場所です。 二人で抜け出すんですよね……? これからどうしますか?」
みすずの声からどこか悲しさが感じられたが、こんな状況なので特に気にせず、今の出来事ではなくこれからについて話すことにした。
「そう……だな。 とりあえず、俺は出来るだけ長い時間二人でいたほうがいいと思う。 そのほうが色々と安心だと思うんだが…… みすずはどう思う?」
余談だが、俺はさっきおもわず下の名前で呼んでしまったので、これからは下の名前で呼ぶと決意していた。
そんな事を考えていると、またしてもみすずの天然発言が勃発した。
「じゃあ、わたしの家で住みますか?」
……え?
俺は一瞬思考が停止し、目の前の少女の大胆とも言える発言に冷静に返答できなかった。
「あ……あの、え?」
俺がそんな反応をしていると、みすずも自分が何を言ったのか気付いたようで、顔を赤らめながら小さな声で
「あ、迷惑……ですよね。 ごめんなさい。」
さすがにこんな態度を取られてはいくら俺でも罪悪感がわいてくる。
そこで、咄嗟にこんな言葉をかけてしまった。
いや、実際は"咄嗟に"というよりは、かなり勇気を振り絞っていったのかもしれない。
「みすずがいいなら……その、一緒に暮らしてもいいか?」
この言葉で、俺とみすずの同居が決定した。